【連載】ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン
ノーモア沖縄戦

メールマガジン第44号:今週の南西諸島軍事強化トピックス(2022年7月25日~31日)

ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会

◇戦闘機 日中中間線越え 嘉手納F15など 東シナ海、大量飛行 米軍、対中圧力を強化(琉球新報、2022.7.26)
◇米軍機 東シナ海大量飛行 対中圧力 中間線越える 本土に接近 緊張懸念(沖縄タイムス、2022.7.26)
◇インドネシアで合同演習 米軍最大規模 日本も参加(琉球新報、2022.7.26)

共同通信の石井暁専任編集委員が、日本と中国の中間線を越えて中国に迫る「米軍機 東シナ海大量飛行」を報じた。石井氏は2021年12月24日の「台湾有事で米軍が南西諸島に攻撃拠点」「日米が合同作戦計画原案策定」を報じた記者である。

米軍嘉手納基地のF15や山口県岩国基地のF22、F35、FA18戦闘機が多数飛び立ち、「10%低度」が日中中間線を越えた。自衛隊の戦闘機は参加せず、警官監視に当たったという。中国に対する日米共同の軍事威圧、挑発行動にほかならない。

世界地図を俯瞰してみよう。太平洋をまたいで沖縄、本土に駐留する米軍戦闘機が中国本土に迫る。逆の行動を中国が米国本土に仕掛けたとしたら、米軍は黙っているだろうか。キューバ危機を思い出せばよく分かる。中国が米国本土に迫る軍事圧力を掛けたとしたら、米国は核のボタンに手を伸ばすくらいの反撃態勢を取るに違いない。

共同通信を含め日々の紙面を中国の台湾、尖閣、東シナ海、南シナ海を威圧する軍事行動の記事が埋めている。石井記者の記事は、中国に対する米国、自衛隊の威圧行動を適示した。「中国脅威論」を政府が煽り、新聞が政権に同調する記事を載せている。そのような風潮の中で冷静な判断を促す記事と評価したい。

◇社説 台湾有事をあおるな 2022年防衛白書(琉球新報、2022.7.26)
◇「日本が戦争」危機感48% 2年前より16ポイント上昇(沖縄タイムス、2022.7.31)

琉球新報社説は「台湾有事をあおるな」と論旨明快に防衛白書を批判した。あおりとして挙げたのは麻生太郎副総理と安倍晋三元総理の無責任な発言だ。

「中国が台湾に侵攻すれば、安保法の存立危機事態として対処すべき」(麻生氏)。中国と台湾の「内戦」でしかない「台湾有事」が、なぜ日本の存立危機事態なのか。中台の紛争に米軍・自衛隊が関与することが中国の攻撃を呼び込む。論理の飛躍を埋める説明はない。

「(台湾有事の)次は沖縄」(麻生氏)。中国が台湾の次に沖縄を攻め取ると言わんばかりの根拠なき暴論だ。麻生氏がこう述べた「都内の講演会」は、沖縄選出自民党国会議員の選挙資金パーティーだった。沖縄県民を「中国脅威論」で煽り、島しょ防衛の意識高揚を図る意図があからさまだ。

「台湾有事は日本有事。日米同盟の有事」(安倍氏)。目的のために手段を選ばず、意図を隠し、国民に説明せず、強権で実行するのが安倍政治だった。安保法制は台湾有事に自衛隊を関与させる意図が明らかになりつつある。安倍氏の発言は逆に読むと分かりよい。対中「日米(軍事)同盟」強化が目的であり、「台湾有事は日本有事」と言いくるめる。なぜか、の説明はしない。ポピュリズム政治家のワンフレーズに騙されてはいけない。

令和4年度防衛白書を読むと、防衛装備の「研究開発費」が「過去最大、796億円(37.6%)増の2991億円」。「次期戦闘機の開発」に加え、「ゲーム・チェンジャーとなる最先端技術への投資を大幅に増やした」とある。

「ゲーム・チェンジャー」とは、「従来の戦闘を一変させる新領域兵器」と言われる。防衛省が血道を挙げる「新兵器開発」の中身を見ると、防御不能と言われる「極超音速ミサイル」の関連技術開発、「水中無人機」、敵ミサイルの領域外から攻撃し、敵基地攻撃にも転用可能とされる「スタンド・オフ電子戦機の開発」、沖縄・南西諸島に配備する「島嶼防衛用高速滑空弾」、「12式地対艦ミサイル(射程延伸)開発」が並ぶ。

白書の冒頭、岸防衛相は中国を名指しに、台湾の緊張をことさらに強調して「防衛省・自衛隊は、いつ如何なるときも日本を断固として守り抜く」と宣言した。最新兵器開発が中国との戦争を念頭に、沖縄・南西諸島への配備を目指していることは明白だ。沖縄の犠牲は織り込み済みということだろう。「断固として守る」日本の中に沖縄は入っていないかのごとくだ。沖縄の戦場化を想定する防衛白書、歯止めない武器開発、予算の拡大は受け入れられない。

「日本で戦争の危機感が高まっている」との回答が48%。2年前より16ポイント上昇(沖縄タイムス)。時代の空気に国民は戦争の危機を肌身で感じている。日本が戦争をする「最も可能性が高い国は中国」が最多、38%に上る。日米政府が喧伝する「中国脅威論」が国民に浸透し、「防衛費のGDP比2%以上増額に賛成56%」(日経新聞5月20日)と防衛強化に賛成する世論が高まっている。

しかし今回の世論調査では「専守防衛維持すべきだ」60%、「核共有を進めるべきでない」56%、「戦争回避は外交重視」32%と、国民の多くは戦争を忌避し、外交による戦争回避を望んでいる。

防衛白書で岸防衛相はウクライナを引き合いに「防衛強化」を押し出した。NATOの米欧諸国が「ロシア包囲」を強め武器援助を注いだ結果が終わりの見えないウクライナの戦場化だ。

ロシアの武力にNATO支援の武力で対抗する抑止論は破綻した。日米+NATOの様相を強める台湾支援の「中国包囲」も、力に力の抑止が破綻し、台湾・沖縄の戦場化に陥りかねない。「防衛強化」一辺倒ではなく、「互いに武器を置こう」という「対話外交」に切り替えるべきだ。

 

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