第15回 『長周新聞』批判─「反ワクチン」は陰謀論 !?⑤:かつての「北斗七星のような存在」に復帰せよ
社会・経済「権力と闘う」ことを第一義としてきたはずの赤旗や長周新聞が、こと「コロナ騒ぎ」になると今までの言動はどこへ行ったのかと思わせるほどの豹変ぶりを遂げました。
その頂点がCCDHという団体の主張を鵜呑みにした記事の掲載でした。
私は、赤旗や長周新聞がこれまで果たしてきた役割を高く評価してきましたので、これまでは、それらへの批判を公にすることを控えてきました。
しかし、それらの新聞にCCDHという団体の主張を鵜呑みにした記事が掲載されたことを知り、その記事を慌てて知人から送ってもらって読んでみました。その結果、これはもう放置しておけない事態になったと考え、重い腰を上げる決断をしました。
その結果が5回にもわたるブログ連載になってしまいました。
最初は赤旗と長周新聞で、それぞれ1回ずつの批判を書くつもりで始めたのですが、赤旗は時事通信社の配信記事だったのに対して、長周新聞の場合は独自の取材記事という形で、しかも分量も赤旗の2倍くらいの記事でした。
ですから、それへの批判もつい長くなってしまいました。にもかかわらず、読み返しているうちに、まだまだ書き足りないことが少なくないことに気づき、またもや重い腰を上げて、これを書き始めています。
政府や権力者は、自分に敵対する個人や集団を「陰謀論者」というレッテルを貼って相手を攻撃し、彼らを孤立化しようとします。
これは「テロリスト」 「テロ国家」というレッテル貼りについても同じです。アメリカ政府は「911事件」を口実にアフガニスタンに侵略したとき、それに抵抗する勢力を「テロリスト」 「テロ集団」と呼びました。
ところが、そのはるか以前にアメリカは、アフガニスタン政府の要請でソ連軍がアフガンに侵攻してきたとき、それと闘わせるためにイスラム教原理主義集団に武器と資金を与えて訓練していました。
ソ連軍と戦ったイスラム教原理主義集団は、アメリカによって中東各地から集められ、それにサウジアラビアも積極的に協力しました。
そのときアメリカは、彼らを「自由の戦士(Freedom Fighter)」と呼んだのでした。
その後、アメリカは「イラクに大量破壊兵器がある」と嘘をついてイラク侵略に乗り出したわけですが、これこそ「正真正銘の陰謀」であり、アメリカは世界最大の「テロ国家」だったのではないでしょうか。
ところが同じイスラム教原理主義集団がシリア侵略の口実として必要になると、彼らは「テロリスト」と呼ばれるようになりました。彼らは「アルカイダ」や「ダーイシュ」などと呼ばれ、テロ集団扱いされるようになったのです。
要するに、自分の都合に合わせて相手のレッテルを張り替え、孤立化させたり自分の側に取り込んだりするわけです。これが権力者の常套手段です。
すでに述べたことですが、赤旗や長周新聞は、権力者と闘うことを第一に掲げてきたはずです。
ところが先述のとおり、コロナ騒ぎが起きてから、彼らの態度にビックリするような豹変がおきました。
というのは、寄付金を主たる財源としながら「ワクチンへの危険性」を訴えてきた個人やサイトを、あろうことか、 「陰謀論者」というレッテルを貼り、 「今やワクチン反対運動は、 『反ワクチン』を売り物にしながら暴利を得て、 『反ワクチン産業』という営利企業を形成しつつある」と攻撃しているのです。
若者言葉でいう、 「目が点になって」しまいます。
なぜなら、赤旗や長周新聞が、安倍政権の「桜を見る会」や「森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題」をとりあげた結果、新聞の売り上げや寄付金が大幅に伸びたとしたら、それは、 「反政府を売り物にした『反政府産業』を形成しつつある」と攻撃されても仕方がないことになるからです。
先に私は、哲学者=鶴見俊輔が『現代日本の思想』(岩波新書)のなかで、 「かつて赤旗・共産党は自分の立ち位置を測る北斗七星のような存在だった」と述べていたことを紹介しましたが、今や、その「北斗七星」は輝きを失いつつあるようです
ところで、長周新聞批判が長くなりすぎましたので、赤旗批判についても少し書かないとバランスがとれないように思いますので、若干の補足をしなくては、と思うようになりました。
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授