中城湾港自衛隊使用許可に関する沖縄県との交渉②―中城港湾・与那国空港の自衛隊使用許可反対と日米共同統合演習について(その2)―
安保・基地問題玉城県政には、法律や県条例制定の意図には憲法の平和的生存権、平和主義の精神こそが前提であることを認識していただきたい。元々、戦後は先の大戦を反省することからスタートしたのではなかったか。戦後の法律や条例には港湾も空港も軍事利用は想定されていなかったはずである。
なし崩しに自衛隊が民間船「はくおう」をチャーターしていることで民間船扱いするとすれば思慮が足りないと言わざるを得ない。今回の中城湾使用や与那国島空港の使用は自衛隊である。
中城港には自衛隊員約200人と軍車両約70台が陸揚げされた。それらが公道を使って民間の住宅地を通っていった。自衛隊が大挙して堂々と通過する沖縄の状況は一種の「地ならし作戦」ではないか。熟慮していただきたい。
住民の持つ戦争への道への緊張感や抵抗感を薄めようというのか。軍隊の存在を前提とした生活様式に変えようというのだろうか、政府の意図はそうだろうと推察できるが、県政は住民の命こそまず守ることを鉄則にしなければ国防の論理に巻き込まれる。
国を守るとは一体何なのか、歴史は軍事産業の実を上げ一部の上層者の命を大切にする一方で若者・庶民の命を簡単に戦場に送って「消耗品」の様に扱った。「徴兵制」はコストのかからない、安くつく軍隊だという。国を守るという言葉ほどいかがわしいものはない。
沖縄県民に有名なスメドレー・バトラー将軍は「戦争はいかがわしい商売」と言ったではないか。戦争で一儲けしたいアメリカの勢力は、戦争をして稼ぐ。中国のアジア太平洋での勢力削減、中国封じ込め、それは正義でもない。
米国がアジア太平洋で「威張りたい」「米覇権」争いに日本の土地、琉球弧を提供することをやめさせよう。日本の防衛費を上げれば米軍産業界は大儲けするだろう。
ウクライナ戦争同様だ。琉球弧で戦争になったら、米軍は「オフショア・コントロール」戦略で遠くから指揮する。EABO(Expeditionary Advanced Based Operations:遠征前進基地作戦)という米海兵隊運用戦略では有事の際に、琉球弧で島伝いに中国艦船に向かって砲撃しては移動する。
その後、米軍はグアムかハワイなどに「逃げる」。自衛隊と沖縄住民らを島で「戦わせて」、米軍は自国艦隊や爆撃機の「消耗」を最小限にするという。だから「逃げる」。米国の代理戦争を米国のためにやってあげる、こんな日本はあまりにも浅はかである。
本来、外交・対話を尽くせば平和は創れる。日本はただ米軍に従うだけでいいのだろうか。日本人やネトウヨは日本の住民・国民の立場で考えることができないのか。「日本のナショナリストは米国益を考える人たち」との指摘がある。
米国益を追求する日本愛国者って、言葉自体が成り立たない。だがその通りで、「日本の保守は米国の利益を考える人たちであるのは嘆かわしい」と述べておられる伊藤貫氏の言葉を紹介しておきたい(松田政策研究所での発信)。
市民側は国の軍事「地ならし」にも抗っている。市民は努力しているのだ。沖縄の顔である知事にも努力をお願いしたい、といった意見が出ている。
それでも沖縄県民は国から分断されないように注意しながら玉城知事を支えようとしている。その一方で、国家は、再び沖縄を戦場にする政策には断固止めていかねばならない。難しい運動になっている。
日米政府だけならば「糾弾」の一本でまとまれば良いが、今は何としても玉城デニー県政を味方につけていかねばならない局面である。県政も共に戦場化に抗ってほしい。
この課題を背負って市民は闘っている。実は、2019年には沖縄本島北部にある本部港(もとぶこう)の使用に対して、玉城知事は使用を許可しなかった。
その時の様子は、2019年9月20日付の『沖縄タイムス』で「米海兵隊の本部港使用を、今後も緊急時以外は認めない考えをしました。(略)県はこれまで民間船舶の円滑かつ安全な運行を確保するため、緊急時以外の民間港湾や空港の使用の自粛を要請している。その方向性は今までもこれからも変わらない」。
緊急避難以外は使用を力強く否定している。しかも、日米統合演習はスケジュールに則って行うので全く緊急避難的な行為ではない。今まで通り否定すべきである。
【自衛隊の本質は軍隊】
沖縄県や玉城デニー知事は米軍と自衛隊とは違うからとおっしゃりたいのかもしれない。それならば日米安保の本質と自衛隊の本質を知る必要がある。自衛隊は災害救助で親しまれているが、それは本質ではない。
日米安保条約制定当時、吉田茂首相とクラーク大将が1952年7月23日に指揮権密約を結んでいた。そのことを裏付ける公文書を1981年に憲法学者の古関彰一氏が発見した。
同密約には「戦争の脅威が生じたときはすべての日本軍は、海上保安庁も含めて、(略)(米軍の)統一指揮権下に入る」と記されている。
密約の通り米軍は自衛隊の派遣を日本政府に要求できる。日米統合の動きもその流れなのである。自衛隊に対する認識を見誤ってはいけない。軍隊から市民を守るという市民目線で対策を考えねばならない大事な局面にあると思う。
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独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。