【特集】ウクライナ危機の本質と背景

ロシアによるウクライナ侵攻の深層

鳩山友紀夫

多くのみなさんはロシアが突然にウクライナを侵攻したことに大きな驚きと強い怒りを覚えたことと思う。日本では連日ロシアの蛮行が報じられ、ウクライナの人々は可哀想で、戦争を仕掛けたプーチンはけしからんとの思いが強まっている。確かに、私は武力によって平和が創られることはないと信じているし、プーチン大統領のウクライナ侵攻の行為は決して許されるものではない。したがって、一日も早く停戦が成立して戦闘行為が完全になくなり、ウクライナに平和な春が戻ってくることを心から願っている。

Belarus, Gomul, November 21, 2015. Streets of the town. Reconstruction. Tired women are sitting in the cold. Refugees. Refugees

 

大事なことは、なぜ21世紀に入ってもこのような戦闘行為が行われてしまったか、その原因を理解することである。それを理解しないで、ただ、ウクライナを支援すると称して武器を提供し続ければ、武器商人が利益を得るだけで、いつまでも戦争は継続してウクライナが焦土と化してしまいかねない。

この戦争はウクライナを舞台にしたロシアvsアメリカ+NATOの戦いであることが本質であり、また歴史的な経緯もあり、単純にロシアvsウクライナで片付く問題ではないのである。

まず、ウクライナの中で東西で宗教上の対立があり、正教会の分裂騒動で、東部のロシア正教会に対して、勝手に出て行った西部のウクライナ正教会が許せないとの感情的なしこりがいまだに残っており、それが今回の戦争の遠因となっていることに気が付く。

とくに東部二州のルガンスク、ドネツクではロシア語を母国語とする人々が大半を占めており、ゼレンスキー大統領となってからウクライナ語のみを母国語とする方向が強まり、「彼らはテロリストだから会わない」とまで発言するゼレンスキーの下で、東部二州において自治権を求める運動が強まっていた。

少し歴史を遡ると、東西ドイツが統一される際に、ソ連は慎重な姿勢をとっていたが、ベイカー米国務長官がゴルバチョフ大統領に「もし我々がNATOの一部となるドイツに留まるなら、NATO軍の管轄は一インチたりとも東方に拡大しない」と約束するなど、これ以上のNATOの東方拡大はないと約束したためにドイツの統一に納得したという経緯がある。

そしてゴルバチョフはワルシャワ条約機構を解体させたが、NATOは解体するどころか、東方に拡大を続けていった。そして遂に2008年のブカレスト首脳会議で、ウクライナとグルジアの両国はNATO加盟を申請できるということで合意に達したが、このことにロシアは強く反発した。

ウクライナがNATOに加盟すると、ロシアに隣接する地域に中距離・短距離ミサイルの配備が可能となり、大陸間弾道弾では均衡が保たれているものの、中距離・短距離ミサイルで米国が圧倒的に優位に立つことになるため、ロシアとしては決して許せないのである。

 

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鳩山友紀夫 鳩山友紀夫

第93代内閣総理大臣。現在は東アジア共同体研究所理事長。政治家引退後、友愛の思想を広めるため、由紀夫から友紀夫に改名。近著に『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)などがある。

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