【連載】情報操作を読み解く(浜田和幸)

第3回 安倍元首相の国葬や旧統一教会問題の陰で進む国際的な金融危機

浜田和幸

去る9月27日に武道館で内外の招待者4300人の参加の下、盛大に開催された安部元首相の国葬でしたが、終わってみれば「国葬にした意味がどれだけあったのか」と改めて疑問が投げかけられたと言わざるを得ません。

凶弾に倒れた安倍元首相の業績に関する議論は別にして、国葬に伴う費用が当初の2億5000万円から警備費や接遇費が加わり約17億円と増額になったことも問題視されました。推進派の議員からは「海外から参列する代表団が日本で宿泊や買い物をするはずで、その経済効果は20億円を下らない。よって、経済的な採算は十分合う」と豪語していました。

 

今後、最終的な収支報告が明らかにされるはずですが、国費を投入したのであれば、きちんとした費用対効果の評価が欠かせません。何といっても、国葬に関する法的基準も曖昧模糊としたままですから。

 

そもそも、テロの銃弾に倒れた安倍元首相なのですが、「なぜそのような暗殺事件が、よりによって選挙の最中の白昼、衆人環視の下に起きたのか」といった疑問に対する説明は皆無でした。

治安の良さが売り物のはずだった日本です。テロに屈しないとの決意は分かるのですが、暗殺事件が発生した背景についての捜査や説明がなければ、内外の参列者もメディアを通じて国葬を視聴した人々も腑に落ちない思いが残ったと思われます。

海外からの参列者も武道館周辺のみならず、都内各地で交通規制や2万人の警察官を動員しての警備対策の強化には面食らったようです。アメリカのカマラ・ハリス副大統領は米軍横田基地から入国し、武道館に来場する際にも装甲車仕様の車など10台ほどを従えていました。

しかも、岸田首相の唱えた「弔問外交」ですが、海外のトップからは「不参加」の声が次々と寄せられてしまい、G7の現役のトップは誰一人参加しなかったわけで、岸田首相の目論見の甘さが目立っただけです。各国から来日した代表団の内40人ほどとは15分程度の面談を次々とこなした岸田首相ですが、日本の国益につながるような成果はなく、単に記念撮影の場を提供しただけのことになってしまいました。

 

いずれにせよ、主要国の現役指導者が来日を躊躇したのには訳があります。まったく議論されていませんが、彼らの間では、日本での国葬に参列している余裕がないほど金融危機が迫っているとの認識が急速に高まっていたのです。

日本では「円安」によってインフレも加速し、物価高の波が押し寄せています。とはいえ、国際的な投資ファンドの間では「前代未聞の大恐慌が間近に迫っている」との見方が出てきているのです。その対応を最優先したに違いありません。

News headline that says “Yen depreciation”

 

例えば、世界最大のヘッジファンドと目される「ブラックロック」を率いてきたエドワード・ドウド氏曰く「新型コロナウイルスの拡大の陰で見えにくくなっているが、世界経済は破滅の際に追いやられている。各国の中央銀行は景気の下支えのために紙幣の増刷にまっしぐらだが、過去12年間、インフレは拡大する一方で、株価も債権も実体経済から乖離したまま膨れ上がってきている。ドルのインフレは歯止めがなく、アメリカが発行するドル紙幣の15兆ドル分は何ら価値の裏付けはない」。

COVID-19 Coronavirus outbreak financial crisis help policy, company and business to survive concept, businessman leader help pushing bar graph falling in economic collapse from COVID-19 virus pathogen

 

ドウド氏に言わせれば、「コロナの蔓延は金融危機から目を反らさせるための“目くらまし”に過ぎない」とのこと。同氏の見立てに依れば「これから半年ないし1年以内に世界の金融システムは間違いなく崩壊する」可能性が高いというのです。聞き捨てなりません。中国政府は国営の金融機関にドルを手放し、人民元の備蓄を加速する指示を出すありさまです。

そうした危機感に苛まれている世界のトップからすれば、いかに自国や自身の生き残り戦略を打ち立てるかが喫緊の課題となっていることは容易に想像できます。

日本がそうした最悪の事態を突破できるようなアイディアや具体策を提供できるのであれば、世界のトップはこぞって「国葬参列」の名目で日本に飛んできたはずです。残念ながら、そのような先見性や危機回避策を日本は有していないと見透かされていました。

ドウド氏が最も注視するのが、金融崩壊やコロナ危機に飲み込まれようとしている中国です。曰く「自分が中国なら、最悪の事態を回避するために台湾を取りに行く」。アメリカでも日本でも「台湾有事はまだまだ先の可能性」との見方が主流となっています。

Peoples Republic of China flag, stock market, exchange economy and Trade, oil production, container ship in export and import business and logistics.

 

しかし、マネーの世界で熾烈な戦いを生き抜いてきたヘッジファンドの雄から見れば、「台湾有事はいつ起きてもおかしくない既定路線」に他ならないわけです。我々も、くれぐれも備えを怠らないようにする必要があるでしょう。

日本でも翻訳本が大ベストセラーになった『金持ち父さん、貧乏父さん』の著書であるロバート・キヨサキ氏もこのところ「アメリカ経済も世界経済もかつてない危険水域に突入している。これからは不動産や金など希少金属に資産を分散すべきだ。米ドルが国際機軸通貨だった時代は終わった」と厳しい警鐘を発しています。連銀のパウウェル総裁も同様の発言を繰り出す有様です。

中でもロバート・キヨサキ氏の繰り出す衝撃的な発言は聞き捨てなりません。曰く「アメリカ経済は破綻の瀬戸際に立っている。国際通貨として君臨してきたドルの終焉は近い」。彼の見立てでは、「ドルが崩壊すれば、株も債権もミューチュアルファンドも紙くずになる」とのこと。

US dollar bills on background with dynamics of exchange rates. Trading and financial risk concept

 

確かにアメリカの抱える累積赤字は31兆ドルを突破し、この瞬間も増え続けています。

しかも、長期化するウクライナ戦争のせいで、アメリカによるウクライナへの資金援助は鰻登りです。これだけ財政破綻状態にありながら、アメリカのドル高、すなわち円安が加速しているのはなぜでしょうか。それはひとえにアメリカが金利を操作し、ドル高を演出しているからです。

FRBはアメリカ財務省とタッグを組み、ほぼ無制限にドル紙幣を擦りまくっています。だから「金持ち父さん」は危機感を募らせる一方のようです。裏付けのないドル紙幣を後生大事にため込んでいても、間もなく大暴落になってしまい、泣きを見るのは確実だと警鐘を鳴らしています。

ではキヨサキ氏のアドバイスは何でしょうか。彼曰く「買うなら金か銀だ。ビットコインも買いだろう。不動産も意味がある」。要は、価値の保証のないドル紙幣に見切りをつけ、価値が保証されている現物にシフトするように忠告しているわけです。

更に「金持ち父さん」は先を読んでいます。曰く「2021年、アメリカがアフガニスタンから完全撤退を決めたその日に、サウジアラビアはアメリカに見切りをつけることにした」。「テロとの戦い」を掲げて20年間にわたりアメリカはアフガニスタンに資金と兵力を投入しました。

しかし、何も得ることなく不名誉な撤退を余儀なくされたのです。この状況を冷徹に分析したサウジアラビアはアメリカの未来を見限り、中国やロシアと手を結ぶ選択を下しました。まさに「ペトロダラー」の終わりと言えるでしょう。この結果、いわゆる「拡大BRICS」が勢いを増すことになりました。日本政府はアメリカの赤字国債やドルを大量に買い支えていますが、実に危険です。

国際通貨基金(IMF)でも「2023年は過去最悪の世界的な景気後退が起きる」との見通しを発表しました。JPモルガン・チェースでも「今後半年以内にアメリカは不景気に突入する」と警鐘を鳴らしています。ヨーロッパも中国もエネルギーや不動産分野で厳しい局面に陥ってしまいました。

A news headline that says “economic stagnation” in Japanese.

 

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浜田和幸 浜田和幸

国際未来科学研究所代表、元参議院議員

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