【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第8回 「年老いた独裁者が始めた、血迷った戦争に、若者が駆り出されている」?

寺島隆吉

ウクライナでアメリカが仕掛けたクーデターによって新政権ができたのは、2014年2月のことでした。現地で指揮したのはビクトリア・ヌーランド国務次官補、大統領官邸で指揮していたのはオバマ政権のバイデン副大統領でした。

ヌーランド女史が「この政変を実現するために50億ドル(約6,700億円)をかけた」と講演している様子は、ドキュメンタリー『ウクライナ・オン・ファイヤー』でも見ることができますから、これは動かしようのない事実でしょう。

このヌーランド女史がジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使と電話で話し合っている内容がYouTubeで暴露されたことがありましたが、その会話の中でヌーランド女史の口から「EUなんか糞食らえ(F*ck the EU)」という下品な言葉が飛び出し、話題になりました。

 

ヌーランド国務次官補と一緒に並んでいるクーデタ派のウクライナ閣僚(これらの人物の誰をクーデター政権の閣僚にするか、ヌーランドはパイアット大使と電話で話していた)。

 

政変後のウクライナ政府閣僚をどうするかを電話で検討していたのですが、彼女はEUの示す案では自分たちの意図する方向で新政権を動かすことができないので、それを拒否して自分たちの案を出そうと相談していたのです。そして出来上がった政権はヌーランド女史の意向に沿ったものでした。

*米国の国務次官補と駐ウクライナ大使による「ウクライナ乗っ取りの謀」が盗聴され明らかになった。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201402070001/(櫻井ジャーナル2014.02.07)

しかし、このようなクーデターによって作られた政権を認められないとする声はウクライナでも小さくありませんでした。

とりわけ、「この流血の政変で命を脅かされロシアに亡命した元大統領」の地盤だったドンバスの住民およびクリミアの住民は、この政変に激しく抗議し、ついには住民投票で独立を宣言し、人民共和国を成立させました。

このうちクリミアはロシアに自治共和国として認められ、ロシア連邦に編入されました。他方、ドンバスの2カ国は、ドネツク共和国およびルガンスク共和国を名乗りましたが、ロシアからの承認が得られず、今日の事態に至ったことは、先述の通りです。

これに対して、ウクライナのクーデター政権は、ドンバス2カ国に対して激しい攻撃を加え、それに抵抗するドンバス住民も銃をもって自衛に踏み切り、ドンバス地域における戦闘(ドンバス戦争)は激しさを増す一方でした。

そこで、欧州安全保障協力機構(OSCE)の仲介の下、ベラルーシのミンスクで調印された戦争停止の議定書が「ミンスク合意」と呼ばれるものでした。2014年9月5日のことです。これには、ウクライナ、ロシア連邦、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国が調印しました。

しかし、ウクライナ政府はこれを全く守る意志がなく、ネオナチ部隊が主力となり、激しいドンバス攻撃を続けたので、今度はドイツとフランスの仲介により、2015年2月11日に「ミンスク2」が調印されました。

ところがウクライナ政府は、これもまったく順守する意志がなく、このままではドンバスの住民は殺される一方になります。この8年間で、死者はすでに1万3,000人を超えていました。ロシアがドンバス2カ国の承認に踏み切った所以です。

他方、ロシア連邦に編入されたクリミア自治共和国の住民にはいっさい攻撃はありませんでした。これを攻撃するとロシア軍と正面から戦わざるをえなくなりますから、さすがにクリミア攻撃は踏みとどまったのでしょう。

したがってオンライン署名を呼びかけたSさんは、このような経過を御存知なかったので、「ウクライナ・キエフにEU加盟国首脳を外交団として派遣して!」と題するメールを全国各地に送ったのでしょう。

しかし、先述のとおり、ヌーランド女史は「EUなんか糞食らえ」と発言しているのです。

アメリカにとってはEUの意向など聞く気は初めからなかったのですから、Sさんは、まったく現実を無視した署名運動を呼びかけていることになります。

それにしても、「ミンスク2」も無視するゼレンスキー大統領とは何者なのでしょうか。また、そもそも「ミンスク合意」とは、どのようなものだったのでしょうか。

すでに、かなり長くなっていますし、今はもう5時半です。夕方の散歩の時間をすでに過ぎています。連れ合いも怒っています。そこで今回は、ここで断念し、これらの問題は次回に回したいと思います。

〈追記〉

私は研究所のメンバーに、「世界の支配者は、ワクチンが危険だということが世界的に暴露され始め、コロナウイルスの『悪魔化』に失敗したので、だから次の焦点をプーチンの『悪魔化』に移した」と言ってきたのですが、次の論考は私の考えを裏付けているように思いました。

* “Sudden Death of Corona Crisis” Versus “Sudden War with Ukraine

「突然の、コロナ危機終結」VS「突然の、ウクライナ戦争勃発」 (『翻訳NEWS』2022/03/26)

というのは、この論考は「The Kiev-planned Donbas offensive」(キエフが計画したドンバス攻撃)という節で終わっているからです。

しかも興味深いことに、この論考に、ヌーランド女史がジェオフリー・パイアット駐ウクライナ大使と電話で話し合っている「EUなんか糞食らえ」(F*ck the EU)という会話の「文字起こし」も載せられています。

(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体1—アメリカとの情報戦に打ち克つために—』の第7章から転載)

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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