【連載】コロナ騒ぎ謎解き物語(寺島隆吉)

第10回 『赤旗』批判 ─「反ワクチン」で不当収益!?

寺島隆吉

共産党の機関紙『しんぶん赤旗』(2021年8月13日)は5面「国際」で次のような見出しの記事を載せました。

*"反ワクチン"で不当収益――米英NGO調査。誤情報発信12人で40億円、 "SNS企業 拡散に加担"

この記事は「シリコンバレー時事」となっていましたから、あくまで時事通信社の配信記事であり、日本共産党の見解とは異なるのかも知れません。

が、このような記事を載せるというのは、かつて治安維持法のもとで深刻な言論弾圧を受け、幹部が拷問されたり投獄されたりした経験をもつ共産党がとるべき態度ではなかったのではないかと、極めて残念に思いました。

というのは、この記事の末尾は次のように結ばれていたからです。

 

CCDHは、SNSが発信や動員、資金調達の戦略拠点になっていると指摘します。CCDHのイムラン・アーメド最高経営責任者(CEO)は「SNS企業が危険なデマの拡散発信を断つよう求めました。

ここで取りあげられているCCDHとは、時事通信社によれば、イギリスとアメリカに 拠点を置くNGO「デジタルヘイト対抗センター」の略称です。

そのCCDHの調査によると、インターネット交流サイト(SNS)上で新型コロナウイルスワクチンに反対し誤情報を広げる中心的な人物は12人であり、彼らはその活動を通じて少なくとも計3,600万ドル(約40億円)の収益を上げていると告発されています。

そして前述のように、時事通信の記事は、≪CCDHは、 「SNS企業が危険なデマの拡散に加担し利益を得ている。その代償は社会が払わされることになる」と警告し、誤情報の発信を断つよう求めた≫として、CCDHの活動を是とするような報道ぶりなのです。

つまり、上記12人がSNSを通じて意見を表明していることに対して、その情報発信を監視し削除することを、フェイスブック、インスタグラム、ユーチューブ、ツイッターなどのSNSに求めているのです。

言い換えれば、 「言論の自由」を圧殺するよう、国家ではなくSNSを経営する私企業に求めているわけです。その理由としてあげられているのが、 「新型コロナウイルスワクチンに反対し誤情報を広げる」からというわけです。

国家が言論弾圧するのは、かつてナチスドイツや戦前の天皇制国家がおこなったことであり、それは現在、 「ファシズムだ」として糾弾されています。

そのような批判をかわすためでしょうか、新たな手段として持ち出されたのが、SNSの利用制限や発信記事の削除です。日本でも最近、頻々として起きているのが、ユーチューブによる発信情報の削除です。

これは国家による言論弾圧ではなく私企業による行為なので、あたかも「ファシズム」ではないかのように思われているフシがありますが、 「言論の自由」を圧殺する行為であり、 「ファシズム」の一つの現れであることは何ら変わりがありません。

それどころかフランクリン・ルーズベルト大統領は、1942年6月のアメリカ議会で「私企業や私的個人が政府や国家を上回る力をもつようになった状態」をファシズムだと述べています。
https://www.jstor.org/stable/1805350

ルーズベルト「ファシズムとは私人・私企業による政府・国家の支配だ」

 

国家が言論弾圧をした場合、民主主義国家では選挙で政府を入れ替えることができます。しかし私企業の経営者は選挙で選ばれているわけではありませんから、彼らが言論弾圧を始め、 「言論の自由」を奪い始めたら、私たちは手の打ちようがなくなります。

それが日本やアメリカ、あるいは世界中に広がり始めていることであり、CCDHは、まさにそのような行為をツイッターやユーチューブなどの私企業に求めているわけです。これほど恐ろしいことはありません。

ところが大手メディアどころか、かつて戦前の天皇制「治安維持法」のもとで言論弾圧で苦しめられたはずの赤旗が、そのような言論弾圧の先頭に立ち始めているとしたら、これほど皮肉な現象はありません。

哲学者の鶴見俊輔は、 『現代日本の思想』(岩波新書)のなかで、敬意を込めて「戦前の共産党は北斗七星のような存在だった」と評したことがあります。

しかし自分の立ち位置を測る存在としての共産党は、もう存在しないようです。残念なことです。

それはともかく、コロナウイルスやワクチン問題は科学の問題であり、正しいかどうかは金力や権力で圧殺するのではなく、科学的な実証と理性的な論争で決着すべきものです。

私たちは、かつて「地動説」が圧殺されたガリレオの時代に戻ってしまうのでしょうか。

(寺島隆吉著『コロナ騒ぎ謎解き物語2—[メディア批判]赤旗から朝日まで 私たちはガリレオ時代に戻ってしまうのだろうか』の序章から転載)

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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