【特集】ウクライナ危機の本質と背景

偽史倭人伝㊺:プランA―第一次世界「核」大戦の脅威に日本は本気で向き合っているのか?~「小型核爆弾」「限定核戦争」を甘く見たら北半球は皆そろって地獄落ちだぞ!~

佐藤雅彦

ロシアや中国の首脳も参加し、インドネシアのバリ島で行なわれたG20サミットの開催早々に「ポーランドにミサイルが着弾して死傷者が出た」という大事件が起き、さっそくウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアの犯行」と宣言したが、第三次世界大戦を引き起こしかねない事件だけに、さすがの米国バイデン大統領もそれを否定。世界戦争を欲するゼレンスキーの陰謀体質が世界に知れわたった。

ポーランドへのミサイル着弾はロシアの犯行、とゼレンスキー吠える

 

米国プリンストン大学が、単発の小型核爆弾の「限定使用」がたちまち全面核戦争に発展するプロセスを示す模擬演習を3年前に公開した。これは核戦争の危機を甘く見ている欧米の指導者や国民大衆を戦慄させるものだ。

だが日本は、自民公明ゾンビ政府が米国政府に尻尾を振って国際紛争の助長に手を貸している。ロシアばかりか中国や北朝鮮との戦争に、不意に巻き込まれる危険性は強まるばかりなのだ。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「第三次世界大戦」を欲している

第17回・20か国地域首脳会合、通称「G20」は2022年11月15日からインドネシアのバリ島で始まったが、開催早々にきわめて物騒なニュースが欧州から飛び込んできた。ポーランドに「正体不明」のミサイルが着弾して複数の死傷者が出たのである。

ウクライナのゼレンスキー大統領はただちに「ロシアの仕業」だと断言し、CIAの匿名の高官がAP通信に対してこれを念押しする“証言”まで行なった。ロシア政府の首脳もこのサミットに参加しているから、ゼレンスキー説が本当なら面目(めんぼく)丸つぶれである。

しかし対外情報宣伝戦がきわめて不器用なロシア政府ではあるが、こういうタイミングで自滅的な不手際を起こすのは考えにくいことだ。CIAやホワイトハウスが「カラスは赤い」と唱えれば、チンドン屋マスコミがそれを増幅してプロパガンダを行ない、嘘でも「本当」だと世界の大衆を信じ込ませてきたのが、これまでの定石であった。

たとえばロシア軍が占領したウクライナの原発が「ロシアによって攻撃されている」という間の抜けた嘘でも、それがウクライナの国内で完結しているかぎりは、バイデン大統領やその取り巻きの偽善者どもは喜んで嘘の増幅と権威づけに力を貸したであろう。……が今回は、そうは問屋が卸(おろ)さなかった。

もしも本当にロシアのミサイルが、NATO加盟国であるポーランドを攻撃したということになれば、NATOの存在意義からして、ロシアに宣戦布告せねばならない。NATOの領袖(りょうしゅう)である米国も、当然、ロシアを敵に回して公然と戦争をする羽目になる。

戦争は、基本的に、自国の能力に応じて行なわざるを得ない。他国からの「寄付」や「喜捨」で戦争を行なうというのは、原理的にナンセンスである。ところがウクライナのゼレンスキー政権は、NATOや米国からの寄付(軍事援助や経済援助)を当てにして戦争をしている。つまり「乞食の戦争」である。

ヨーロッパのNATO加盟国も、領袖の米国も、ゼレンスキー大統領に強請(ゆす)り集(たか)り哀願で乞(こ)われるままに「寄付」を続けてきたが、もはや自国の兵器の在庫が底をつき始めている。

ヨーロッパ諸国に至っては、ロシアと敵対した結果、エネルギー資源の輸入が出来なくなり、国民生活も産業もいまや青息吐息の状態なのだ。このまま行けばヨーロッパの国々は――そして米国でも――都市暴動や政権転覆や「革命」が起きかねない“危険性”に追い込まれている。

ロシアも、中国やアメリカ合衆国と同様に、度(ど)し難(がた)い「大国主義」「帝国主義」の病(やまい)に蝕むしば)まれていることは疑いようがない。

しかしそんな国に「戦争」を挑んで決着をつけるというのは、そもそも無茶な発想なのであって、武力行使に拠(よ)らない「外交交渉」という正道を軽んじすぎれば自滅あるのみだ。

“十五年戦争”で自国を滅ぼしてしまった日本は、この歴史的教訓を世界に伝える“よき精神指導者(メンター)”になる資格があるだろう。(資格はあっても能力がないのが玉に瑕(きず)だけどね……)。

米国およびNATO諸国が、ゼレンスキー大統領の“主戦論”を肯定して応援するかぎり、ゼレンスキー大統領が思い願う政治的・軍事的結果を実現させるには、米国NATOがロシアと本格的な戦争をして勝利し、ロシアを分割解体して今後二度と「大国主義」「帝国主義」にむけた野望を抱けないよう、“新世界秩序”を創るしかない。つまり単純にいえばゼレンスキー大統領の「主戦論」は「第3次世界大戦をつうじたロシアの解体」という願望に向かわざるを得ない。

3年前にプリンストン大学が制作した「NATO米国vsロシア」全面核戦争シナリオ

米国のプリンストン大学は核兵器の研究開発にも大きな貢献をしてきたが、この大学の《公共および国際政策》専門大学院に置かれた《科学技術とグローバル安全保障》プログラム(https://sgs.princeton.edu/)が2019年の秋に『プランA』という核戦争シミュレイションを公開した。

この戦争模擬演習は、全編4分18秒の動画として《ユーチューブ》で公開されているので(https://youtu.be/2jy3JU-ORpo)だれでも見ることができる。

シナリオは次のように展開する。

――NATOとロシアとの間で通常戦争が起きたが、ロシアは爆撃機に小型核爆弾を1個のせて、中部ヨーロッパに飛んでいって「威嚇核爆発」を行なった。

(なお「威嚇核爆発(warning nuclear shot)」というのは原爆の歴史の最初から考えられていた。つまり「マンハッタン計画」で原爆が完成した頃、その対人使用、すなわち無差別大量殺戮(さつりく)に反対して「直接、日本の都市に落とすのはやめて、無人島とか本土以外の島で“試爆ショー”を日本人に見せて怖(こわ)がらせれば十分に効果的だろう」という提案もあった。これは却(しりぞ)けられて、ヒロシマとナガサキに原爆が落とされた)。

ロシアが中欧で“披露(ひろう)”した「威嚇核爆発(ウォーニング・ヌークリア・ショット)」は、その投下地がたとえ“僻地(へきち)」”であっても、陸地で行なうかぎり相当多数の人的損害が出るはずである。NATOはただちに、ロシアの爆撃機が出撃したカリーニングラードに小型核爆弾を投下して反撃した。

(ここで見落とせないのは、ロシアが国内からでなく“飛び地”で北欧に近いバルト海沿岸のカリーニングラードから核爆撃機を出撃させたことだ。この小細工で、最初の報復攻撃を、ロシア国内は受けずにすむ。いわばカリーニングラードは“拳闘の砂袋(サンドバッグ)”に等しい。

米国が、中国や北朝鮮やロシアにちょっかいをかける時、最初に“砂袋”の打たれ役を押しつけられるのは、元帝国海軍主計少佐でロナルド・レーガンの“九官鳥”として活躍した中曽根康弘総理大臣曰(いわ)くところの「極東の不沈空母」ニッポンであり、とりわけ沖縄だというわけである)。

本稿では、この動画の最初から最後までをスクリーンショット画像つきで紹介する(なお画像のなかで、海に散らばる“短い横棒”は核兵器搭載潜水艦、空を飛ぶ小さな“手裏剣”のようなものは核爆撃航空機、放物線状の軌跡をひきずって地上高くを飛ぶのは核ミサイルである)。

核戦争が始まったら、まず核戦争に必要な軍事基地を殲滅(せんめつ)するが、たいていの軍事インフラを破壊したあとに、敵国の経済力の国民の気力を奪うために、大都市と経済インフラも殲滅することになる。

この最終段階(敵民間重要拠点の殲滅計画(カウンターヴァリュー・プラン))で日本の沖縄米軍基地や、横須賀近海からも、核ミサイルがロシアに発射されていることは注目すべきである。在日米軍基地は、潜在敵国にはとって、核攻撃の対象なのである。

今回のシミュレイションはあくまでもロシアと米国NATOとの戦争に限定されているが、戦争が始まればいずれの陣営もかならず、第三者を戦争に巻き込んで“共犯の絆(リンケーヂ)”を作ろうとする。

朝鮮戦争が、最終的に米国「国連軍」とソ連・中国との代理戦争になった事実を忘れてはならない。敵対抗争しているどこかの国の“舎弟”になれば、敵側から命を狙われるのは当然の道理だ。日本が「平和憲法」を守りたいなら好戦ブルドッグの米国との軍事同盟は解消するほかない。

それがイヤなら、ハワイやグアムのような“完全なる米国領土”になればよかろう。その時は天皇制も日本語も諦(あきら)める、という覚悟のうえで……。

 

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佐藤雅彦 佐藤雅彦

筑波大学で喧嘩を学び、新聞記者や雑誌編集者を経て翻訳・ジャーナリズムに携わる。著書『もうひとつの憲法読本―新たな自由民権のために』等多数。

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