【連載】沖縄の戦場化を断固拒否する(山城博治)

『新しい戦前にさせない』共同テーブル2・9連続シンポジウムに寄せて 長野県松本市域反戦集会寄せるメッセージ

山城博治

米国の「中国脅威論」に騙されるな!
「台湾有事」を煽り、沖縄・南西諸島を巻き込んで対中国戦争を策略する米国の陰謀を許さない!

米国バイデン政権の陰謀。中東侵攻敗北を糊塗する中国脅威論の喧伝

➀アフガン戦争からの撤退(2021.8.31)。9・11から20年、カブールからの敗走。
1兆ドル以上の戦費。2400人以上の戦死者、アフガニスタン人数万の犠牲者。

➁軍人による中国脅威の演出。
米インド太平洋軍フイリップ・デービッドソン司令官の米上院軍事委員会証言

「彼らは米国、つまりルールにのっとった国際秩序におけるわが国のリーダーとしての役割に取って代わろうという野心を強めていると私は憂慮している・・2050までにだ」と発言。「その前に、台湾がその野心の目標の一つであることは間違いない。その脅威は向こう10年、実際は今後6年で明らかになる」

 

沖縄・安保関連3文書の閣議決定からの状況について

1.安保関連3文書の要点

(1)国家安全保障戦略(抜粋)
➀ 中国の動向
・中国は台湾の平和統一の方針を堅持しつつも、武力行使の可能性を否定していない。台湾海峡の平和と安定に関しては国際社会全体で急速に懸念が高まっている。

・現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向は~これまでにない最大の戦略的な挑戦であり、わが国の総合的な国力と同盟国や同志国との連携で対処すべきだ。

➁防衛体制の強化
・近年、わが国へのミサイル攻撃が現実の脅威となっている。わが国から有効な反撃を加える能力、すなわち反撃能力を保有する必要がある。

・27年度に防衛力の抜本強化と保管する取り組みを合わせ、予算水準が現在の国内総生産(GDP)の2%に達するよう所要の措置を講ずる。

(2)国家防衛戦略(抜粋)
➀ 防衛目標
・わが国への進行が生起した場合は、主たる責任をもって対処し、同盟国などの支援を受けつつ、阻止・排除する。

・自衛隊の海上・航空輸送能力を強化するとともに、民間輸送力を最大限活用する。特に南西地域の空港・港湾施設などを整備・強化し、利用可の範囲を拡大する。

・10年後までに火薬庫の増設を完了する。主要な司令部の地下化を進める。

(3)防衛力整備計画(抜粋)
➀スタンド・オフ防衛能力
・12式地対艦誘導弾能力向上型を開発。地上発射型は25年度まで、艦艇発射型は26年度まで、航空機発射型は28年度までの開発完了を目指す。米国製巡航ミサイル「トマホーク」など外国製スタンド・オフ・ミサイルを導入する。

➁統合防空ミサイル防衛能力
・地対空誘導弾パトリオット・システムを改修し、新型レーダーを導入することで能力向上型迎撃ミサイルによる極超音速滑空兵器への対処能力を向上させる。

➂戦闘能力継続能力強化
・早期かつ安定的に弾薬や誘導弾を量産するため、国内製造体制の拡充を後押しする。

④自衛隊の体制
・陸海空の各部隊運用を一元的に指揮する常設の統合司令部を創設する。

・沖縄県の防衛、警備を担当する陸自第15旅団を師団に改編する。

⑤海保との連携
・武力攻撃事態時に防衛相が海保を指揮下に置く手順を定めた「統制要領」を作成する

⑥費用
・23年度から5年間に必要な防衛力整備費用は43兆円程度とする。

※識者コメント➀ 高橋杉雄(防衛政策研究所防衛政策研究室長)

 中国が米軍の介入を阻止するために、南西諸島の飛行場や港湾をミサイルで攻撃すると考えられる。民間も含め軍事的に使用できる施設が対象になる。無防備なら上陸して占拠しようとする可能性もある。

※識者コメント➁ 柳沢脇二

 そもそも反撃能力とはミサイルの迎撃が困難だから、発射前に叩かなければならないという論理だ。敵基地攻撃は「日本への攻撃着手が前提」とされるが、相手のミサイルが日本向けか否かは、撃たれてからでないと分からない。(一部略)
敵基地は相手国本土にある。本土を攻撃すれば相手が報復攻撃してくる。つまり、本来の目的であるミサイルからの安全に逆行する。

 懸念される「台湾有事」で言えば、中国は台湾独立には武力行使を辞せず、米国は武力行使に対して台湾を防衛すると言っている。要は、台湾独立を回避すれば、戦争を避けられる可能性がある。

 

2.日米2+2会合。琉球新報社説抜粋(2023年1月13日)

 「日米両政府は外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2+2)を開き、米軍と自衛隊の一体化を加速させる姿勢を鮮明にした。南西諸島における施設の共同使用を拡大し、共同演習・訓練を増加させることを確認。空港・港湾を柔軟に使用することにも言及している。(一部省略)

 2+2では、離島での戦闘に特化した「海兵沿岸連隊」を」在沖米海兵隊に創設することや、自衛隊による嘉手納弾薬庫地区の共同使用の追加なども確認された。

 弾薬庫の共同使用は、長期戦に備えて南西諸島の各地に弾薬庫を分散・保管する一環だ。沖縄市には陸上自衛隊の新たな補給拠点が整備され、弾薬や燃料などを備蓄する。与那国駐屯地を拡張してミサイル部隊を配置し、火薬庫を建設する計画もある。

 島嶼県の沖縄は保安距離を取る広大な土地はない。沖縄全体が火薬庫となれば、住民地域は危険物と隣り合わせになってしまう」

 

3.日米首脳会談。沖縄タイムス解説一部(2023年1月15日)

 岸田文雄首相が、防衛費の大幅増額を通じた対米貢献をバイデン大統領に約束した。米国の信頼を勝ち取り、更なる同盟強化を図るのが狙いだ。米軍の抑止力を後ろ盾にしなければ、強大な隣国・中国と渡り合えないとの危機感が背後にある。軍事力に依存した外交・安全保障戦略を加速させている印象は否めない。

 首相訪米は、同盟強化への一層の負担を引き受ける決意をバイデン氏に伝えることに主眼があった。これを評価したバイデン氏は「核を含むあらゆる能力」を用いて日本を守ると改めて言明した。首相は「成果」を得た格好だ。

 だが、いつ終わるともしれない米中覇権争いの下、米国が日本に負担増を際限なく求めてくる公算は大きい。影響力が相対的に低下している米国が、軍拡路線を突き進む中国と単独で渡り合うのは困難なためだ。

 米国の求めに、日本は今後も応え続けるとみられる。期待に背けば同盟が揺らぎ、中国に付け込まれるとの懸念は政府内に根強い。首相が米側に約束した反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有も防衛費増額も、対米協力の「ゴール」にならないと考えるべきだろう。

4.燃え上がらない「戦争反対」の世論喚起のために。
(1)「ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会」の設立 昨年2021年1月31日。精力的に講演学習会を開催。
好評を得た共同通信社岡田充客員論説委員、石井暁編集委員、海渡雄一弁護士講演。

 特に、石井講演は、「台湾有事」に出撃する米軍が中国軍と交戦する事態に立ち至れば、政府は「存立危機事態」と認定して自衛隊を参戦させることになる。自衛隊が米軍の戦闘に自動的に参戦していくシステムが出来上がっていることを報告され、大いなる危機感が共有される集会となった。その折の講演録はその後ブックレット〈また「沖縄が戦場になる」って本当ですか?〉にまとめられ好評を博している(60頁、500円)

・「ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会」県庁交渉
11月に実施された日米共同軍治演習「キーソード23」に際して、県内離島の空港・港湾使用についてひざ詰めの談判を繰り返し、当初「支障がなければ使用申請を受け付けるしかない」と頑な答弁から「県管理施設である以上県にも判断権限はある。自由使用はさせない」と一変する答弁を引き出した。

・宮古島では12月11日に実施された航空自衛隊ブルーインパレス飛行に対する抗議集会が現地・宮古空港フェンス沿いで開催され、集会後150人以上で市内目抜き通りをデモ行進した。先島地域の軍事拠点に位置付けられている宮古島で力強い反基地・反戦運動がつくられていることは沖縄全体の大きな力となっている。上記の県庁交渉には宮古からも多く駆け付けた。

(2)県政の動向
その後、玉城県政は知事名で「『敵機攻撃能力』保有に基づく長距離ミサイル配備には反対」である旨を表明し、照屋副知事は1月19日に参院政府開発援助等及び沖縄北方特別委員会との県庁での意見交換の席上、「安保関連3文書で示された遠方から相手の基地をたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)を有するミサイルを県内に配備しないよう」要請。県が対外的にはじめて敵基地攻撃能力の県内配備に反対する要請を行った。県政のしっかりした姿勢は高く評価される。願わくは、県政が「戦争に反対し、自衛隊といえども県土を軍事利用させない」との姿勢を方針化したわけであるから、今後は県議会や県選出国会議員団、全県民で支える体制をどう作るかを考えていかなくてはならない。

 現在、「ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会」が呼びかけ人となって、戦争に反対する全県組織を立ち上げようと準備会合を重ねている。2月下旬に1000人規模の集会を開催して、組織立上げに弾みをつけたい。当然このような全県的課題であれば、県政なり県議会なりが率先して声を上げるのが筋だと思慮されるところであるが、残念ながら、上記の県政からのメッセ―以上の動きはない。やむえず私たち市民団体で踏ん張るしかないのかと考えるところですが、幸い前回1月20日の第3回準備会に40近くの団体が参加しており大きく動き出す確証が得られて心強く思えた次第である。

 また、戦場を名指しされた与那国島や石垣島でも事項に記すように、これまでとは違った動きが出始めており力強い運動が作り出せるのではないかと感じているところである。

(3)石垣市議会の「ミサイル配備反対意見書」採択
今年3月にも開設予定の陸上自衛隊石垣駐屯地に「反撃能力を持つミサイル配備は容認できない」と野党が提出した意見書に一部与党保守議員も加わって、昨年12月17日意見書が多数採択された。

 この意見書採択が持つ影響は大きいものがある。石垣市は市民が市民投票に必要な条例定数の4分の1を超える1万4千票以上の署名を集めたにもかかわらず、市長は「国防は国の専管事項」を主張し、市民が求めた「陸上自衛隊建設の是非を問う住民投票」の実施を回避し続けているが、市民の側はさらに勢いづくものと思われる。

 石垣島の隣り与那国島では、歴代の町長が自衛隊の誘致派で、与那国では実施された住民投票をリードし賛成多数をまとめてきた。しかしここにきて、「誘致したのは沿岸警備隊であって攻撃兵器となる長射程ミサイルまで持ち込むのは話が違う」という意見者が増えてきていると報道されるようになった。政府は、与那国島にミサイルを配備するための暗躍貯蔵施設建設を表明しており、町民で大きな議論になるのは必至である。

 しっかり連携をして運動発展につなげていきたい。

山城博治 山城博治

1952年具志川市(現うるま市)生まれ。2004年沖縄平和運動センター事務局長就任。その後同議長、昨年9月から顧問となり現在にいたる。今年1月に設立された「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」共同代表就任。沖縄を「南西」諸島を戦場にさせないために全県全国を駆けまわって、政府の無謀を止めるため訴えを続けている。

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