【特集】ウクライナ危機の本質と背景

偽史倭人伝㊺:プランA―第一次世界「核」大戦の脅威に日本は本気で向き合っているのか?~「小型核爆弾」「限定核戦争」を甘く見たら北半球は皆そろって地獄落ちだぞ!~

佐藤雅彦

【プランA】動画が示す全面核戦争への展開

https://sgs.princeton.edu/the-lab/plan-a
https://youtu.be/2jy3JU-ORpo

①【動画冒頭】

『プランA』

ロシアと米国の扮装がどのようにして通常戦争から全面核戦争にエスカレートするかを、これから示していこう。このシミュレイションは、現在の軍事態勢・攻撃目標・死者数見積もりに基づく。

②【動画開始18秒後】

威嚇的核爆発(Nuclear Warning Shots)」の実施

このシミュレイションは“通常戦争”〔=核兵器以前の従来型兵器を従来的な戦域で用いる“紛争”〕から始まる。ロシアと米国NATO連合は通常戦争をしているが、ロシアは米国NATO連合の優勢を食い止めるために、カリーニングラード〔=リトアニアとポーランドに挟まれたロシアの半飛び地である“カリーニングラード州”の州都〕近郊のロシア軍基地から〔戦術〕核爆弾を積んだ爆撃機を発進させて〔ポーランドとドイツの国境付近の〕NATO圏内に一発投下して“威嚇的・警告的な核爆発(a nuclear warning shot)”を行なった【図1】。

【図1】ロシアがカリーニングラードからの核爆撃機でポーランド・ドイツ国境付近を「威嚇核爆発」する。

 

NATOはこれに対する報復として、フランスとドイツの国境付近〔ルクセンブルク付近〕から爆撃機でカリーニングラードに戦術核兵器を一発投下する【図2】。

【図2】NATOがルクセンブルク付近から爆撃機を飛ばして、カリーニングラードを戦術核爆弾で報復攻撃する。

 

③【動画開始1分後】

戦術核戦争計画(The Tactical Plan)」の発動

核兵器使用の自制が「我慢の限界(nuclear threshold)」を超えたことで、ヨーロッパで展開されていた通常戦争は「戦術核戦争(a tactical nuclear war)」へと段階的拡大を遂げる。

ロシアは、まずは爆撃機【図3】で、さらに短射程ミサイルで【図5~6】、300個の核爆弾をNATO基地および前進中のNATO軍に投下して攻撃する。〔フランス、ドイツ、イタリア、トルコなどのNATO核軍事基地を、先制核攻撃する〕。

【図3】ロシアが戦術核で、NATOに反撃を開始。まずは爆撃機で、NATO核軍事基地に核爆弾を投下。

 

これに対してNATOも爆撃機でおよそ180個の核爆弾を投下して反撃する【図4】。

【図4】NATOも爆撃機を使った戦術核で反撃する。

 

ロシアはさらに短射程核ミサイルを発射して、NATO基地群をさらに破壊する【図5~6】。

【図5】ロシアが短距離ミサイルで戦術核攻撃を開始。

 

【図6】ロシアの短距離ミサイルがNATO諸国の主要軍事基地を攻撃。

(これによる即時的死傷者〔immediate casualties〕は260万人、所要時間は3時間)。

 

④【動画開始2分4秒後】

報復的・敵核軍事施設殲滅攻撃計画(The Counterforce Plan)」の発動

〔訳注――「カウンターフォース・プランとは、限定核攻撃を受けた際に、敵の核兵器・軍事施設に対して行なう十分な破壊報復攻撃の実施計画を指す〕。

ヨーロッパが破壊されたことで、NATOは米軍基地および潜水艦から、ロシアの核軍事基地に向けて600個の核爆弾を打ち込んで「戦略核攻撃(a strategic nuclear strike)」を開始する【図7】。

【図7】NATOが「カウンターフォース・プラン」を発動させて、米国基地と潜水艦から戦略核ミサイル攻撃を開始。

 

これに対してロシアは、NATO軍からの核攻撃で自国の核武装システムを失う前に、ミサイルサイロ、ミサイル発射車両、潜水艦から核ミサイルを発射して反撃する【図8】。

【図8】ロシアも戦略核ミサイルで反撃を開始。

(これによる即時的死傷者は340万人、所要時間は45分間)。

 

⑤【動画開始3分14秒後】

敵民間重要拠点の殲滅計画(The Countervalue Plan)」の発動

核攻撃で受けた損害から敵陣営が回復するのを阻む目的で、ロシアもNATOも、それぞれ、敵陣営の最も人口が多い都市や、経済活動の中心地、30ヵ所に対して、戦略核攻撃を行なう【図10~12】。

都市攻撃は、その都市が抱える人口に応じて、1都市あたり5~10個の核爆弾(核弾頭)を用いる。

【図10】「対価値」攻撃で敵殲滅を念押しするために、ユーラシア大陸周辺のロシア軍とNATO軍の潜水艦から、核ミサイルが一斉に発射される。

 

【図11】米軍のSLBM(潜水艦発射式大陸間弾道ミサイル)はロシアの、ロシアのSLBMは米国の、主要都市に向けて飛んでいく。

 

【図12】戦略核戦争による、ロシアと米国NATOとの「相互確証破壊」がここに完成!

(これによる即時的死傷者は8,530万人、所要時間は45分間)。

 

⑥【動画開始3分54秒後】

9,150万人の直接的死傷者が発生する

ロシアと米国NATOとの間で展開されるに至った核攻撃の応酬に次ぐ応酬で、直接的な死者3,410万人、直接的な負傷者5,740万人が、生じる結果となった。

「死の灰」〔=核爆発降下物〕や、〔核爆発で生じた大量の煤塵が長期間、大気中に浮遊し続ける結果、太陽光の地上到達量が大幅に減ることで気温が長期的に低下する「核の冬」のような〕核爆発の長期的影響が生み出す死傷者・疾病者の数は、これに含まれていない。そうした間接的な犠牲者も勘定に入れれば、ここに示した犠牲者数の推定値は格段に膨らむことになるはずだ。

(このシミュレイションは、Alex Wellerstein, Tamara Patton, Moritz Kutt, および Alex Glaserが、Bruce Blair, Sharon Weiner, and Zia Mian, Pavel Podvigの助けを借りて制作した、動画の音響効果はJeff Snyderによる。尚、核爆発による都市部の死傷者の規模については《NUKEMAP》〔https://nuclearsecrecy.com/nukemap/〕のデータを利用させて頂いた)。

(月刊「紙の爆弾」2023年1月号より)

 

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佐藤雅彦 佐藤雅彦

筑波大学で喧嘩を学び、新聞記者や雑誌編集者を経て翻訳・ジャーナリズムに携わる。著書『もうひとつの憲法読本―新たな自由民権のために』等多数。

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