維新、参政党にも直撃取材 自民党と旧統一教会 現在に続く〝関係〞
政治・自民党と統一教会の関係は現在も続いている
しかも、このズブズブの関係が銃撃事件が起きた現在まで続いていた可能性が高い。「安倍元首相が統一教会票を差配していた」という趣旨の証言が7月28日に飛び出していたのだ。
自民党の伊達忠一元参院議長は、2016年の参院選で統一教会の票を宮島喜文前参院議員に回すようにお願いをして全国比例で当選に尽力したが、今年7月の参院選では「今回は井上(義行)を支援する」と安倍元首相に言われ、宮島氏は出馬断念に至ったという経緯をHTB(北海道テレビ)に対して語っている。
宮島氏と入れ替わるように、今回の参院選全国比例で当選した井上義行議員は第1次安倍政権時代に秘書官を務め、実際に統一教会の支援を受けていた(本誌先月号で詳述)。
7月6日にさいたま市で開かれた支援集会で幹部から「井上先生はもうすでに食口(しっく 信徒)になりました」と紹介され、「私は大好きになりました」「必ず勝たなければいけない。勝ちこそが善であり、負けは悪でございます」と訴えるごとに、拍手と歓声が沸き起こっていたのだ。
安倍元首相が差配する統一教会票の後押しで自民党国会議員が当選する一方、名称変更で正体隠しに成功した統一教会の高額献金(金銭的搾取)が野放し状態のままという貸借関係(ギブ・アンド・テイクの蜜月関係)が、今に至るまで続いて来たのは確実なのだ。
安倍元首相銃撃事件から15日後の7月23日、清和会(安倍派)事務総長の西村康稔衆院議員(現・経産相)を直撃、統一教会の支援を受けた井上議員の処遇について聞いてみた。
埼玉県の鴻巣市長選(7月24日投開票)の自民推薦候補への応援演説を終えた西村氏に、「井上義行先生を清和会(安倍派)に入れるのか。統一協会の支援は問題ないのか」という質問をぶつけたのだが、「事実を知らないので、すみません」という回答しか返って来なかった。
正直言って唖然とした。井上氏参加の統一教会関連集会の様子は、私がネット記事で採り上げて以降、TBS系「ニュース23」を皮切りに、テレビ朝日系「サタデーステーション」や日本テレビ系「ミヤネ屋」などが集会写真と音声を紹介していた。それなのに安倍派事務方トップの西村氏は「知らない」と言い放ったのだ。
すぐに事実確認は可能と思いつつ、私は声掛け質問を続けた。
「統一協会の支援を受けた井上義行議員、清話会に入れたままなのか。脱会・離党させないのか。何でもいいから当選させればいいのか」「清和会と旧統一協会、ズブズブの関係ではないか」「一言お願いします。清和会の事務総長でしょう」と大声を張り上げ続けたが、西村氏は無言のまま車に乗って走り去った。
「安倍派と旧統一教会との関係断絶を明言することなく、嵐を過ぎ去るのを待つ」という逃げの姿勢が透けて見えた瞬間だった。
しかし今回の参院選で当選した井上氏は、「食口になりました」という幹部の音声と写真が民放各局で紹介されても「信徒でなく賛同会員」と反論、議員辞職についても否定している。
「自民党幹部が離党を迫った」「安倍派から脱会した」といった報道もなく、井上氏もまた、統一教会の関連報道が少なくなるのを待っているように見えるのだ。
・カルト規制への野党4党と維新・参政党の対応
これに対して野党合同ヒアリングを8月5日に復活させた野党(立民・共産・れいわ・社民)は9日と18日、23日にも合同ヒアリングを開催。統一教会の名称変更問題に加えて国葬問題もテーマに採り上げた。
フランスの反セクト法(カルト規制法)のような新たな立法措置に前向きの野党四4と後ろ向きの自民党という対決の構図が明確になりつつあるのだ。
8月3日、国会議事堂正門に姿を見せたれいわ新選組の水道橋博士参院議員は、反カルト法についてこう意気込んだ。
「れいわは何もバックにないのでやりやすいと思います。ほかに後ろめたいところ(自民党など)はありますから、(れいわは)斬りこめると思うので、やりたいですね」。
続いて囲み取材に応じた山本太郎代表もヤル気満々だった。
「過去にも解散命令が出された宗教も存在しています。それを考えるならば、これほど大きな社会問題化した、この国に生きる人々を詐欺的な手法によって人生を壊してしまうようなカルト教団があることに関しては、しっかりと規制がなされなければならないと思います」。
やや意外だったのは、参政党の神谷宗幣・副代表兼事務局長。重点政策の一つに「外国資本による企業買収や土地買収が困難になる法律の制定」を掲げて選挙中も訴えていたのに、外国(韓国)への国富流出となる「旧統一教会への高額献金」への規制強化に対する強い意気込みを聞くことはできなかったのだ。
国会正門前で「カルト規制について一言。統一教会問題について」と声を掛けると、「違法なものは取り締まるべきです」と回答。そこで「(カルト規制の)法律を作るべきか」「霊感商法で統一教会は違法行為をやっているという認識か」と続けて聞いたものの、「僕は細かく調べていないのでわからないが…」という答えしか返って来なかった。
海外資本による“経済侵略”を問題視しているのだから、海外への国富流出を阻止する立法措置への決意を語るに違いないと思ったが、予測が外れてしまった。
野党か与党かわからない「ゆ党」的対応をしたのが日本維新の会。旧統一教会問題の野党合同ヒアリングへの参加を打診されたのに拒否し、代表選告示日(8月14日)の共同街宣でも、馬場伸幸共同代表、足立康史政調会長、梅村みずほ参院議員の三候補とも、旧統一教会問題について一言も触れなかった。
カルト規制をどうするのかが、臨時国会の大きなテーマになるのは確実なのに、維新代表選で活発な政策論争を聞くことはできなかったのである。
「政策提案型」を掲げた立民の泉健太代表が参院選敗北を経て、「対決路線」にやや軌道修正をしたことで、野党合同ヒアリングが復活した。野党4党の連携が強まることで、統一教会問題をめぐる与野党の対決が激化するのは確実だ。
「やってる感」演出で乗り切ろうとする岸田政権に対して、野党がカルト規制強化の新たな立法措置をどう迫り、具体化していくのかが注目される。秋の臨時国会も迫り、与野党の攻防に発展しているのだ。
(月刊「紙の爆弾」2022年10月号より)
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1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。