【連載】鑑定漂流ーDNA型鑑定独占は冤罪の罠ー(梶山天)

第14回 菅家さんが逮捕後初めて足利事件否認

梶山天

検察の調べの内容が注目されるのは、一審裁判第5回と第6回の公判期日の間である同年12月7日のものだ。森川検事はこの日も、同拘置支所へ足を運び、菅家さんを取り調べていた。足利事件は、事実だとしても、他の未解決2事件はよほど気になっていたのだろう。

 

森川:「あのー、君の捜査がさ、今までね、『私がやりました』というね、調書録っているでしょ。そのことについてね、もう一回くらい聞こうかなと思ってね。本当に君がやったのかどうか、もう一回確かめたくてね、来たわけ。だから、今までね、こういうことを言っていたああゆうことを言っていたということにこだわらないで、今日はもう自由な気持ちで、楽な気持ちで話してもらいたいと、こう思っているわけ。ね。本当にやったのなら、本当にやったということで構わない。やっていないんだったら、やっていないということで構わない。どちらでもいいんだけども。」

向かい合った2人の間に沈黙が流れる。

菅家:「……本当言うと」。

森川:「うん」。

菅家:「(言っても)いいですか」。

森川:「いいよ」。

菅家:「やってません」。

森川:「やっていないの? どちらも? それとも片方だけ?」

菅家:「どちらもです」。

森川:「どっちもやっていない」。

菅家:「はい」。

(中略)

森川:「ああそう。うん。うん。あのね、万弥ちゃんの事件とその後が有美ちゃんの事件とね、そしてその後が真実ちゃんの事件とね、この三つの事件があるんだけど、ね、この……事件で、もうちょっと結論から聞くけれどね、君がどの事件に関わっていて、どの事件にかかわっていないか」。

菅家:「話していいですか?」

森川:「あー」。

菅家:「全然関わっていません」。

森川:「全然関わっていないの?」

菅家:「はい、絶対言えます」。

森川:「ああそう」。

菅家:「はい」。

森川:「(沈黙・13秒)じゃあね、このことでね、あのー、真実ちゃんの事件については、今裁判になっているわけだけど、君、裁判所ではね、この事件は間違いないと認めたでしょ」。

菅家:「はい」。

森川:「それはなぜなの?」

菅家:「やはり警察ですか、警察行って調べまして、それでまあ、さっき言ったように夜遅くまであのー、調べられました。調べられ、調べられまして、それで、その(12月)1日ですけれどもその日は自分はやっていない、やっていないと言っていたんですよ」。

森川:「うん、うん、うん」。

菅家:「だけど」。

森川:「それは分かっている」。

菅家:「全然認めてくれないんですよ」。

森川:「うん、うん」。

菅家:「自分はもう悔しくなっちゃったんですよ(涙声)。本当にやっていなかったのに」。

森川:「うん?」

菅家:「本当にやってなかったんですよ。それで全部もう認めてくれなくて。それで夜遅くなってしまったんです。それで、なんていうんですか、あの、夜遅くなりましたから、これ以上10日も20日もやっていないやっていないと言うと、殴る蹴るとかされるんじゃないかと自分は恐怖の」。

森川:「分かった」。

(中略)

森川:「うん。だけどさ、君、弁護士さんにはなんと説明していた?」

菅家:「弁護士の人には、なんていうんですか、万弥ちゃんですか、万弥ちゃんとか、有美ちゃんですか、やっていないと言ってました」。

(中略)

森川:「それで? で、弁護士さんにはなんと話したの? この真実ちゃんのことやったって話してんの? やっていないと話したの? どっち?」

菅家:「自分やったと話したんですけども」。

森川:「やったと話したの?」

菅家:「はい」。

森川:「やっていないという話したことはないの? 弁護士さんには?」

菅家:「それはなかったと思います」。

(中略)

森川:「あ、そう。君、裁判が始まったらどうするつもり? また裁判始まったら。今ここで言った通り言う? まだ決めてない?」

菅家:「(沈黙・15秒)」。

森川:「どうする? はっきり決めてない? 弁護士さんには今ここで話したような話はするつもり? しない? そこは決めてない? こっちへ戻ってからね、拘置所から、東京拘置所からこっちへ戻ってから弁護士さんと何回か面会した? まだ全然?」

菅家:「戻ってきたの3日です」。

森川:「うん、そうだね。東京拘置所に行ってる間、弁護士さんは面会に来なかった?」

菅家:「はい」。

Man in prison

 

菅家さんが初めて足利事件の起訴事実を否認した。否認を貫く菅家さんに森川検事は、裁判でどのように供述するつもりか、決めていないことや、弁護人に話していないことを確認した。森川検事がこの後どう出るか。興味津々だ。

 

連載「鑑定漂流-DNA型鑑定独占は冤罪の罠-」(毎週火曜日掲載)

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(梶山天)

 

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梶山天 梶山天

独立言論フォーラム(ISF)副編集長(国内問題担当)。1956年、長崎県五島市生まれ。1978年朝日新聞社入社。西部本社報道センター次長、鹿児島総局長、東京本社特別報道部長代理などを経て2021年に退職。鹿児島総局長時代の「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』をめぐるスクープと一連のキャンペーン」で鹿児島総局が2007年11月に石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞などを受賞。著書に『「違法」捜査 志布志事件「でっちあげ」の真実』(角川学芸出版)などがある。

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