【連載】横田一の直撃取材レポート

“ゆ党”化する立憲民主党、立民・維新連携強化で「大政翼賛国会」の危機

横田一

・立憲民主党支持率、最低記録を更新

立憲民主党の蓮舫参院議員は2023年1月17日、早稲田大学で同党の辻元清美参院議員と対談。質疑応答で泉健太立民代表を「発信力不足」と一刀両断にした。女性の政治参画がテーマの講演会だったが、昨夏の参院選敗北の理由について問われた途端、痛烈に執行部を批判したのだ。

立憲民主党・泉健太代表

 

「泉代表の発信力がダメなのではないか。経験が浅く、知名度がない人をトップに立てると、まっとうな政策を言っても国民に届かない。野党の存在価値は賃上げなど『こういう社会をつくりたい』と声高に言うことだ。われわれには政策があるので、執行部は猛省して、通常国会では国民に政策を届ける立憲民主党でなければならない」。

その2日後の1月19日、衝撃的な数字を時事通信が報じた。13~16日に実施した世論調査で、岸田政権の支持率が26.5%と前月比2.7%減となる一方、立民の支持率が前月の5.5%から2.5%に半減したのだ。

2020年9月の旧国民民主党との合流以来、最低の数字で、時事通信は「日本維新の会との『共闘』継続を打ち出したものの、有権者の期待になお応えられていない格好だ」と不可解な解説をしたが、立民らしさを失う維新「共闘」強化で支持者の期待を裏切り、過去最大の支持率下落を招いたと捉える方が実態に即している。

合流以来の最低記録更新は、現執行部の“最低の党運営”を物語るものだが、実際、年明けからの「若殿のご乱心ぶり」は目に余った。

1月8日のNHK「日曜討論」で泉代表は、立民がそれまで批判してきた維新のキャッチフレーズを用いて「身を切る改革で維新と連携」と発言。「他党のキャッチフレーズを口にする野党第1党の代表」と皮肉られたが、13日の定例会見でも「身を切る改革」を評価する発言を繰り返した。

 

前日の12日には、立民と維新との「合同国対」と政策協議会(検討チーム)の設置を発表、18日の維新・馬場伸幸代表との党首会談で正式決定することも明らかにした。

日本維新の会・馬場伸幸代表

 

前回の総選挙で共産・れいわ・社民と連携(選挙協力)したことから「立憲共産党」と呼ばれ、12%の議席減の責任をとって枝野幸男代表は辞任。後を継いだ泉代表は4党連携の枠組みを白紙化、参院選で26%の議席減(23議席から17議席)を招いたのに辞任せず、今回、軌道修正をするどころか“立憲維新党”と呼ばれるのに躊躇しないリベラル路線からの転換へと舵を切ろうとしている。

この年明けからの一連の泉代表の言動こそが、衝撃的な支持率半減(底割れ)の主原因としか考えられないのだ。

国会審議なき安保3文書改定(防衛費倍増や敵基地攻撃能力保有など)に野党が攻勢を強め、苦しい国会運営を覚悟していた岸田文雄政権の高笑いが聞こえそうだ。激しく攻め込まれる事態を想定していたのに、相手のエースストライカーがオウンゴールを連発、野党第1党が自滅する形になったからだ。

その功労者は“維新2股作戦”を仕掛けた自民党茂木敏充幹事長に違いない。「紙の爆弾」2月号で紹介した通り、旧統一教会が最大のテーマとなった臨時国会でも、維新への働きかけで立民の切り崩しに成功、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が「被害防止にも被害者救済にもほとんど役立たない」と酷評した“ザル法”の被害者救済法案が成立した。

その一方で賛成した与野党4党の「やってる感」演出にはつながったともいえるが、この自民党の作戦成功について、読売新聞1月18日付は「自民、維新へ接近図る国会改革など一致野党共闘にくさび」と銘打って、次のように報じた。

「(大阪万博会場の視察など)自民が維新に秋波を送る背景には、先の臨時国会で、高額寄付被害救済・防止法を巡り、国民民主党に加えて維新も取り込むことで、立民を賛成に引き込んだ成功体験がある。憲法や安保、原発政策では、維新は立民よりも自民と立場が近く、通常国会でも野党の足並みの乱れを誘いたい考えだ」。

と同時に、通常国会で2匹目のどじょうを狙う茂木幹事長の言動についても紹介していた。

「(維新幹部との会談後に記者団に対して)茂木氏は、維新が『身を切る改革』を掲げてきたことに触れ、『通常国会では国会改革で目に見える成果を上げられるように協力したい』と伝えた」。

「茂木氏は18日には大阪市に入り、2025年の大阪・関西万博の会場を視察する。維新共同代表の吉村洋文大阪府知事、前代表の松井一郎市長が同行し、夕食を共にする予定だ」。

Aerial view of Osaka skyline building Cityscape Japan

 

“維新2股作戦”ともいえる茂木幹事長の野党共闘切り崩しの手口は2段階。万博推進などで維新にまず接近して自民との関係強化をしたうえで、維新「共闘」路線を強める立民を引き寄せて“ゆ党化”させるというものだ。

臨時国会で立民は維新との賛否が分かれるのを恐れて“ザル法”賛成に回ったが、通常国会でも自民と維新との“蜜月関係”を印象づけて立民を“ゆ党”(政権補完勢力)にしようという魂胆が透けて見えるのだ。

 

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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