第105回 世界を裏から見てみよう:ビル・ゲイツは「悪魔」か

マッド・アマノ

・堤未果さんの『ルポ食が壊れる』

ジャーナリストの堤未果さんがまたまた、注目に値するレポートを上梓した。『ルポ食が壊れる』(文春新書、22年12月刊)がそれで、副題は「私たちは何を食べさせられるのか?」。そして、やや小さ目の文字で「ワクチンレタス、人工肉、ゲノム編集、デジタル農業…」とある。さらに、表紙カバーの折り返しには「気候変動問題を背景に、〈食のグレートリセット〉が始まった」。

「はじめに」から少し引用してみたい。

その冒頭では、1973年に公開された米映画『ソイレント・グリーン』を紹介。当時私は30代で、映画館で観て受けた衝撃が、今でも脳裏に焼き付いている。映画の舞台はなんと2022年のニューヨークで、半世紀後に起こる食の危機についてSF的に予測したものだ。

温暖化による環境破壊で耕作地が全滅、人口が4000万人に激増し、深刻な食料不足の中、人々はホームレスとなっていた。経済は完全にコントロールされ、一握りの特権階級以外の人間は、研究室で人工的に作られた高タンパク食品「ソイレント・グリーン」の配給で生き延びている〉。

続いて、〈実は今、私たちの住むこの世界でも、静かに《食》のリセットが進んでいる。〉と警告を発し、2020年6月にオンラインで開催された「ダボス会議」(世界経済フォーラム・WEF)に触れる。

同会議は、世界中から招待された億万長者と有力者たちが、今後の方向性と戦略を話し合うもので、2020年はクラウス・シュワブ会長とイギリスのチャールズ皇太子(当時)が翌年のテーマとして、全ての人の運命を変える、ある計画を発表したという。それが「グレートリセット」だ。

〈食システムをリセットするための組織「EAT」を基に、米国、EU、アジア、南米、アフリカ、オーストラリアなど、世界各地をつないだ、新しい食システムの大計画が進められていく〉。

 

私が最も注目したのが次の文章だ。

〈資金協力で顔を並べるのはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツに、穀物のカーギル、種子のシンジェンタ、畜産のタイソンに、化学のバイエルにユリニーバ、ワクチン大手のグラクソ・スミスクライン、流通のアマゾン、そしてテクノロジー最大手のグーグルだ。

(中略)ビル・ゲイツによると、解決策は私たち人間が肉食をやめることと、AIが制御するデジタル農業だという。(中略)《食のグレートリセット》に沿って、ヨーロッパでは政府が畜産頭数を制限し、家畜の出す温室効果ガスに課税し、肥料を危険産業廃棄物に分類し、農家による伝統的な種子保存を犯罪化し、農地を回収する政策が始まった。米オレゴン州で準備されているのは、肉の販売と消費を事実上禁止し、家畜の人工授精や去勢を「性的暴行」と見なす新しい法律だ〉。

さて、わが国はどうか?

〈日本でも菅義偉元総理・岸田文雄総理共にグレートリセットへの協力を宣言しており、農水省がロボットやAIなどのテクノロジーとバイオ技術を軸にした「みどりの食料システム戦略」を打ち出している〉。

そして、次の言葉で「はじめに」を締め括る。

〈食をめぐる世界市場のその裏で、今一体何が起きているのか?(中略)ひとつ確実に言えることは、《食のグレートリセット》が、こうしている間にも着々と進行していることだ。真実を知り、大切なものを守るのは今しかない。あなたの家の食卓が、知らぬ間にすっかり入れ替えられてしまう前に〉。

・グローバル資本により農地が爆買いされている

本書によれば、ゲイツはビル&メリンダ・ゲイツ財団の寄付者たちに向かって、ウクライナ危機と気候変動で悪化した食料危機を救うのは〈進化した農業テクノロジー〉しかないと呼びかけている。しかし、未果さんは指摘する。

〈グローバル企業群と投資家たちにとって、農地という有望投資商品から期待できるリターンを大きくするのは、パンデミック、ウクライナ紛争、気候変動に食料危機という世界的緊急事態への不安を煽るマスコミのヘッドラインと、国連や世界経済フォーラムが繰り返し鳴らす警鐘だ〉。

そして、アメリカの農地が資産運用会社によって爆買いされている模様を事細かにレポート。それらは第3章の「謎の投資家Xの正体」の項に詳しい。

〈2018年。(中略)オレゴンとワシントンの州境にあるコロンビア川地域《100サークル》を、他州の資産運用会社がいきなり1万4500エーカー(約5868万平米)分も購入したという。(中略)購入した資産運用会社は、全米トップのタックスヘイブンであるデラウェア州に登記されたペーパーカンパニーだ。だが一体、買い付けを命じたのは誰なのか?(中略)他でもないビル・ゲイツだった〉。

〈宇宙からもすぐ見つけられるほど広いこの畑は、毎日2400トンのジャガイモが掘り出される。マクドナルドのフライドポテト用農地になっていた〉。

ゲイツ氏が主導する爆買いは想像を絶するものだ。なんと、このペーパーカンパニーの登録住所は、ゲイツ氏の資産運用会社の子会社が所有する私書箱だった。同社の広報担当は環境への配慮を主張しているそうだが、〈地元住民や環境活動家たちからは、大量に水を汲み上げ化学肥料をたっぷり使うゲイツ農場に、批判の声が上がっている〉という。

はたしてゲイツは救世主か、悪魔か? 判断の材料として本書を参考にしてほしい。

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日本では数少ないパロディスト(風刺アーティスト)の一人。小泉政権の自民党(2005年参議院選)ポスターを茶化したことに対して安倍晋三幹事長(当時)から内容証明付きの「通告書」が送付され、恫喝を受けた。以後、安倍政権の言論弾圧は目に余るものがあることは周知の通り。風刺による権力批判の手を緩めずパロディの毒饅頭を作り続ける意志は固い。

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