なぜこの島が選ばれたのか? 政治家・詐欺師が跋扈する馬毛島基地計画

青山みつお

昨年7月に世界自然遺産に登録された「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島・沖縄)の一角にある馬毛島(鹿児島県西之表市)に、海上・航空両自衛隊基地の整備計画が進められている。

同計画は、米軍空母艦載機による陸上空母夜間離着陸訓練(NLP)の受け入れとセットになっており、夜間騒音や環境破壊に対する懸念から、地元住民の根強い反対の声があった。

一方、防衛省は、これまでの馬毛島基地計画は「決定ではない」としてきた地元住民への説明を翻し、閣議決定で「政府として計画を決定した」と、地元の同意を得ずとも計画を進めることを宣言。昨年12月24日の岸田内閣の閣議決定により、来年度から馬毛島基地の施設整備費として、契約ベースで3183億円を計上した。

こうした政府の強硬な姿勢を見て、地域住民の反対を理由に政府や防衛省に対し、慎重な対応と十分な説明を求めていた地方自治体の間に不安と動揺が広がっている。

Japan Ground Self-Defense Force attack helicopter fly at low altitude.

 

これまで基地反対を選挙公約に掲げていた八板俊輔・西之表市長が、2月3日に岸信夫防衛相に提出した要望書にも、米軍再編交付金の交付や(自衛)隊員居住への「特段の配慮」を求める、と記載されただけで、従来の計画への「不同意」は明言されず、市長を支持してきた基地建設反対派住民から「変節ではないか」と批判されている。

元朝日新聞記者の八坂は、陸上空母離着陸訓練(FCLP)の受け入れ反対を訴え、2017年の市長選挙に立候補し、再選挙の末初当選。昨年再選を果たしている。

八板が要望書に「特段の配慮」を入れる前、防衛省は非公式に、10年間で290億円超の交付金を、馬毛島基地整備の見返りとして種子島1市2町に対して提示している。一方、基地反対の自治体には交付金は支払わないという圧力があったといわれる。

政府は民主的な手続きや、住民への十分な説明をせずに、交付金をエサに、水面下で地元自治体の首長に協力を迫っていた。イージスアショア導入計画でも見られた住民軽視の対応なのだ。

なぜ、馬毛島に自衛隊基地の整備計画が持ち上がり、そこで騒音が予想される米空母艦載機の離着陸訓練を行なう必要があったのか。馬毛島基地整備計画までの経緯を見てみよう。

・平和相銀事件の舞台だった馬毛島

馬毛島は、第二次世界大戦後の1951年に外地からの引揚者等を未耕作地に入植させる緊急開拓事業として開発が始まった。当時は、サトウキビ栽培や酪農を中心に500人余の人口があったが、元来が農業不適地だったため開拓民の生活は苦しく、次第に離島者が増え、80年代には無人島になってしまった。

過疎化した馬毛島に、第二次石油ショックの頃に石油備蓄基地の建設計画が持ち上がったが実らず、本土の志布志湾に建設された。

その馬毛島を70年代に買収したのが東京の平和相互銀行だ。当初は馬毛島でゴルフ場を中心としたレジャーランド開発を構想したらしい。

平和相互銀行といえば、金屏風事件などの一連の経済事件や不正経理によって破綻した銀行として知られる。同銀行の乱脈経営の過程で、巨額の資金が自民党の政治家に流れていたことが指摘されている。

ゴルフ場・リゾート開発会社「太平洋クラブ」の事件では、42億円の価値しかない同クラブ所有の土地を60億円で売却する話に平和相銀は116億円の融資をした。その資金の大半は、闇社会に流れたといわれている。

また有名な金屏風事件では、平和相銀の創業者である小宮山英蔵の死去後に同銀行の経営権を把握した元東京地検特捜部検事の伊坂重昭(監査役)らが、英蔵の長男・実弟・娘婿の間で起きた内紛に介入し、小宮山一族を、同銀行の経営から追放することを画策した。それに激怒した英蔵夫人が平和相銀の株式33.5%を、資産管理会社「川崎定徳」の佐藤茂に売却してしまう。

この株式を買い戻すために、大蔵省から天下っていた田代一正・平和相銀会長が3、4億円の価値しかない金屏風「金蒔絵時代行列」を40億円で購入し、佐藤と親しい当時の竹下登大蔵大臣に闇献金を渡そうとしたという。この取引には89年に自殺(謀殺説もある)した竹下秘書の青木伊平が関与していた。

馬毛島を舞台にした自民党政治家への資金提供もあった。平和相銀の経営権を握っていた先述の伊坂らは、レジャーランド開発の頓挫で平和相銀が持て余していた馬毛島の土地を、レーダー基地として防衛庁に売却することを計画。大物右翼に政界工作を依頼し、総額20億円を提供した。この資金は20人近い自民党議員に渡ったとされるが、レーダー基地は建設されることはなく、同銀行の経営を圧迫しただけで終わっている。

結局、平和相銀の伊坂元監査役と稲井田隆元社長は、特別背任罪で東京地検に逮捕されて実刑判決を受けた。同銀行は86年、当時の住友銀行に吸収合併されて消滅したのだった。そして、平和相銀から馬毛島を引き継いだ地権者も、平和相銀の破綻の経過と似たような経緯を辿っている。

 

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青山みつお 青山みつお

海外メディア勤務を経て、フリーライターとして活躍中。

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