【連載】安倍晋三の射殺と三代の腐れ縁(藤原肇)

第6回 あとがき(完)

藤原肇

最初の段階においては、安倍首相や統一教会について、遠近法を使い事件の全体像を描き、詐欺商法の手口を使ったカルト集団が、日本の政治の中枢に浸透し、政治路線に影響を及ぼしたことを書いた。それが統一教会による日本乗っ取りであり、岸信介から安倍晋三に至る三代への工作で、息の長いアプローチによって、日本は邪教集団の手の中に取り込まれた。

こういった息の長い工作の追跡は、私のような長期取材の経験を持ち、世界を舞台に仕事をした者でないと、若い人には無理な作業だし、相互連関に習熟しない限りは、全体像を掴み取るのが難しい。また、多くが還暦前の仕事だったから、取材の対象が「タン壺」や「肥え溜」でも、穢れや悪臭を気にしないで、取材を躊躇わなかったから、私は調査報道の基本に忠実に仕事をした。

体験的に知り得た情報に基づき、第二部では詐欺師の世界について、纏める予定をたてていたから、それを論じて本を仕上げるつもりで、世界の読者に贈ろうと思っていた。ところが、星を追想し宇宙を論じていたら、地上のゴミや汚物について書くのが嫌になり、それは若い世代に任せるのが、より良いのではないかと思い当たり、第二部は構想だけで打ち切ることにした。

しかも、「梗概」でウクライナ戦争に触れ、第三次世界大戦を危惧したが、この戦争の将来について論じないで、中途半端な形で打ち切ったのは、早い段階で結論を下さずに、「あとがき」までの忍耐を期待した。それは、早い段階で結論を書けば、読者の期待を裏切ると恐れたからで、全体像を理解してから、結論に到達する醍醐味が、古典的な本を読む時には、最高の満足をもたらせるから、その喜びを分かち合いたかった。

現代はせわしない時代で、スピード信仰が著しいために、大学でさえ熟考するよりも、早く答えを見つけようとし、食事でさえも味わうよりは、ファスト・フードで早く食べ、吟味する楽しみを軽視しがちだ。だが、まともな女性は9か月前に、子供を産まないものであり、良いものを手に入れるためには、必要な時間を惜しまないで、丁寧にプロセスを踏むのが、人類が受け継いだ知恵である。

ウクライナ戦争の初期は、戦車の機甲師団が登場し、第二次大戦を思い出させたが、途中から技術革新の成果で、ドローンやミサイルが使われ、量子衛星やロボットの存在が目立った。ギリシア神話の中には、青銅製の自動人形(Talos)が登場し、それはクレタ島を守る自動人間だが、米海軍は対空ミサイル艦を持ち、陸軍は二足歩行形式や、動物型のロボットを開発しており、戦争の無人化も顕著である。

現在はSingularityが論じられ、AIが人間の知能を超え、社会や人々の暮らしにおいて、大きな影響を与える技術的な特異点が、2045年頃に到来すると、多くの識者が考えている。現にウクライナ戦争で、重装備のロシア軍に対して、ウクライナ軍が対抗しているのは、米軍の軍事顧問団による、量子衛星を使った支援があり、パランティア社のAI技術のお蔭である。

G4レベルのロシア軍に対し、G5レベルの米軍の情報力は、圧倒的な優位を発揮して、戦術や補給兵站の面で、旧式のロシア軍を凌駕しており、米国の技術力がウクライナの命綱だ。虎視眈々と狙うポーランドに、ウクライナが吸収されないで、存在している背景にあるのは、最も進化したRobotのAIが、機能しているからであり、それが情報革命の成果でもある。

Robotはチェコ語だが、Carel Čapekの戯曲『RUR』 (Rossumoi Univerzalni Roboti)では、労働を意味する古スラブ語に由来し、語源的には隷属を意味して、兵隊との関連で意味深長である。そして、『RUR (ロッサム万能ロボット会社)』という終末をテーマにした小説は、ヒトラーを痛烈に批判したので、ゲシュタポはチャペックを天敵視したが、彼はナチス軍のプラハ占領の直前に死んでいる。

それにしても、この興味深いSF小説は、最後の章の終わりの言葉に、「神よ、人間が作り出した下らないものは、総て時と共に消滅しました。消え去り果てました。ただ、生命だけが不滅です」と記している。この言葉は意味深長で、戦争の愚かさだけでなく、人間が作ったあらゆるものが、核開発と同様に愚かであり、悪魔の産物だと糾弾して、物欲に溺れた人間を批判している。

核は生命の惑星である地球に無用の熱源であり、太陽的な惑星だけがエネルギー源として、活用できることに関しては、エクセルギーを知る科学者には、常識以前の基礎知識である。だから、原爆や水爆に利用した、政治家や軍人を始め、協力した科学者や技術者は、悪魔の召使に等しい存在だし、広島や長崎で被爆したのに、抗議の声も上げない日本人は腰抜けだ。

核兵器を使えば全生命の終わりで、地球が死の惑星になることは、独裁者が支配する国の国民を始め、ネオコンが跋扈する国の市民も、熟知していることだから、愚かな指導者でも核のボタンは押せない。プーチンやバイデンが幾ら血迷っても、通常兵器の戦争でさえ「金食い虫」であり、軍産複合体の求めに応じて、軍事予算の拡大は出来ず、インフレと財政破綻で息切れに陥る。

そうなることは簡単であり、「金の切れ目が縁の切れ目」で、戦争政策は放棄せざるを得ず、幾ら兵隊に戦意があっても、補給が途絶えるならば、戦いを止めない限り餓死か全滅だ。だから、戦争は継続できないし、止める決断が出来なければ、市民が反乱して内戦が始まり、内部から体制が崩壊して、権力者の逃亡か処刑劇が、歴史において繰り返されて来た。

話をウクライナ戦争に戻すと、代理戦争の運命の法則は、傀儡政権の鼻息の荒さと無関係に、背後で操る者の気分次第で、あっという間に状況が変わり、終わりが始まり逃亡劇が出現する。ベトナム戦争やアフガン撤退に似て、資金供給と補給の中止で、大規模な行動は一瞬で終わり、軍事顧問団と傭兵が逃げ、放棄された軍需装備は無惨にも、略奪される獲物になる。

しかも、信者の無知に付け込んだ、バチカンの免罪符の販売が、宗教戦争を生んでいるし、それを真似た統一教会の献金は、霊感商法の「タン壺」の販売や、合同結婚式の狂乱を横行させた。また。石油資源を巡る利権争いが、オルガルヒやシロビキを生み、人間や工業のエネルギー源である、食料や石油の争奪の形で、地政学的な餌食を狙って、ウクライナ戦争を生んでいる。

本書は2つのタブーがオムニバスで結合し、常識では結びつかないものが、統合されているという点では、世界に唯一の本に属しており、それを予想せず読んだ読者は、意外な展開に驚いたに違いない。統一教会と安倍の射殺事件が、ネオコンや英米金融資本を媒体に、ウクライナ戦争に結びつき、2つの事件が地下において、結びつきを持っていたと知ったことで、構造分析の威力を実感したと思う。

統一教会と安倍の射殺事件は、戦後数十年の政権を維持した、政権与党である自民党(LDP)という私党が、靖国カルトの一員の統一教会に、食い荒らされた狂乱図であり、極東の一角での乗っ取り劇だ。第二次世界大戦の侵略戦争を反省し、かつては自由と民主を党名に使い、戦後の復興を政治で実現しようと、結集した政治家の集団が、長い年月で腐敗と堕落してしまい、Demoral Partyに転落した縮図である。

それに対しウクライナ戦争は、ユーラシア大陸の中央部で、エネルギーと食料資源を巡る、覇権争奪に関わる代理戦争だし、人類だけでなく全生命を含む、地球の運命を決定づける愚かな相克だ。果てしない欲望に支配され、カネの魔神に憑依された人間が、権勢力の拡大を求めて盲動し、プーチン、ゼレンスキー、バイデンなども、その正体は操り人形に過ぎないのである。

産業革命以前の戦争は、他人の土地に攻め入り富を奪い、領土や奴隷を手に入れることが、権力者にとっての仕事であり、地主の中から貴族や王族が生まれ、その支配が歴史の根幹を構成した。産業革命以降の世界では、地代や家賃を資本に転換して、奴隷を労働者として大衆化を図り、地主が資本家として自由を論じ、国家が土地を持つ官僚制の手で、計画経済を推進したのである。

宗教支配者も地主の一種で、信者の収入の一割に対し、寄進の形で税金(tithe)を取るが、これは古代からの習俗であり、現代でも鉱産資源や印税に、この伝統の影響が残っている。それで満足しなくなった時に、カトリックは免罪符を売ったし、カルト宗教による霊感商法を始め、「財務」を名目にした寄付行為が、信者にノルマ化した形で、年中行事として強制されいる。

特に統一教会の場合は、「祖先の呪いを解く儀式」として、430代前の先祖まで解怨せよと、「全世界の祝福家庭は、天一国基元節を迎えるために、既に霊界に行っている祖先を、絶対善霊に作らなければならない。従って基元節までに、430代までの先祖解怨と先祖祝福を必ず完了しなさい」と書き、信者に命令しているのだ。しかも、先祖解怨式の費用としては、7代までが70万円であり、8代以降は7代毎に3万円で、この料金表に従って計算すれば、数千万円を収奪されるが、借金をしても払えというのだ。

こんな強欲な収奪方式は、単なるカルトではなく詐欺で、邪教というしかないのに、英語の辞書には邪教として、Paganismしか見つからないが、マックス・ウェバーの用語ならば、Pariahがより近いと思う。むしろ、こんなおぞましいカルトは、Moonieismというべきであり、OEDに詐欺商法のカルトとして、新しい言葉を登録する必要がありそうだ、と切実に感じた次第である。

 

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藤原肇 藤原肇

フリーランス・ジャーナリスト。『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』『日本に巣食う疫病神たちの正体』など著書多数。海外を舞台に活躍する。

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