【連載】ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン
ノーモア沖縄戦

メールマガジン第67号:⑦自衛隊の南西シフトの作戦プラン、部隊編成の実態

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●10万人を動員した機動展開演習「陸演」

この2013年新大綱による「統合機動防衛力」の策定以来、この機動展開訓練は、度々行われているが、2021年9月から約1カ月半に及ぶ、「陸上自衛隊演習」(陸演)は、陸自においては30年ぶりという「機動展開演習」を中心とする演習だ。しかも、この大演習では、当初陸自14万人、つまり、陸自の全ての兵力・人員を動員する演習として報じられた(実際は10万人の動員)。

陸幕発表によれば、「陸演」は、以下のように行われた。

① 陸自の全部隊を対象として、実動演習を軸に大規模演習。
② 作戦の準備段階に焦点を当てて5つの訓練を実施し、運用の実効性向上と抑止力・対処力を強化する。
③ 海自・空自および米軍の輸送支援を受け、民間の各種輸送力を活用、全国規模での機動展開や補給品等の輸送を実施する。

その演習部隊の編成は、陸幕長を統裁官にして、「陸上総隊、各方面隊、各防衛大臣直轄部隊及び機関、支援部隊」であり、「海上自衛隊、航空自衛隊、在日米陸軍」を含むとされている。また、訓練内容は5つの訓練、「①出動準備訓練、②機動展開等訓練、③出動整備訓練、④兵站・衛生訓練、⑤システム通信訓練」であるとしている。

まさしく、この5つの重点的訓練が今回の「陸演」の最大の目的であるが、これをもう少し具体的に見ると、よりこれらの訓練内容が分かる。
① 駐屯地・分屯地ごとに防衛出動のための準備を行う「出動準備訓練」
② 各種輸送手段を活用し、3個師・旅団を同時期に機動展開させる「機動展開等訓練」
③ 予備自衛官を招集し部隊を編成する「出動整備訓練」
④ 補給品の輸送や、患者の後送を行う「兵站・衛生訓練」
⑤ 並びに、作戦地域一帯のシステム通信を拡充する「システム通信訓練」

つまり、この「陸演」の内容の核心は、「南西有事事態」を想定した、陸自全部隊・全国各部隊(予備自衛官を含む)の「出動準備訓練」であり、「機動展開訓練」である、ということだ。特に、「機動展開訓練」については、北部方面隊などの3個師団・旅団の人員約1万2000名、車両約3900両を、同時期に九州の演習場に機動展開するという大規模なものであった(南西有事の戦争準備)。

この陸演に続き、2021年11月中旬から下旬にかけて「自衛隊統合演習」が行われた。これは、沖縄・先島―琉球列島の島々を初めて使用する大演習であった。演習規模は、自衛隊約3万人(車両1900両+艦艇10隻+航空機140機)、そして、米軍約5800人も初めて参加する統合演習である。

ここでは、①水陸両用作戦、②統合対艦攻撃訓練、③統合後方補給訓練、④基地警備、⑤統合電子戦などの項目が演練されたが、統合対艦攻撃訓練では、宮古島の地対艦ミサイル部隊が主力を担い、統合後方補給訓練では、初めて沖縄島、与那国島・石垣島・宮古島での市街地演習=生地訓練が行われた。特に、那覇・中城港では、装甲車80台が陸揚げされ(PFI船舶「はくおう」)、沖縄の市街地をこの軍用車両が走り回ったのだ。

かつて陸自は、北方シフト下で、「転地演習」を盛んに行ってきた。これは、80年代の「対ソ戦略」下の演習として、九州や本土各地から北海道に部隊を機動展開する、という内容であった。

今、陸自は、南西シフト下の「常続的陸自展開訓練構想」(CPEC)として、北海道・本土の部隊を九州・沖縄に動員する演習を強化している。ただ問題は、広大な北海道はいざ知らず、戦闘地域とされる沖縄――先島など、この大部隊が展開する余地は全くないということだ。

小西誠(軍事ジャーナリスト、ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会オブザーバー)

(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン第67号」より転載)

 

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