【連載】岩田昌征が読み解く国際情勢

第5回 露烏戦争の一面―自民党政権は北方領土を放棄したのか―

岩田昌征

2月7日は、北方領土の日である。国境画定問題に関してかかる国定記念日を創設した事が賢明であったか否かは論じない。ともかく、そんな日が2月に存在する。その2月24日に北方の交渉相手の露国がその西方国境を侵犯して、隣国烏克蘭(ウクライナ)に軍を進めた。

露国の国境外交態勢に乱れが生じた。チャンスだ!日本国が落ち着いて喧嘩腰でなく地下でこの北方領土問題解決交渉を再開するのに。

露烏戦争に関して露国を非難制裁するG7諸国の中で、露国と領土問題をかかえている国は日本だけである。

それなのに、ああそれなのに、戦争勃発以来はや半年、日本の主張に有利に領土問題を平和的に解決する為に、この新しい国際環境を如何に活用すべきかの視点観点が日本外交に全くみられない。

かかる目的の実現のために、露烏戦争に関して、いかなる対露外交をとるべきか、あるいはとってはならないのか、の検討考究が日本国政府で、市民社会で全くなされていない。国民社会の、常民社会の一市穏大和左彦の小声の提言があったはずだが(「ロシア膨張論の幻影」http://chikyuza.net/archives/44217)。

対露領土問題をかかえていない北米西欧のG6諸国と全く同方向の外交を日本国がとれるはずがない。基本的に国際法侵犯を非難弾劾する点で同一であっても、具体的な制裁措置に関してG6諸国と異なる方がむしろ自然であろう。G7の会議で日本国首相にかかる思念が全く欠如していた。

露烏戦争に関する対烏支援は、人道支援と経済支援に限定する。対露対策は、G6によって余りに対露軟弱だ、あるいは余りに対露強硬だと非難されて当然のものであるはずだ。

G7の一員である事は、北方領土問題を忘却する事を含意するものないはずだ。北方領土問題にからませた日本の対露外交をG6が非難したとしても、それはG6の自由だ。しかし、日本には日本の自由がある。丁度烏克蘭(ウクライナ)には烏の自由があるように。烏は自由を求め、大和は自由を忘却する。

そんな自由忘却の典型的実例が東京のロシア大使館員の先制追放だ。秘密裡に領土回復交渉を再開すべき時に、わざわざその好機をつぶしたのだ。

自由民主党政権は、かつて何のために北方領土の日を創設したのか?!

令和4年9月22日(木)岩田昌征/大和左彦

 

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/

〔opinion12409:220926〕

 

※この記事は、サイトちきゅう座(2022年9月26日)からの転載です。

原文はコチラ→露烏戦争の一面―自民党政権は北方領土を放棄したのか―

 

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岩田昌征 岩田昌征

千葉大学名誉教授、専門:経済体制論

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