【特集】統一教会と国葬問題

自公野合「軍拡政策」とバーター、創価学会・公明党 救済新法“骨抜き”の重いツケ

大山友樹

・救済新法の抜け穴

「やはり政権に参画していてよかった…」。いま創価学会の首脳は、ホッと胸をなでおろしているのではないか。

昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を契機にクローズアップされた政治と宗教の不正常な関係や高額献金被害。先の臨時国会で政府そして与野党は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の宗教法人の解散や、高額献金被害に対処するための制度作りに着手し、「マインドコントロールを法律で定義するのは難しい」との自民・公明両党の主張に基づいた政府案が国会に提出された。

female hand with a puppet of a man in a black business suit on a pink background, manipulation and control concept

 

わずか5日間で審議は終わり、会期末の12月10日に、「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」(新法)として可決成立された(賛成=自民・公明・立民・維新・国民、反対=共産・れいわ)。

だが表向きには効果のありそうな禁止規定と罰則規定が設けられているものの、その内実は抜け穴だらけであり、新法の高額献金規制と被害救済の実効性には大いに疑問符が付く。

A news headline written in Japanese as “laws and regulations”

 

というのも新法では、禁止行為として「霊感等の知見」で不安を煽ることが挙げられているが、そこには「当該寄付をすることが必要不可欠である旨を告げること」との保留条件が付いているからだ。すなわち「霊感等の知見」で不安や不利益を煽っても、それを回避するためには「寄付」が「必要不可欠」と言わなければ禁止規定に抵触せず、罰則を科されないのである。

同様に新法では、マインドコントロールや宗教的呪縛に繋がる「個人の自由な意思」の「抑圧」や、「適切な判断」能力を奪う行為を、法律上の禁止事項ではなく「配慮義務」としてしまった。違反すれば罰則ないしは取り消しが可能となる法律上の禁止事項ではなく、単なる「配慮」で罰則もないというのでは実効性は乏しく、「仏作って魂入れず」の典型としか言いようがない。

そして新法では、「不退去」「退去妨害」「他者への相談の妨害」「行為に乗じて関係の破綻」「霊感等の知見に基づく告知」などの禁止行為があった場合、寄付を取り消す「取消権」を認めている。だがこれも取り消しの前提条件として「困惑」要件が加味されている。すなわち「霊感等の知見」や「退去妨害」などによって、寄付をする個人が「困惑」した場合にのみ「取消権」が認められるというのである。
これではマインドコントロール下にあって自発的・積極的に献金するケースには、「取消権」は全く及ばないこととなる。

「マインドコントロールや宗教的煽動によって、統一教会や創価学会、さらには他の新興教団においても、多くの信者・会員は、宗教的使命感や責任感を涵養(かんよう)され、あるいは現世利益や功徳を求めて自発的・積極的に寄付・献金に応じる。当然、そこに『困惑』はなく、むしろ使命感や責任感を果たす喜びや、現世利益や功徳への期待の思いで献金している。そうした場合は取り消しの対象にはならない。

本来、法律で禁止すべき個人の自由な意思の抑圧を配慮義務とし、『霊感等の知見に基づく告知』によって不安を煽っても、不安や不幸から逃れるためには献金が『必要不可欠』とさえ言わなければ免責されるのだから、有名無実だ」(宗教問題に詳しいジャーナリスト)。

それだけに新法成立にあたって、旧統一教会被害の救済に尽力してきた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が、「禁止行為や取消権などの対象となる行為の範囲が狭い。被害防止、被害者救済の観点からあまりに不十分」との「声明」を出したのも当然と言えよう。

・新法成立を聖教新聞で礼賛

だが、政権与党・公明党の組織母体である創価学会は、この新法の成立を「公明が救済新法の成立に全力」(聖教新聞12月13日付)と、公明党の被害者救済の努力の結果だと礼賛。同日付の座談会記事で、新法の内容を次のように評価している。

〈谷川(主任副会長):公明党は類似の被害を出さないよう、既存の消費者関連法の見直しだけでなく、新たな立法の必要性を国会で訴え、今国会での成立を目指してきました。(中略)新法の柱は、個人から法人や団体への寄付の際、霊感を用いて不安をあおり、個人を困惑させる行為のほか、借金などによる資金調達要求を禁止し、命令違反などへの罰則が設けられたことです。さらに、家族の被害救済についても、盛り込まれました。

田島(学生部長):宗教研究者の櫻井義秀氏は、被害者救済を急ぐ必要性を指摘した上で、「旧統一教会の統制目的で、他の宗教団体に影響が及んでは意味がない。宗教団体の組織存続の要は寄付や献金、布施であり、さまざまな団体が納得する形にするべき」と述べています。(中略)

谷川:旧統一教会問題に便乗した学会へのデマや、「信教の自由」を侵す行為は絶対に許してはなりません。旧統一教会問題は、「宗教」ではなく、『反社会的活動を長年継続する団体』の問題です〉。

表向きの禁止行為や罰則規定だけを掲げて評価する一方で、抜け道には一切言及せず、旧統一教会問題の火の粉が創価学会に降りかかってくることへの警戒感を露わにする聖教座談会記事。創価学会の本音と願望がよく表れていると言えるが、創価学会は新法が〝骨抜き〟になり、創価学会にとって痛くも痒くもない法律になることをすでに確信していたようだ。

A news headline that says “watered down” in Japanese

 

なぜなら国会で新法の審議が繰り広げられている最中の11月末から12月にかけて、創価学会は「財務」という献金を全国で大々的に実施していたからである。

統一教会の高額献金の比ではない、年間1,000億円とも1,500億円ともいわれる創価学会の「財務」集金。そこでは宗教的煽動が繰り返され、会員に自発的・積極的な献金が促される。

今回の「財務」を前にしても聖教新聞には、馬の鼻先のニンジンならぬ「功徳」「福徳」などの文言が原田稔会長ら最高幹部から発せられていた。たとえば11月13日付の同紙には、原田稔会長のこんな発言が載っている。

「今月末からは、財務納金が始まります。コロナ禍、また物価高や円安など、国民生活に大きな影響が出るなかでの、広布部員の皆さまの赤誠に、深く深く感謝いたします。

大聖人が門下の御供養を『今の檀那等は、20枚の金のもちいを法華経の御前にささげたり。後生の仏は疑いなし。なんぞ今生にそのしるしなからん』とたたえられた通り、世界広布を進めゆく財務で、福徳輝く人生を開いていけることは間違いありません。

詐欺や事故などには細心の注意を払っていきたいと思います。最後まで絶対無事故で、功徳あふれる財務となるよう、真剣に祈ってまいります」。

創価学会が誰はばかることなく、大っぴらに「財務」を推進し得たのは、公明党、そして各種選挙で支援している自民党の尽力で、新法が〝骨抜き〟になることを確信していたことの証左だろう。

Church Donation Can with Cross and Money Isolated on White Background.

 

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大山友樹 大山友樹

ジャーナリスト。世界の宗教に精通し、政治とカルト問題にも踏み込む。

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