【連載】週刊 鳥越俊太郎のイチオシ速報!!

第11回 ハイブリッド免疫って何?日本ではこの議論が遅れている!

鳥越俊太郎

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週刊 鳥越俊太郎のイチオシ速報!!
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ハイブリッド免疫って何?

新型コロナウイルスとの戦い方に幾つか考え方があることは知っていた。

まず日本のことを語ろう。

日本は世界でも珍しくこの方法を生真面目に採用し続けて来た。それは一口で言えば、コロナウイルスと正面から戦う。

従来の戦法だ。

この戦い方を取っているのは、あえて言えば日本と中国だ。

中国は誰もが知る「共産党一党独裁─専制国家」だ。共産党の指示の下国民が右へ倣えと言われれば右に並んでしまう。日本は中国とは違う。

専制国家ではない。しかし、日本には「同調圧力」という国民気質っていうか、得意技がある。コロナと戦うにはマスク付けましょう!と皆んなで決めたら、とことんマスク外しません。これは中国のように中国共産党が指示を出したら国民は一斉に守ります。というのとは違う。

日本では政府の命令、指示というのではなく、感染症の専門家や医師(医療関係者)、そしてテレビ情報番組などメディア関係者が一体となって同調していく力だ。

一番わかりやすくいうと、マスクだ。

いつの頃か、新型コロナが流行り始めて、コロナと戦う武器として換気や行動制限、アクリル板、黙食と並んでいやそれ以上にマスクが強力な武器として登場した。

元々マスクはウイルスなど病原体を持っている患者が付けていた。ウイルスを含む飛沫がマスクで抑えられると考えられていたからだ。

しかし、マスクの布の目の大きさは、ウイルスより遥かに大きい。従って、マスクは感染予防には一定の効果しかないと考えられて来た。コロナが感染し始めた当初はそう指摘する専門家もいたのを私は覚えている。

だが、そのうちマスクはコロナと戦う武器として100%の国民に浸透した。

ここ数ヶ月前から岸田総理大臣が「屋外で歩く時はもうマスクは外しましょう」と何回呼びかけても国民は知らん顔!東京の渋谷や新宿など繁華街の通りでは今でも100%の通行人がマスクして歩いている。あれっ?マスクしていない人がいる。っと、思ったらそれは間違いなく外国人観光客だろうね。

テレビの現場中継を見ているとあたりに人気のない原野や背後に田畑が広がっていることが多い。周辺に人気の気配はないのに中継のアナウンサーやレポーターは全員マスク姿だ。これが国民には効くんだねえ。

総理大臣の呼びかけなんかどこ吹く風だ。

同調圧力。これは日本国発展の源であり、同時にうまく変化できない「悪い癖」なのだ。

ある種の弱さなんだろう。今、まさに日本ではマスクをいつ外せるのか、目処の立たない同調圧力の戦いが進行している。世界ではただ日本人だけがマスク国家になっているのに私たちはそろそろ気がついてもいい頃かな?とは思うけど??

実はここで論じたかったのは「同調圧力」の話ではなかった。

マスクや換気、行動制限、黙食など政政府や専門家が新型コロナウイルスとの戦いで呼びかけて来た「戦法」の本質は、「ウイルスからの逃避」であった。ウイルスとどうしたら接触しないで済むか?あれこれ政府をはじめ感染症専門家、そしてここで大事な、というか、忘れてはならない存在、マスメディアが国民に呼びかけて来たのがウイルスからどうやって「逃げる?」

ここで思い出してほしいのだが、彼らは一度たりともウイルスと真正面から「戦う」とは言ってはいない事実だ。

一見専門家やメディアが口にするのは「戦っている」かのように見せて実はコロナからひたすら「逃げていたのだ」とは言え、本当のことを言えば、日本人もワクチンの登場でウイルスと正面から戦っていた、と思っていたのだ。いや思わせられていた。

私の場合を実例にここからは話を展開したい。

私は今年の夏8月6日の土曜日夕刻、急に38.8度の発熱があった。6日前の7月31日、4回目のワクチン接種したばかりで、安心していたらこの様。翌日8月7日日曜日、あるクリニックで受診し、抗原検査と、PCR検査を受けた。

はい、一発抗原検査で陽性反応。「新型コロナウイルスに感染しています」と医師に言われて降参!!

同居の妻は3日遅れの感染だった。

しかし、私の場合初日の発熱だけで、何の症状も出ていない。妻は軽く喉が痛いと言ってはいたが。私たちの場合はコロナはあっという間に通り過ぎた。

友人の医師曰く「軽くて済んだのはワクチンのおかげですよ」

そう、ワクチンは私の体の中にウイルスと正面から戦う抗体─免疫力をアップさせていたのだ。

ここまでは皆さんが知るワクチンの物語だ。

私は感染の前辺りから、世界の、特に欧米の国々と日本のコロナへの対応の違いが気になっていた。例えばあれだけ大騒ぎをしていたイギリス、依然としてコロナの感染者は出てはいるものの、完全な「with コロナ」の国に変わったな、と思わざるを得ない。

マスク姿はほとんど姿を消した。

コロナの感染者は出続けてはいる。

欧米ではもうコロナとの戦いは終焉し始めた。いやいやまだコロナの感染者が減った訳ではないのだから医療者は大変だろうけれど。

欧米のコロナ対策の身の代わりの早さを認めた私としては「何が起きているんだろう??」

日本国内や外国の文献を調べはじめた。

新型コロナウイルスの感染に関して一体何が起きているんだろう?

そこでまず目にしたのが「The NEW ENGALAND JOURNAL of MEDICINE」という雑誌の日本国内版の見出しだ。

「SARS-CoV-2に対する自然免疫とハイブリッド免疫の防御効果と減弱」

むむむ、ハイブリッド免疫って何??

ハイブリッド車という言葉は知っている。

電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせた車をハイブリッド車と呼ぶ。

つまり「混合」ということね?

自然感染による免疫とワクチンによる免疫。この二つの免疫を併せ持ったとき、それを「ハイブリッド免疫」ということらしい。次に8月19日の「日本経済電子版」に、次のような見出しと冒頭の記事があったので、一部引用したい。

『ワクチン接種も感染も経験、ハイブリッド免疫の少ない日本』

「新型コロナウイルスの感染拡大『第7波』の背景にはオミクロン型の派生型 『BA.5』の感染力の強さだけでなく、日本の人口全体の免疫レベルが下がってきたことが指摘される。米欧などに比べて感染者が少なかった日本は、ワクチン接種と感染の両方を経験した『ハイブリッド免疫』の人が結果的に少ない。3、4回目の接種を進める意義は感染を減らす面でも大きい」

こうした欧米の論文を見ていると、欧米では完全にワクチンは完全に接種し、その代わりこれまでやって来た感染症対策は止める。感染で得られる自然免疫とワクチンで得られる免疫の、二つの免疫「ハイブリッド免疫」がコロナウイルスとの戦いでは最終的な道だと欧米ではいち早く感じ取ったのだろう!

こうした欧米の経験を見るに付け日本のコロナ対策の方向が全く違った方を見ていると思えてならない。

コロナの医療は今まで以上に頑張らなければと切に思う。しかし、もうこれ以上コロナから逃げる「コロナ対策」はすっぱりとやめる。感染して自然免疫を獲得。ワクチン接種がもたらす免疫と並んで、「ハイブリッド免疫」を手に入れる。

私はこの道しかコロナ克服の道はないように思えるのだが。

(2022年11月21日)記

 

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鳥越俊太郎 鳥越俊太郎

1940年3月13日生まれ。福岡県出身。京都大学卒業後、毎日新聞社に入社。大阪本社社会部、東京本社社会部、テヘラン特派員、『サンデー毎日』編集長を経て、同社を退職。1989年より活動の場をテレビに移し、「ザ・スクープ」キャスターやコメンテーターとして活躍。山あり谷ありの取材生活を経て辿りついた肩書は“ニュースの職人”。2005年、大腸がん4期発覚。その後も肺や肝臓への転移が見つかり、4度の手術を受ける。以来、がん患者やその家族を対象とした講演活動を積極的に行っている。2010年よりスポーツジムにも通うなど、新境地を開拓中。

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