【特集】砂川闘争の過去と現在
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2021年「砂川平和ひろば」秋集会に関する趣意書:砂川の大地から、とどけ平和の声―基地問題と東アジアの平和―

西原和久

沖縄で強制的に農民から土地を奪って米軍基地が建設されていた1950年代半ば、東京の米軍立川基地でもその北側の砂川町(当時)への基地拡張が計画され、農民から土地を奪うための測量が始まりました。そこで農民が立ち上がり「砂川闘争」が展開されました。

農民中心のこの闘争で特筆すべきなのは、1959年に東京地裁で「米軍駐留は憲法違反」であるという判決が出たこと、そして1960年代に基地拡張それ自体が断念され、その後ほどなくして米軍立川基地も返還されたという点です。

しかし、その米軍立川基地の機能は米軍横田基地に移され、現在も横田空域として事実上、広大な空が米軍専用となっています。さらに米軍立川基地跡地は、「昭和天皇御在位五十年記念」の国営昭和記念公園、昭和天皇記念館、および自衛隊の基地(駐屯地)などとなっています。その自衛隊基地フェンス北に、2010年、基地問題を中心に平和を考える場としての「砂川平和ひろば」が生まれました。

砂川平和ひろばでは、反戦平和の発信地として、2015年には砂川闘争60周年集会「砂川の大地から、とどけ平和の声」を開催して映画「流血の記録・砂川」などを上映し、2019年は「伊達判決60周年 反骨精神の脈流 真の事件を問う」、そして2020年は「砂川闘争65周年記念集会 不服従の時代を生きる」をテーマに、秋の集会を開催してきました。

2021年、「砂川平和ひろば」は開設11年目に入りました。今後は次の10年を射程に入れて、砂川の経験を国内外に広げることにこれまで以上に力を注ぐ段階にきていると思われます。特に2021年は、砂川闘争の一つの成果である「砂川測量中止決定」(1956年秋)から65周年であり、2022年は沖縄返還50周年、および日中国交回復50周年という節目の年となります。

そこで、日本およびその周辺に目を向ければ、東アジアでは、領土をめぐる対立や新旧の冷戦構造がみられ、日本の南西諸島(琉球弧)に自衛隊が次々と配備され、さらに日米軍事一体化のみならず日米豪仏の合同訓練も開催されるなど、軍事的な対立政策が一層強化される状況が生じています。

それは「平和」とは大きくかけ離れた状況です。基地はいうまでもなく戦争のための施設です。基地問題の解決には、戦争をなくし、平和を実現することが必要です。砂川闘争の経験を踏まえて、未来を展望しようとする私たちに、いま何ができるでしょうか。

私たちには、砂川闘争の経験を今後に生かしていくための主要な方向性として、①沖縄をはじめとする反基地運動関係者との連携、および②緊張関係が高まっている東アジアにおける平和追求のための各国の人々との連携といった、こうした連携による平和構築の推進が重要な課題として存在していると思われます。

砂川闘争の時代に、「砂川町基地拡張反対同盟」の宮岡政雄さんと沖縄・伊江島の阿波根昌鴻さん、あるいはこの同盟の青木市五郎さんと那覇の瀬長亀次郎さんとのつながりなど、早い段階から反戦平和のための連携の契機が醸成されていました。

なお、基地拡張中止決定後の立川基地の跡地利用問題に関しても、宮岡政雄さんは1970年頃から「立川基地の自衛隊使用に反対する市民会議」の代表として、市民と連携する反戦平和運動の先頭に立っていました。

こうした経緯を踏まえて、私たちは、「砂川平和ひろば」開設から10年を経て新たな段階に入ったこの時期に、砂川の経験を国内外に発信し、かつ砂川と国内外の人々との連携を模索する方向性で、これからの活動を考えていきたいと思います。

具体的には、そうした活動の重要な一つの機会として、現在進行中の辺野古新基地建設や琉球弧での自衛隊基地建設および日米軍事一体化などに反対する人々との連携を模索することを企画しました。

いま沖縄等で基地建設が進められている理由の一つが東アジアの緊張関係にあることは明らかですが、だとすれば、いかにすれば東アジアの平和構築に向けた連携が可能となるのか、という点が問われるべきことだと思われます。

そこで、2021年秋の集会は「砂川の大地から、とどけ平和の声――基地問題と東アジアの平和」というテーマを掲げて、連携に向けた集会を開催したいと考えました。

そして、基地や平和の検討というテーマにふさわしく、かつ国内外に発信力のあるお二人の方、すなわち「東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター」センター長の緒方修氏、および「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」共同代表の木村朗氏に、砂川闘争を踏まえて、現在および未来の「基地と平和の問題」に関するご報告をお願いすることにしました。

なお、お二人のご報告を受けて、「砂川平和ひろば」の活動に関わってきた人たち(砂川平和ひろば代表の福島ほか、砂川平和ひろばメンバーの井上・白崎・吉澤・須江の4名)が、「砂川と私」という視点も交えて、発言する機会を設けました。そこで、報告者のお二人とこの発言者たちとの間での質疑応答もなされるはずです。

以下は、この集会での時間配分を含めた全体プログラムとなります。
―――――

集会タイトル:砂川の大地から、とどけ平和の声――基地問題と東アジアの平和

日時:2021年10月10日(日)13:00~16:00
場所:東京都立川市の砂川学習館2F講堂

集会プログラム:休憩を含めて3時間
13:00-開会宣言(司会・西原)
13:05-開会挨拶(砂川平和ひろば代表・福島京子)
13:10-第1報告(緒方修氏)
13:40-第2報告(木村朗氏)
14:10-砂川平和ひろば関係者からの発言(福島・井上・白崎・吉澤・須江)

(14:50から10分間休憩)

15:00-報告者15分リプライ
15:30-フロアーからの質問と応答
15:55-総括・閉会挨拶(福島)
16:00-閉会宣言

 

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西原和久 西原和久

砂川平和ひろばメンバー:砂川平和しみんゼミナール担当、平和社会学研究会・平和社会学研究センター(準備会)代表、名古屋大学名誉教授、成城大学名誉教授、南京大学客員教授。著書に『トランスナショナリズム序説―移民・沖縄・国家』、新泉社、2018年、などがある。

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