【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

岡田充氏講演録まとめ(その3):バイデン大統領の「インド太平洋戦略」と日米安保

宮城恵美子

1.バイデン大統領の「インド太平洋戦略」

続いて「インド太平洋戦略」について説明します。重要ですので少し詳しく振り返ってみましょう。バイデン政権は22年2月に「インド太平洋戦略」を初めて発表しました。主な内容は次の通りです。

①対中(軍事)抑止が最重要課題

同盟国と友好国が共に築く「統合抑止力」を基礎に、日米同盟を強化・深化させ、日・米・豪・印のQUAD(クアッド)」、それから新たに作った米・英・豪の軍事同盟「AUKUS(オーカス)」の役割を定めました。

②「台湾海峡を含め、米国と同盟国への軍事侵攻を抑止する」
日米の対中抑止の前面に台湾問題を挙げました。

③「米軍と自衛隊との相互運用性を高め、「先進的な戦闘能力を開発・配備する」

これが最大のポイントですが、台湾有事を想定した日米共同作戦計画に基づき、作戦共有や装備の配備、最新技術の共同研究などを想定しています。

22年6月24日付の日本経済新聞が、アメリカのアーミテージ元国防長官のインタビュー記事を掲載しています。恐ろしいことに、アーミテージ元国防長官は「台湾有事に備えて、アメリカは台湾に武器を供与する。その武器をまず日本に送る」と述べています。おそらく沖縄に置くのでしょう。

こんな重要なことを一体誰が決めたのか。アメリカの対日政策に大きな影響を与えるジャパン・ハンドラーといわれる米元高官が、平気でそんな発言する世の中になった。

台湾有事に備え継戦能力を高めるため、台湾に一番近い沖縄に武器や弾薬を貯蔵する。いざ、台湾有事になれば、武器・弾薬を中国との戦争に使うということです。アメリカの軍事作戦にとって、台湾と沖縄は既に一体化しています。そういうことを平気で言う時代になったことが恐ろしく感じます。

台湾を訪問した米国の非公式代表団。写真左はアーミテージ元国務副長官。右は台湾の蔡英文総統(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 

④「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の創設

中国に対抗するために、貿易・ハイテクを巡るルール作りで主導権を握り、デジタル経済で自由な越境データ流通の規則を定めることも盛り込まれています。すなわち、中国に依存しない供給網、つまりサプライチェーンづくりをアジア各国に求めています。これにはアジア14カ国が参加しましたが、台湾は参加させませんでした。参加国を増やすためです。

2.日米安保が対中同盟に

台湾有事を念頭にした日米同盟強化の動きを振り返ってみましょう。2021年3月16日、日米「2プラス2」の共同発表では「中国の行動は、日米同盟および国際社会に対する政治的、経済的、軍事的及び技術的な挑戦だ。ルールに基づく、国際体制を損なう威圧や安定を損なう行動に反対する」としています。

さらに同年4月17日、菅義偉首相(当時)とバイデン大統領が日米首脳会議を行い共同声明を発表しました。以下が共同声明のポイントです。

①台湾問題を半世紀ぶりに明記。

実は、これには沖縄に絡んできます。1969年に佐藤栄作首相はニクソン大統領と会談し、沖縄返還で合意しました。同時に共同声明で、「台湾海峡の平和と安定は極めて重要」であることを明記しました。

当時ニクソン大統領は沖縄を返還したことで米軍が基地を自由に使えなくなることを深刻に懸念していました。だから台湾条項を入れたのです。それから50年が経過した現在、再び共同声明に台湾条項を入れたのは、台湾有事の際沖縄の米軍基地の自由使用を確保したいからです。

半世紀前、「日米安保」の防衛範囲はフィリピン以北から旧ソ連の沿海州まででした。つまり日米安保は「極東」の範囲における「地域の安定装置」でした。今回はこれを「対中同盟」に変質させたのです。

②日本が軍事力を強化する決意表明

共同声明の冒頭には、菅前首相が「日本は軍事力を徹底的に強化する決意を表明した」と書かれています。日米共同声明にこんなことを謳うのは異例なことであり、台湾有事に日本が主体的に関与させる上で軍事力強化が欠かせないと見る米政府の意向を反映しています。

これが22年12月の国家安全保障戦略など安保三文書で明記される防衛費のGDP比2%への倍増や、敵基地攻撃能力の保有へとつながっていくわけです。

③台湾有事に備えた日米共同作戦計画の策定で合意

戦争シナリオです。わずか1年もたたないうちに共同作戦計画の原案が作られ、その検証のための日米合同演習が、私が数えただけで7、8回、日本周辺で行われています。まるで坂道を転がり落ちるような速さです。

【その3についての宮城の感想】

日米同盟の内実も変えて、いかに超スピードでアメリカが戦争を作ろうとしているか、緊迫感のある岡田さんの話です。沖縄の新聞二紙(琉球新報・沖縄タイムス)は毎日のように「軍事化」の記事を掲載しています。しかし、未だに一般の方々には状況認識が違うのか、「遠い世界」のように思われているのでしょうか。

そして22年12月16日には、国会審議を全く経ずに、閣議だけで安保関連三文書を決定しました。三文書とは、外交や防衛などの指針である「国家安全保障戦略」、今後10年間の防衛方針を定めた「国家防衛戦略(現・防衛計画)、実際の装備取得計画と自衛隊の体制を盛り込んだ「防衛力整備計画」(現・中期防衛力整備計画)のことです。

このなかで「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」という名称に変えて保有すると明記しましたほか、23年度から5年間の防衛費を現行計画の1.5倍以上となる43兆円とすることなどを盛り込んでいます。限りなき軍拡路線ではありませんか。

軍事力の存在は一触即発の事態を招きかねません。戦争に突入する事態に対して内閣は責任を負えるのでしょうか。全く無責任も甚だしい事態です。

「軍隊は住民を守らない」という言葉は沖縄戦の教訓です。沖縄戦では守らないどころか日本兵が直接沖縄住民を殺害した事例は多数存在しています。

自衛隊が住民を守る、というのは幻想です。幻想にしがみつく軍隊頼みの考え脱皮せねばならないと思います。本土の人は軍隊も自衛隊もその実態を知らなすぎます。自衛隊は米軍と共に闘う戦闘員です。沖縄戦の教訓を大切に、これ以上の軍事拡大を止めていきましょう。

 

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宮城恵美子 宮城恵美子

独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。

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