【特集】日本の安保政策の大転換を問うー安保三文書問題を中心にー

すでに進んだ日本の『戦時体制』ー米国覇権を超克する『真の安全保障』ー

木村三浩

・従米自衛隊の正常化を

米国が、その覇権戦略の一環として中国包囲網を形成し、日本ではそれに追随して安倍氏が日米豪印のクアッドを提唱した。中国にすれば、日本を米国の出先機関として見て、対抗してくるのは当然だろう。

そして台湾は、その高度な自治権を前提としつつも、日本政府は50年前の日中国交正常化において「1つの中国」を認めている。米国も1978年の米中共同声明で「1つの中国」を“認識する”との立場を表明、それを維持してきた。しかし今、ロシアに続き中国に対しても「一方的な現状変更を許さない」などと言っている。

そもそも台中問題は、中国と台湾で決めることである。米国が介入すべき問題ではない。

China and Taiwan Tensions And War Concept

 

しかし、日本は米国の対中戦略に丸乗りし、それに基づいて南西諸島へのミサイル配備をはじめとした軍備増強を進めている。

では日本自身が、危機を回避するために、中国との緊張緩和に向けた外交努力を何かしているのかといえば、まったくないと言っていい。

米中対立が激化するほど、すなわち米国の対中戦略が明らかになるほど、在日米軍が日本を守るためにいるのではないことは鮮明となっている。米軍は自国の戦略のために、海兵隊をはじめ海外派遣部隊を中心に日本国内に駐留している。

すでに近年、在日米軍の存在理由を問う声すら聞かなくなった。米国の傘に入らなければ日本を守れない、との主張が大手を振っている。

すでに憲法を改正せずとも、解釈改憲によって自衛隊の海外派遣は可能となっている。米軍の派遣部隊につき従って自衛隊が戦地に向かえば、相手国から見れば、一旦緩急あれば日本が攻撃対象となる。

それこそが危機であり、そんな馬鹿らしいことはやめて、アジアの平和こそ目指さなければならない。言ってみれば、アジア集団安保体制である。安倍氏が言った、クアッドをベースにした「アジア版NATO」では、アジアに分断を生み、かえって有事の可能性を高めるだけだ。

日本共産党の志位和夫委員長は「ASEAN+日米中」の構想を語っている。すでにASEANにおいて、東アジアサミットが安全保障に機能している。1年間に千回のペースで、様々な分野での対話が各国間で絶えず行なわれている。

その経験を日本も学び、輪の中に参加していくべきではないか。戦争を避ける外交努力こそ最大の安全保障であり、それを具体化させる枠組みを考えることが、今こそ必要なのだ。

Military Operation at sunrise

 

もちろん、防衛そのものもないがしろにしてはならない。解釈改憲の結果、すでに自衛隊は米軍の下請け機関の立場を強要されている。防衛費を無闇に増強することは、人とカネを米国に差し出すことにほかならない。

安倍氏は「自衛隊をしっかりと憲法に明記し、その正当性を確定することこそ安全保障・防衛の根幹」と繰り返し述べていたが、日本の自衛隊を従米自衛隊にしたのが安倍氏である。自衛隊の立場を規定することには異論はない。

しかし、自民党の「従米改憲」において、その存在を憲法に明記することは、従米自衛隊の完成にすぎないのではないか。

私は自主憲法を制定し、自衛隊を国軍にすべしと主張してきた。それは、対米自立のための国軍化である。もちろん、自国の防衛に特化し、シビリアンコントロールを徹底、日本の防衛戦略に基づき行動する存在としてである。その存在を諸外国に理解してもらうためには、日本が米国に追従するのではなく、平和主義に基づく主体的な存在であることがまず必要なのである。

だからこそ、真の安保とは、「アジア諸国との対話」なのである。これは、日本1国の問題を超えて、米国の世界覇権体制打破の第一歩となるだろう。

(月刊「紙の爆弾」2022年11月号より)

 

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木村三浩 木村三浩

民族派団体・一水会代表。月刊『レコンキスタ』発行人。慶應義塾大学法学部政治学科卒。「対米自立・戦後体制打破」を訴え、「国際的な公正、公平な法秩序は存在しない」と唱えている。著書に『対米自立』(花伝社)など。

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