【連載】岩田昌征が読み解く国際情勢

第1回 高松城水攻めと「アゾフスターリ」包囲戦―領民や市民を人間の盾としない戦(いくさ)の掟―

岩田昌征

ロシア軍がマリウポリを掌握したと報じられている。

しかしながら、マリウポリの巨大製鉄所「アゾフスターリ」内にウクライナ軍の一部約1000人が立てこもり、その地下空間に負傷兵や一般市民約2000人が避難していると言う。

ロシア軍の「アゾフスターリ」への一斉制圧攻撃は、プーチン大統領の決断で中止され、水ももらさぬ完全包囲態勢に移行するらしい。

Azovstal in Mariupol, Ukraine before war. Steel plant at night. Steel factory with smokestacks. Steel works, iron works. Heavy industry. Industrial landscape with metallurgical combine, smokes, lights

 

私=岩田は、440年昔の天正10年(1582年)に起こった高松城水攻め合戦を想い浮かべた。完全包囲の兵糧攻めである。「アゾフスターリ」の運命と酷似する。高松城(「アゾフスターリ」)内の武士と領民(兵士と市民)は、飢えに苦しむ。

攻め手の総大将羽柴秀吉は、城主清水宗治の切腹を条件に、残り全員の生命を保証した。宗治は、人工湖上に小舟を浮かべ、家臣数人と共に見事に腹を切って、城内の3000人から5000人の生命を救った。「浮世をば今こそ渡れもののふの名を高松の苔に残して」が宗治の辞世であると伝わる。

21世紀の今日、日本でも切腹の儀式は、名誉でもなく、人の道でもない。

また、ウクライナに部下や市民を助けるために自決する連隊長がいるだろうか?

ここに、民主主義的な降伏の様式がある。兵隊達が堂々と降伏する道がある。それは、民主主義国ウクライナ大統領ゼレンスキーが「アゾフスターリ」の籠城軍に総司令官として降伏命令を下すことである。

「大隊の諸君、連隊の諸君、諸君はすでに十分すぎるほどにロシア侵略者に抵抗し、祖国防衛に生命を捧げてきた。今、完全包囲の下、残された道は、餓死か、玉砕か、降伏しかない。私は、総司令官として諸君に命令する、名誉ある降伏を受けよ、と。

諸君はプーチンの投降勧告に従うのではない、ウクライナ大統領の命令に従うのだ。諸君が戦時国際法にのっとって正しく処遇される事をウクライナ国家と国際社会が保証する。我々はこの戦争に勝利し、領土の一体性を回復する。その一里塚が諸君の降伏である」。

このような命令を発せず、「アゾフスターリ」籠城戦の最終段階で市民退避だけを強調するとすれば、それは人道主義の姿を借りて市民を人間の盾として利用することに等しい。まず、武装者が降伏することだ。かくして、「アゾフスターリ」から軍隊が先に姿を消せば、一般市民は地下空間から即座に自発的に出て来る。

包囲軍が新前線へ転進する恐れがある。それを考えてこのような決定ができないというだろう。しかしNATO諸国から送り込まれた大量の武器が、十分それに対応できる。

21世紀の戦争倫理は、天正の武士のレベルに達していないようだ。

令和4年4月21日(金)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11974:220424〕

 

※この記事は、サイトちきゅう座(2022年4月24日)からの転載です。
原文はコチラ→高松城水攻めと「アゾフスターリ」包囲戦――領民や市民を人間の盾としない戦(いくさ)の掟―― 

 

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岩田昌征 岩田昌征

千葉大学名誉教授、専門:経済体制論

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