[講演]広瀬隆(作家) 二酸化炭素地球温暖化説は根拠のまったくないデマである〈前編〉
社会・経済・江戸時代の寒冷化の記録
それでは、日本の寒冷化の記録を簡単に見ておきましょう。[図表8](52ページ)で見たIPCCの第一次報告書にも示されていた、1700年代から1800年代の小氷期。これを日本に当てはめたものが[図表38]になります。
この当時、日本人も冷害に苦しんでいます。8代将軍吉宗の時代に2度にわたった享保の大飢饉(1722年と1731~32年)。その後、宝暦の大飢饉(1755年)に続いて、天明の大飢饉(1782~1788年)が江戸時代の日本を襲います。
天明2年(1782年)の春ごろから東北では長雨が続き、その夏は冷夏となった。翌年の天明3年(1783年)も同じような天候が続く中、天明3年7月7日(1783年8月4日)、群馬・長野県境にある浅間山が大噴火した。火砕流が起こり、翌日8月5日も大噴火して、利根川には火山泥流が流れ込み、鬼押出の溶岩流によって1151人の死者、流出・焼失・倒壊家屋は1242軒以上を数えました。
当時、噴火したのは浅間山だけではありません。同じ1783年の6月には、アイスランドのラカギガル火山でも大噴火が起こった。この大噴火で噴出したマグマの量は浅間山噴火の30倍もある。ピナトゥボ火山と同じです。
こうした火山の大噴火で空気中に漂う微細な火山灰の粒子(エアロゾル)が北半球全体を覆い、日射量や気温が大きく下がって農作物は壊滅的な被害を受けました。この火山の大噴火が世界的な寒冷化をもたらしたと言われていて、ヨーロッパでは平均気温が1度下がりました。
日本では、天明の大飢饉で長雨と噴火による悪天候で諸国が飢饉に襲われました。東北地方を襲った長雨による冷害は特に深刻で、人々は木の根、草の根、犬猫まで食って飢えをしのぎ、餓死と疫病で死んだ者は数十万人と言われています。武士階級も貧窮のどん底に突き落とされ、全国的に一揆と打ちこわしが頻発する時代となりました。
19世紀に入ると、天保4年(1833年)には、天保の大飢饉が始まりました。この年は洪水や冷害の風水害が顕著で、特に今の青森にあたる陸奥や山形の出羽での被害は甚大でした。
春から低温、多雨、天候異常が続き、出羽では大洪水。関東地方では大風雨。これで秋の収穫は激減し大凶作となりました。九州、中国、近畿でも農作物は例年の半分ないし3分の1。四国、信濃、越後でも3分の1。東北の津軽、南部、仙台では多くの地方の農作物がが全滅した。その結果、東日本、特に東北を中心に餓死者と疫病死者が続発した。
この天保の大飢饉の最中の天保4年10月26日(1833年12月7日)、庄内沖大地震が起きて、能登半島から小鹿半島まで大津波が押し寄せました。天保6年からは飢饉が全国的に広がり、ますます深刻になった。
そして天保7年(1836年)に入ると、大飢饉は最も激甚となった。春夏は低温と多雨。稲の出穂時期には大風雨。次いで大霜が襲い大凶作。一揆と打ちこわしが全国で起こった。二宮金次郎が飢餓に苦しむ小田原藩の領民四万人を救済したのも天保7年でした。
このように江戸時代には寒冷化が猛威をふるっています。それなのに現在は、世界先進国の政治家全員が地球温暖化で人類が滅亡すると騒いでいます。こんなものに生命を預けても大丈夫しょうか。
・プラスチック・ゴミと低炭素社会の混同
ここから、現実に何が起こっているのかを説明します。ヨーロッパのEU委員会は東京オリンピック開幕直前の2021年7月14日に、地球温暖化対策として、環境規制の緩い国からの輸入品に課税をする「国境炭素税」の導入を発表しました。
つまり、温室効果ガスCO2の排出量が多い鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、電力の5品目を課税対象にし、EU域内の輸入業者に2023年、つまり来年から報告を義務付けて、2026年から税金を取ると宣言したんです。つまり「CO2を出すな」と命令を出したわけです。ヨーロッパ人はコロナも撲滅できないのに、これは自ら墓穴を掘る政策です。
ヨーロッパの政治家の低脳ぶりは驚くべきものですよ。彼らが叫ぶ「低炭素社会」とは、植物の成長を妨害しようとする農業抹殺、殺人社会です。そのEUの委員長はドイツ人フォン・デア・ライエン。彼女が主導するEU委員会は植物が成長することを妨害し、人類文明を否定する殺人集団。そのため、安価な石炭火力を止めさせて、自然エネルギーの普及で電気代が高騰し、自分たちで悲鳴を上げています。
興味深い現象ですが、「地球温暖化説」を大声で叫ぶ人間と国家のほとんどが、コロナ感染の拡大防止に失敗しています。例えば、グレタ・トゥンベリのスウェーデンは連日のようにコロナ患者数を公表していません。コロナ対策に何の効果も打ち出せない国がノーベル医学賞の発表を行い、地球温暖化説を宣伝しているんです。
ドイツのメルケル前首相もコロナ対策の完全な失敗者です。彼女が優れていたのは難民受け入れの姿勢を貫いてきたことで、そこだけは私も評価しています。しかし、メルケルはそもそも原発推進に舵を切った人間なんですよ。ところが日本で福島第一原発事故が起こったことで、あわてて原発政策を変えただけです。しかも彼女は物理学者なのに、CO2温暖化説の科学的な矛盾にも気づかないんです。
そうしたなか、プラスチック・ゴミの問題が起きてきました。たしかにプラスチック・ゴミは、全世界の海や河川の汚染を引き起こしています。それを炭素利用のプラスチックが原因だと問題を混同している人がいます。だれだって石油から作られたプラスチック・ゴミの散乱はいやです。そこで、買い物袋を持参すれば解決するかのような低レベルの話をしていますけど、それはまったくの間違いです。
残念ながら、石油化学産業から必然的に発生し、現代人の生活に欠かせないプラスチックなどの化学合成製品をすべてなくすことは絶対に不可能です。自動車のガソリンとディーゼルの燃料をなくしても、石油なしには次のようなものが製造できなくなります。
インク、衣類や靴、医薬品、義歯(入れ歯)、障害者の補助具・支援器具、自動車部品、アスファルト、電線、電話機、パソコン、スマートフォン、テレビ、掃除機などの家電製品、建材、家具、染料・塗料、文房具などなど、身の回りの生活必需品のほとんどの原材料は石油なのです。その石油なしに生きられる人間はまずいないでしょう。だから買い物袋なんかで解決できることなんて、あまりに微量すぎて議論する必要さえないんです。
逆に言えば、プラスチックがこの世からなくなったら、どうなりますか。プラスチックに代わって、金属、植物・木材、動物の毛皮・皮革・象牙類、陶磁器、セラミックなどなどと、ありとあらゆるものが大量に必要になります。そうすれば、地球全土の森林がたちまちはげ山になって、野生生物は絶滅しますよ。「好き・きらい」ではなく、石油から生まれるプラスチック類は、今の人類にとってとても大切な必要不可欠なものなのです。
現在、日本でプラスチック・ゴミをどうしているのかいえば、4分の3以上は1200度超の高温で燃焼させ、ガス化して大気に放出しています。これぐらいの高温で燃やせば、ダイオキシンのような有害物質は大気中に出ませんし、他の有害ガスと燃えカスは正しく処理さえすれば、実際上の問題はほとんど何も起きません
。ところが、この高温焼却を妨害する人間がいるんですね。「プラスチックを燃やせばCO2が排出され、地球温暖化が起きる」と平田仁子たちのような温暖化カルトが妨害するのです。時には畑の野焼きまで批判するから、農家の人は困っています。
プラスチック・ゴミを燃やせば、熱エネルギーを得られます。この一石二鳥のプラスチック処理法があるのに、それを非難する正気を失った温暖化論者がいる。すると、ここで少々荒っぽい言い方になってしまいますが、工業家たちは焼却を避けようとして、時には悪質な業者の手を借り、結果、プラスチック・ゴミが世界中の海や川に投棄されて汚染されていくのです。
正しい処理法としては、微生物や酵素を利用する低温処理でプラスチック分子を分解したりなど多くの技術や工夫も考えられていますが、実用化できるのはごく一部でしかないんです。私も化学をやっていたエンジニアの経験者で、こういう夢の技術の研究現場と応用現場をあちこち見学させていただきました。
だけど、分解しにくいものほど耐久性が高く、優れた化学合成製品として使用されるわけですから、それを分解しようとするとコストが高すぎちゃうんです。私も公害は絶対に出していけないとわかりながら話しているのですが、まずは有害物質を出さない高温燃焼で処理して、ゴミの投棄は防ぐべきだとさせていただきます。
こんなことも起きているんです。2009年2月にオーストラリア南部で森林火災が起き、数百もの人命と数千もの家屋が失われ、オーストラリア史上最大の火災事故となりました。これも温暖化のせいだと騒がれましたけど、なぜそれほどの被害となったかといえば、人口が増えて住宅地域が広がることで、森林の内部にまで人間が進出していったからです。
先住民であるアボリジニの人たちは数千年にわたって、ブッシュファイア(野焼き)を続けてきました。西ヨーロッパの環境保護団体が「自然破壊だ。やめろ!」と、それをやめさせたんですね。しかしブッシュファイアは、森林の植生を維持させるために行われてきた知恵です。それを止めたことで、森林の手入れがされずに放置され、森林火災の延焼が拡大してしまった。それが原因だと言われています。むしろ環境法団体が森林火災の被害を大きくしたのです。
・豊かな生活の裏側
もう少し化石燃料について述べます。無知な地球温暖化論者が、化石燃料は何でも悪いとデタラメを言っていて、それに我慢がならないので私は声を上げています。
アメリカでは1970年~2010年までの40年間、石炭火力がおよそ2倍(180%)に増え、自動車と飛行機の走行距離も2倍近く(170%)に増えました。人口も1億1000万人増えた。
ところが、汚染物質の排出量は90%近くも減った。つまり大気は綺麗になった。どうしてでしょうか。それは石炭火力業界の人たちが10兆円を投資して、発電所からの汚染物質の有害排出量を減らしたのです。つまり、CO2排出量は減らさず、逆に増やした結果、大気がクリーンになったのです(マーク・モラノ『地球温暖化の不都合な真実』)。
オバマの次に出てきたトランプ前大統領は、日本では極悪人扱いでしたが、トランプは地球温暖化脅威説を「あれは嘘だ」と正しく否定し、温暖化のパリ協定からアメリカ合衆国を脱退させた人物です。そして石炭火力を活用して失業者を出さず、空気を一層きれいにした。すごいことやってるんです。ところがその後のバイデン大統領は温暖化対策で失業者を激増させようとしています。どちらが優れていますか?
先進国はなぜ「先進」なのか? それは化石資源を活用したからこそ、貧困から抜け出すことができたのです。ところが先進国はいま、アジア・アフリカ・中南米の途上国に「化石資源を使うな」と命じている。自分たちは使ってきたくせに、ですよ。アフリカの人たちの現在の平均寿命は100年前の欧米人の平均寿命よりもいまだにずっと短いんです。
ところがアフリカの人たちは、彼らよりとてつもなく豊かな生活を謳歌している先進国の国連気候変動枠組条約の支配者から、「温暖化対策のために発展するな! 自動車も電気も使うな!」と言われて困惑しています。アフリカの人たちが正真正銘の省エネ生活を強いられるから、飢えて、貧困なのです。
そもそも「地球温暖化」なんて説教を垂れているスウェーデン人をはじめ、先進国のヨーロッパ人は、チェルノブイリ原発事故の後、原発から出る超危険な大量の放射性廃棄をアフリカ大陸に運び込んで放置し、平然としていたわけです。「自分たちだけ安全な生活ができれば、それでいい」という人間たちが広めてきたのが、地球温暖化の仮説です。
温暖化教の教祖、アルバート・ゴアが一週間に使う電力は、アフリカのウガンダ国民2800万人が1年間に使う電力よりも多かったそうです。アフリカ人には節電を強いて、「風力発電と太陽光発電以外は電気を使うな! 化石資源を使って経済発展をするな!」と宣告するのが、今の先進国文明人の「人道主義」なのです。資源を奪い、他人を失業させて苦しめることが、それほど楽しいのか? 自分たちはいかなる文明のおかげで生きているのか? 恥ずかしくないのか? と、私は叫んでいるのです。
ビヨルン・ロンボルグというデンマークの統計学者が、パリ協定の政策をとった場合の費用対効果をきちんと分析しています。その結果、「1000兆円の10倍を使っても、気温はほとんど変化しない」という結論を出しました。「パリ協定は世界史上、最も高価な国際協定であり、パリ協定を讃える指導者たちは愚かだとしか言いようがない。天文学的な金を使っても、気候に何ひとつ影響を与えない」と証明しているのです。
・自然エネルギーによる自然破壊と電力消費量の増大は深刻な問題だ
では、皆さんが好きな自然エネルギーは本当に素晴らしいものでしょうか。私も以前は自然エネルギーを素晴らしいと思っていました。ここでは、その現実をお話しします。いまでは、自然エネルギーを礼賛する人たちが、私は大きらいなんです。
地球温暖化ホラー脅威論者たちは、ガソリン・エンジンを批判して電気自動車を使えと言ったり、化石燃料をやめて水素にしろと叫んでいます。そして石炭火力を批判します。これは両方とも間違いです。自然エネルギーが引き起こしている深刻な問題と、石炭火力の恩恵は表裏一体の関係にあります。
EUは2035年までにハイブリッド車を含むガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止し、フランスとイギリスは2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する方針を明らかにしています。アメリカのバイデン大統領はガソリン車・ディーゼル車を禁止して、電気自動車に切り替えると叫んでいます。それで全世界でどれほど電力消費を増大させるのか、わかっているのでしょうか。同じく習近平の中国共産党政府も、国内販売する自動車台数の10%を、電気自動車を中心する新エネルギー車にすることを自動車メーカーに義務付ける法律を2019年に発表しました。
しかし電気自動車は、電気を作って走るわけではありません。必要な電力の大半は発電所で作られる電気です。そしてもしも電気自動車が全世界で使われるようになれば、その充電には全世界の電力の一五%を消費するほどです。日本国内の自動車のおよそ半分の四〇〇〇万台が電気自動車になっただけで、現在の給電方法ならば日本の総電力の三〇%を消費します。つまり、電気自動車が普及すると電力消費量が三割増える。そんなことをしてよいのですか。発電所での発電まで含めて考えれば、ガソリン・エンジンのハイブリッド車の方が総合エネルギー効率が電気自動車よりもはるかに高いのです。
それと、私が一番心配しているのは、AI(人工知能)普及です。自動車産業にもいろんな問題があるけれど、そこで使われる部品のメーカーが日本の産業を支えてきた。その現場でのAI・ロボット化が進めば、ロボットによって電力消費量が激増するし、これまで働いてきた優秀な人たちが大量の失業者となってしまいます。つまり、人間はいらないと言っているようなものです。
EUが自動車と同じく「CO2の発生源」として批判するのが、鉄鋼産業です。しかし、鉄を使ったから人類は近代文明を手に入れることができたし、鉄なしでは人間は生きられないくらいです。鉄はどこにでも使われている必需品です。太陽光パネルも風力発電機も水力ダムも、鉄、すなわち石炭火力なしには成り立たないし、しかも日本の石炭火力は世界一クリーンなんです。
[図表39]を見てください。鉄鉱石と石灰石と石炭を蒸し焼きにしたコークスを高炉に入れて燃やし、鉄を製造します。つまり石炭火力なしには成り立たないし、さらにその熱を利用して、大量の電力も生み出しているんです。例えば、関西電力の供給する電力のかなりの部分は、神戸製鋼という製鉄会社から関西電力が買っているものです。
おかげで原発のシェアをかなり下げています。そこで石炭火力を使う神戸製鋼をつぶしたらどうなりますか、原発が増えるに決まっているでしょ。こうした私たちの生活を成り立たせている当たり前の産業を知らない市民運動が多いから、私は怒っているんです。
東京新聞がまだまともだった時代の記事を紹介します。2011年8月26日付の東京新聞で、福島で原発事後が起こった直後、「石炭火力に脚光を」という見出しの記事を書いていた。石炭火力のすばらしさを報じていたのは東京新聞だけじゃない。読売新聞も書いていた。つまり、人口377万人の横浜市内の電力40%を一つの石炭火力発電所で供給できているんです。それが横浜ランドマークタワーから6キロしか離れていない横浜市磯子区にある磯子発電所です。
大都市横浜のど真ん中に世界トップのクリーンさを誇る火力発電所があります。酸性雨の原因となる硫黄酸化物(SOx)の99%以上、光化学スモッグやぜんそく発症の原因となる窒素酸化物(NOx)は90%以上、煤塵はほぼ100%が除去されています。そのクリーンさはヨーロッパに比べても群をぬいて世界一です。しかも、世界最高水準の発電効率を誇ります。この発電所の一体どこが悪いのか、平田仁子に問い質したいものです。
しかも石炭は全世界に分布していて、1万年分の埋蔵量があるとも言われています。石炭火力を閉鎖したことで、挙句の果てに1年前の冬は電力不足が引き起こされました。それを電力会社のせいにする。電力会社は原発を止めるんだから、石炭火力に移りたい。そんな電力会社を追い詰めているのが平田仁子たちで、それをマスコミが支援しているのです。
(次号へつづく)
[2022年1月27日 たんぽぽ舎にて]
(雑誌「季節」2022年春号より)
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