国家安全保障戦略改訂の核心、「核ミサイル基地」にされる日本列島
安保・基地問題・国家安全保障戦略改訂隠された核心問題
国家安全保障戦略の改訂が今年末に断行される。
その基本となる内容は、①反撃(敵本土攻撃)能力保有、②防衛費倍増(GDP比2%)明記である。
しかし、隠された核心の問題は、日米軍事「統合」、すなわち自衛隊の米軍への統合・溶解にある。
言葉を換えれば、自衛隊が憲法9条・専守防衛の定める役割である「盾」を脱し、米軍指揮下で動く「矛」=外征戦争武力、米軍の下請け軍事機関に溶解されるということだ。
現実的・実践的問題としては、米国によって位置づけられた「日本は対中対決の最前線」を担える自衛隊に大転換するのである。さらに言えば「ウクライナ戦争」に世界が見た米国の代理戦争、これを日本に押しつける。日本の対中代理戦争国化=「東のウクライナ化」が日本の国家路線として確定されることを意味するのだ。
これは日米同盟第一を「国体」としてきた戦後日本政治の帰結といえる。
現代において、すでに米国の覇権力は劣化を続けている。その米国が目指す覇権回復戦略、そして対中ロ新冷戦下で日本に「同盟義務」が突きつけられている。
それを国家路線化する国家安全保障戦略改訂は、いずれ国会論戦にはなると思うが、いま見る限りでは防衛費増大、軍拡、あるいは専守防衛の逸脱、憲法違反の疑いなどの「懸念」程度の論議に終始する可能性が高い。
ほぼ全ての野党が日米同盟第一という戦後日本の「国体」を認めている。その現況下では「同盟義務」自体に反対するのは難しい。だから、隠された核心問題、自衛隊の米軍への「統合」、米軍指揮下の外征戦争武力となる問題にまで斬り込み迫ることは、ほぼ期待できないと思う。
ピョンヤンという東アジアの一角にあって私たち「アジアの内の日本の会」(いわゆる「よど号グループ」)は、この問題が国民的に広く明らかにされ論議されるべきであり、日本の今後の運命を左右する重大問題になるだろうという強い危惧を抱いている。
希望はある。現実的にこの問題に直面させられている自衛隊現場からは、当然ながら当惑と不満の声が上がっているとも聞く。これを広く国民の声にして、打開策を必死に考えることが重要だと思う。
・「日米同盟刷新」とは日米軍事「統合」
2022年3月28日にジャパンハンドラーと称されるR・アーミテージ元米国務副長官が「ウクライナの教訓―日米同盟の刷新 緊急性」と題する寄稿文を読売新聞に寄せた。
その骨子は、「連合作戦司令部」「連合開発能力」の2点だ。
前者は、NATOのような連合作戦司令部をつくって有事には日米一体の指揮体系の下に自衛隊が動くようにすべきだということ。当然、自衛隊は専守防衛から外征戦争の攻撃型軍隊に変わる。そして米軍指揮下で動く下請け軍隊と化す。
後者は、これまで各国個別にやってきた新兵器開発と生産を日米一体の開発・生産体系に変えること。日本の防衛産業を米軍需産業の下請け産業にするということだ。
要するに米一国では軍事作戦も兵器開発・生産も中国にかなわないから同盟国と連合してやろうということだ。言ってしまえば、衰退一途の米覇権軍事を日本に補わせるというのがアーミテージの「日米同盟刷新」論だ。
これはバイデン政権の「統合抑止力」論に則り、「抑止力」の作戦行動と兵器開発を同盟国と「統合」するという戦略に基づいている。当然ながらこの「統合」は、「抑止力」=敵攻撃能力といえば、核を基本に米軍が圧倒している条件で、「米軍の下への統合」ということになる。
自衛隊は作戦から兵器に至るまで米軍に完全に吸収統合されることになるだろう。つまり日本が自主独立国家としての「体裁」すら失うことを意味する。完全な米国への溶解・一体化、実に憂うべき事態だ。
すでに2017年、安倍晋三政権下で強行採決された安保法制で集団的自衛権行使(有事の日米共同戦争行動としての自衛隊参加)は可能になった。「台湾有事」が国家存立危機事態、あるいは武力行使事態と認定されれば、否応なく自衛隊は米軍指揮下の対中戦争に動員される体制、「形」はすでに整えられた。
これに反撃(敵本土攻撃)能力保有の合法化など自衛隊にその内実を与え、国家路線として確定するのが、今年末の国家安全保障戦略改訂だ。
1947年生まれ。同志社大学で「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕。よど号赤軍として渡朝。「ようこそ、よど号日本人村」(http://www.yodogo-nihonjinmura.com/)で情報発信中。