【連載】ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン
ノーモア沖縄戦

メールマガジン第55号:④ミサイル攻撃基地・戦場と化す琉球列島

ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会

今回のメルマガは当会オブザーバーである小西誠さんの第4回目の寄稿です。琉球列島のミサイル要塞化は急速にすすんでいることは小西さんの前回の寄稿で具体的にふれていただきました。

その是非が問われている「敵基地攻撃能力」ですが、実戦化されている実態があり、今後、琉球列島全体が対中国に向けた「攻撃的ミサイル発射基地」と化した時、キューバ危機以上の危機がアジア太平洋地域に起きると小西さんは警鐘を鳴らします。

本稿をぜひお読みいただき、想像をはるかに超えた形で戦争の危機が深まっていることを知っていただきたいと思います。ぜひ拡散してください。また小西さんのブログ「今、自衛隊の在り方を問う」と合わせてご覧いただくと今回の内容についてより理解が深まると思います。https://blog.goo.ne.jp/shakai0427

●2022~2023年石垣島・沖縄島へのミサイル配備を阻もう!

前項で見てきたように、現在、奄美から宮古島―与那国島に至る琉球列島のミサイル要塞化の問題は、重大な時を迎えている。

琉球列島では、2019~21年、奄美大島・宮古島に地対艦・地対空ミサイル部隊の配備が完了、2022年度以内には、石垣島に地対艦・地対空ミサイル部隊が、2023年度には、沖縄島の陸自・勝連分屯地(地対艦ミサイルと同連隊本部も編成)へ、地対艦ミサイルを配備する計画が進行している。

つまり、自衛隊は南西シフトの完結のために、奄美・沖縄・宮古島・石垣島で、1個ミサイル連隊の編成を完結しようとしており、石垣島に見るように、急ピッチで基地工事の完成を強行しているのである(有事には数個ミサイル連隊の機動展開での増強)。

いわば、琉球列島のミサイル基地は、2023年度以降、いつでも対中戦争態勢に参戦する態勢が整いつつあるということだ。

問題は、自衛隊(および米軍)が目論んでいる琉球列島のミサイル基地化は、これに留まらない、ということだ。

すでに、防衛省から公表されているが、同省は地対艦ミサイルの射程千キロ以上延伸を計画しており、ミサイル射程1500キロ以上という案さえ提示している。もはや、この長射程ミサイルは、地対艦ミサイルではあるが、トマホーク型巡航ミサイル、あるいは中距離ミサイルというべきものだ(トマホーク型巡航ミサイルについて、防衛省は2017年に開発決定を公表し、開発の予算化が行われている)。

これに加えて、自衛隊はF15搭載の射程900キロ前後のスタンドオフ・ミサイル配備(米国からの購入。対艦ミサイルLRASM 、対地ミサイルJASSM)を決定し導入しようとしている。

――ところで、政府・防衛省は、2022年内に新しい「防衛計画の大綱」を策定し、「敵基地攻撃能力」を付与する新防衛政策を発表すると報じられている。だが、すでに見てきたように、自衛隊はスタンドオフ・ミサイル、地対艦ミサイルの長射程化、トマホーク型巡航ミサイルの開発配備を決定している。

つまり、「敵基地攻撃能力」は、すでに決定され、一部では実戦化されているのだ。にもかかわらず、メディアでは、「敵基地攻撃能力」の是非が論議され(あたかもその開発配備が現在なされていないかのように)、平和運動側も「敵基地攻撃能力決定反対」というスローガンがまかり通っている。

これは、誰を欺いているのか? 平和勢力か、国民か?

琉球列島へのミサイル配備は、これらに留まらない。すでに、2018年「防衛計画の大綱」で公表されているように、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の編成が決定されている。この(極)超高速滑空弾(ミサイル)部隊は、第1段階の「ブロック1・早期配備型」を2026年頃に装備化、第2段階の「ブロック2・性能向上型」を2028年以降に装備化するとされている(このミサイルは、チョーク・ポイントである宮古島への配備が有力)。

そして、米軍の中距離ミサイル配備であり、米海兵隊・米陸軍の地対艦ミサイルなどの琉球列島配備である。

つまり、沖縄―琉球列島は、対中戦争態勢づくりのために、文字通りのミサイル列島化=要塞列島化されるということであり、この軍事態勢は、従来の日米のA2/AD戦略からの大転換さえ意味するのである。いわば、琉球列島全体・全島々が、対中国への「ミサイル攻撃基地」と化すということだ。

●中距離ミサイルの琉球列島――九州配備

米海兵隊・米陸軍の琉球列島への地対艦ミサイルなどの配備については、別の機会に述べよう。ここでは、米軍の琉球列島―九州に至る中距離ミサイル配備問題を特筆したいと思う。というのは、この問題は国内だけでなく、中国にとっても軍事環境を一変するような大問題であり、仮にその配備が決定されたとするなら、おそらく「キューバ危機」以上の、アジア太平洋の政治危機が生じると予測できるからだ。

さて、2019年のINF条約廃棄後の米国は、急ピッチで地上発射の中距離ミサイルの開発を進めていることが報じられており、すでに琉球列島――九州・日本へのミサイル配備についても報道がなされている。だが、日本政府・防衛省は、米軍の中距離ミサイル配備について、米国側からは、今日まで「打診」はないと否定している。

しかし、この政府・防衛省の発言は、眉唾ものだ。これまで叙述したとおり、米軍は、海兵隊・陸軍とも、急いで琉球列島・第1列島線へのミサイル配備態勢を進めているからである。

これら中距離ミサイル配備について、大前提となる「中距離ミサイルギャップ」論から始めよう。

周知のように、この中距離ミサイルについて、自衛隊はもとより、非政府系の評論家らまでもが、中国軍との「中距離ミサイルギャップ」を主張している。曰く、「中国軍の保有する中距離ミサイル1250発に対して、米軍のその保有はゼロ」であると。

「現代戦に欠かせない中距離ミサイルの所持数は、中国が1250発なのに対し、米国はゼロだ。冷戦期の1987年、米国がソ連との間で結んだ中距離核戦力全廃条約により、射程500~5500キロメートルの核弾頭および通常弾頭を搭載する地上発射式の弾道ミサイルと巡航ミサイルの保有を禁じたためだ。

一方、INF条約とは無縁だった中国は各種ミサイルを開発し、1250発の中距離ミサイルを持つに至った。米軍が『空母キラー』『グアムキラー』と呼ぶ特殊な中距離ミサイルも保有し、台湾有事には米艦艇が第1列島線に近づくのさえ難しい」(21年6月9日付「現代ビジネス」https://gendai.media/articles/-/83991

これは無知なのか、意図的なのか。非政府系の防衛ジャーナリストが、堂々とこんなフェイクに近いものを流し、「台湾有事」を煽動する。今起きている状況は、こんなに酷いものだ。

この中国軍と米軍のミサイルギャップ――中国軍が1250発の中距離ミサイルを保有しているのに米軍はゼロという主張が、いかに事実の隠蔽なのか、現実を見れば明らかだ。確かに、米軍はINF条約に縛られ、「地上発射」の中距離ミサイルは、現在保有していない。

だが、米軍は、「潜水艦発射」「水上艦発射」の中距離ミサイル――巡航ミサイルの多数を保有している。例えば、米海軍の潜水艦発射巡行ミサイル(SLCM)を搭載する、改良型オハイオ級原子力潜水艦には、22基のトマホークが搭載されている(1基に7発のトマホークを装填、1艦あたり最大154発)。このオハイオ級原潜は、4隻あるから、合計で最大616発のトマホークが搭載可能である。

なお、米海軍は、2021年2月、東アジア地域でこのオハイオ級原潜の姿を公開し、排水量1万8000トンの巡航ミサイル搭載潜水艦が、沖縄周辺で米海兵隊と共同訓練を行う様子を見せつけた。

原潜だけではない。米海軍の水上艦艇も、多数のトマホークなどを装備している。例えば、米議会の資料によると90年代初め、横須賀に在留する米海軍巡洋艦「バンカーヒル」と「モービルベイ」は、それぞれ26発のトマホークを、駆逐艦「ファイフ」は、45発のトマホークを搭載。巡洋艦「サンジャシント」は、122基の発射管全てにトマホークを装備していた(『情報公開法でとらえた在日米軍』梅林弘道著・高文研)。

見てのとおり、中距離ミサイル保有について、米軍ゼロというのは完全なフェイクである。正確に言えば、今まで米軍の「地上発射」中距離ミサイルについては、ゼロだったということだ。

 

1 2
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会

「ノーモア沖縄戦の会」は「沖縄の島々がふたたび戦場になることに反対する」一点で結集する県民運動の会です。県民の命、未来の子どもたちの命を守る思いに保守や革新の立場の違いはありません。政治信条や政党支持の垣根を越えて県民の幅広い結集を呼び掛けます。

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ