【連載】横田一の直撃取材レポート

維新、参政党にも直撃取材 自民党と旧統一教会 現在に続く〝関係〞

横田一

・対応に及び腰の自民党

岸田文雄首相の鶴の一声で創設された「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」(代表・葉梨康弘法務大臣。下写真)の初会合が8月18日に開かれたが、お粗末な実態がすぐに露呈した。

 

法務省・警察庁・消費者庁の幹部らが出席、9月初旬から約1カ月間、「集中強化期間」を設けるとしただけで具体的内容は示されず、新たな立法措置に踏み込まない消極姿勢が明らかになったのだ。取材した記者からは、「やっている感演出のためのパフォーマンス」と酷評する声が漏れ出ていた。

連絡会議第1回は午後2時15分から45分までで非公開。ただし最後の葉梨大臣の5分足らずの挨拶(議事報告) だけが報道陣に公開された。

 

「様々な相談の内容に応じて適切な対応を行なうため、本日は関係省庁が有する各相談窓口の役割や対応可能な事項を整理し、その認識をしっかり共有し連携した対応にあたることを確認しました」「今後、関係省庁が連携して体制を整備したうえ9月初旬から相談対応のための集中強化期間を設けることにします」。

 

この後、事務方の法務官僚によるブリーフィング(質疑応答)が行なわれ、私も旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合。以下、統一教会)による被害について、現在の相談件数や推定捕捉率(相談件数/推定被害者数)や目標相談件数について聞いたが、「示すことがで
きる数字はない」という驚くべき答えが返ってきた。

現在の相談体制が機能しているのかの現状把握もせず、被害者数の推定も目標相談件数の設定もしないまま、「集中強化期間」の実施時期だけを発表していたのだ。「旧統一教会問題への取り組みをしていますよ」とアピールするのが主目的としか見えないのだ。

立憲民主党と共産党は安倍晋三元首相銃撃事件後、統一教会問題を追及するチームを立ち上げたが、真っ先にヒアリングをしたのは、この問題に長年取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)の紀藤正樹弁護士。立民の「消費者部会」は7月22日、共産党の「旧統一協会問題追及チーム」は26日に紀藤氏から聞き取りを行なっている。

 

被害実態や今後の課題(カルト規制強化など)について耳を傾けて全体像を把握することから着手したわけだが、これに対して岸田政権は関係省庁の幹部を集めて“素人談義”、パフォーマンス的施策をとりあえず決めたという泥縄式対応の域を出なかったのだ。

連絡会議の見かけ倒しぶりは、新たな立法措置を否定したことからも明らかだった。

配布された文書には、「(統一教会の)悪徳商法などの不法行為の相談、被害者の救済を目的として」と記載されていたので、私は「(集中強化期間に)相談を受けて現行法では被害者の救済が十分にできない場合、フランスのカルト(セクト)規制法のような新たな法律作りをしないのか」と質問したのだが、「個別の被害救済が目的」と、新たな立法措置をハッキリと否定した。

現在の法律と相談体制では不十分だから被害者が続出、金銭的搾取といえる高額献金が韓国に流出する事態を招いているのに、抜本的対策の実施を拒絶しているに等しいのだ。

翌8月19日付の朝日新聞は「省庁連携、まず初会合 旧統一教会の被害者救済 『相談強化期間』来月に実施」と銘打った記事で、連絡会議の内容を紹介した後、こう続けていた。

「教団による高額献金の相談を受けてきた木村壮弁護士は『今までは各省庁がバラバラで対応し、問題意識が共有されにくかった。単に各省庁が連携するだけでなく、宗教を隠れみのにした違法な献金を抑止するため、民事上の救済から団体の活動規制までできるような立法措置を講じるところまでしなくては意味がない』と指摘する」。

岸田政権(首相)の杜撰さが浮き彫りになる。被害者救済に取り組んできた弁護士の意見(立法措置の必要性)を聞くことなく、明確な目標設定も具体策もないまま、「とにかく“素人官僚”をかき集めてでも目立つことをすればいい」という安直な発想で産み落とされたのが今回の連絡会議ではないか。

デジタル庁担当も兼務する河野太郎・消費者庁担当大臣も、五十歩百歩にしか見えなかった。連絡会議とは別に消費者庁独自で外部の有識者を交えた「検討会」設置を就任会見で明らかにしたが、新たな立法措置について触れることはなかったのだ。

先の朝日新聞は次のような指摘もしていた。

「モノやサービスが介在する消費者トラブルへの対応をする消費者庁の守備範囲にはおのずと限界もある。宗教法人への高額な献金については、庁内では『介入は難しい』との見方が大勢だ。『消費者庁でカバーできているのは教団の問題の中の一部でしかない』との声が漏れる」。

現行法で「高額な献金規制(介入)」が困難ならば、河野大臣は新たな立法措置の必要性を訴え、連絡会議初会合に参加した消費者庁の幹部も同じ主張をしていないとおかしい。しかし連絡会議事務方の法務官僚からは、「消費者庁から立法措置が必要という意見が出た」という報告はなかった。

「発信力」「突破力」で“ポスト岸田”の声もある河野大臣だが、統一教会問題では岸田首相と同様、パフォーマンス重視の見かけ倒しレベルと言わざるを得ないのだ。

・〝復活〞した野党合同ヒアリング

これに対して野党は、昨年秋の総選挙以降は開かれていなかった合同ヒアリングを復活させ、自民党と統一教会の関係を追及し始めた。先の立民と共産の追及チームが合体する形となり、野党連携が強まることになったのだ。

第1回目の野党合同ヒアリングは8月5日。下村博文・文科大臣時代の2015年の名称変更問題について前川喜平・元文科事務次官から話を聞いた。

 

前川氏は文化庁宗務課長だった1997年、統一教会側に対して「当時の名称で信者を獲得しており、実態が変わっていないので名称変更は認められない」と拒否、門前払いをしていた。国会答弁でも同主旨の発言をして、これが長年にわたって文科省の立場になっていたのに、18年後の2015年6月に名称変更の申請を受理して8月に認証してしまったのである。

しかも、この認証前に大臣と事務次官に次ぐ文科省ナンバー3の審議官だった前川氏は、意見を求められて認証に再び反対していた。「私が『ノー』と言ったのに『イエス』という判断ができたのは、大臣か事務次官しかいない」「下村さんの意思が働いていたことは100%間違いない」とヒアリングで述べたのはこのためだ。

 

前川氏はヒアリング後に囲み取材にも応じ、私の質問にこう述べた。

「(下村氏は)第二次安倍政権で文科大臣に任命されたので、統一教会と三代の付き合いのある安倍さんの意向を受けて名称変更を認めてしまおうとしたのではないか」と私が聞くと、前川氏からは肯定的な答えが返ってきた。「確証はありませんが、そのストーリーは十分に成り立つような気がします」。

続いて「(統一教会が自民党を)選挙で応援してくれるので、下村さんは『(名称変更を)認めてしまおうかな』という“アベ友政治”の一環のような気もするが」と聞くと、前川氏はこう答えた。

「やはり政治家と教団の間に貸し借り関係があるだろうと。貸しがあれば、借りもあると。借りがあれば、借りを返すと。こういう関係は必ず出てくるでしょうから。だから(選挙で)ものすごくお世話になっているのなら、逆に同じくらいお世話をするでしょう。特に与党の政治家に多いパターンだと思う」。

まさに貸し借り関係(ギブ・アンド・テイクの関係)とはこのことで、自民党への選挙支援の見返りに、名称変更やイベントへの祝辞や霊感商法野放しなどの、統一教会への便宜供与をしてきたというわけだ。

ちなみに統一教会の文鮮明教祖が提唱して1968年に創設されたのが国際勝共連合で、岸信介元首相は設立の発起人。ちなみに初代会長は統一教会の初代会長だった久保木修己氏で、名前の通り、共産主義に勝つことを掲げていた。統一教会とは表裏一体の反共政治団体にも、安倍一族が関わっていたのである。

文鮮明氏(左)

 

なお父親の安倍晋太郎・元外務大臣も「勝共推進議員」の一人だった。先の前川氏の囲みで「安倍家三代にわたる付き合い」と私が指摘したのは、こうした歴史的経緯があったためだ。

 

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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