【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第1回 凡例

寺島隆吉

本書ではウクライナの首都を「キエフ」と記述しています。

しかし最近の大手メディアは、これを「キーウ」と表記することが多くなってきているように思います。とはいえ本書では「キエフ」という表記のままにしてあります。

理由は2つあります。ひとつは本書がブログの連載をもとにしていますから、これを途中から「キーウ」に変えると読者に混乱が起きるからです。私も新聞が突然「キーウ」という表記を使い始めたとき、一瞬、頭が混乱しました。すぐに頭に浮かんだのが果物の「キウイ」だったからです。

もうひとつの理由は、英字新聞もウィキペディア日本語版も、表記は「Kiev」「キエフ」のままだからです。英字新聞もウィキペディアも表記を変更しなかったのは私と同じ理由ではなかったかと思われます。

ウクライナ政府がロシア語の使用を国民全員に禁止したことを受けて、日本政府や多数の大手メディアは、ロシア語に由来する「キエフ」表記からウクライナ語に由来する「キーウ」表記への変更をおこなったのでしょう。

しかし、そもそも「ロシア語の使用を国民全員に禁止すること」自体が、国際人権法で保証された「言語権」を踏みにじるものです。今回の「ウクライナ問題」はアメリカが仕組んだ2014年のウクライナのクーデター政権が、今までドンバス地方の住民に保証されていたロシア語による会話、ロシア語による学習を禁止する政策を強めてきたことに、その一因があります。

かつて明治政府が沖縄県民に「琉球語」による会話を厳しく禁じる政策をとってきたのと似ています。沖縄県では学校で琉球語で話す生徒に「方言札」を付けさせましたが、現在のウクライナ政府がとっている政策は、国際人権法で保証されている「母語で学習する権利」を土台から踏みにじるものです。

ですから、日本政府や大手メディアは、ロシア語に由来する「キエフ」表記からウクライナ語に由来する「キーウ」表記へと、安易な変更をおこなうのではなく、むしろ現在のウクライナ政府がとっている言語政策そのものにたいして、厳しく批判すべきだったのではないでしょうか。そうすれば今の「ウクライナ危機」をもたらした原因の半分は未然に防げたはずですから。

他にもネオナチの武装集団「アゾフ大隊」がウクライナ正規軍に組み込まれてからは「アゾフ連隊」に名前が変更になりましたが、これも本書では「アゾフ大隊」のままにしてあります。

ドンバス住民には通称「アゾフ大隊」として知られていたからです。「泣く子も黙る、アゾフ大隊」だったわけです。

というのは、マリウポリ市でウクライナ軍によって「人間の盾」にされていた市民が、ロシア軍によって解放されてから、口々にウクライナ軍とりわけ「アゾフ大隊」の残虐さを、彼らに取材したジャーナリストに語っているからです。

そのとき市民は「アゾフ連隊」と言わず、ほとんどの市民が「あのアゾフ大隊が…」と言っていたそうです。それほど「アゾフ大隊」の恐ろしさは住民に知れわたっていたということでしょう。

(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体1—アメリカとの情報戦に打ち克つために—』の凡例から転載)

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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