【連載】川内博史の部屋

【横田一インタビュー】「自公内閣に新型コロナウイルス対策はできない。すぐに政権交代を」立憲民主党・川内博史衆院議員(後)

横田一

憲法改正論議は「合流」の障害にならない

立憲民主党・川内博史衆院議員

 川内博史氏(以下、川内) 憲法改正論議についても、玉木(雄一郎・国民)代表は(合流しない)理由にあげていますが、両党が合意した綱領には「立憲主義的な立場から憲法改正議論をする」ということで合意しています。それには玉木代表も賛成していた。立憲主義的な改憲議論というのは、たとえば解散権に制約を加えるとか、要求があった場合には臨時国会を何日以内に召集すると書き換えるとかのことで、他方、自民党が狙っている憲法9条の改正は立憲主義の立場からの改正ではないですから、そういうものには組みしない。与党がそういうことを言っている限りは、憲法審査会には応じられないという論理必然になるのです。

そういう意味では党内での憲法議論はいくらでもできるというふうに思う。国民に対する提起もできる。「玉木代表にとっての障害はない」と私も思います。

 ――憲法論議のすべてを否定しているわけではない。

 川内 そうです。「それでも合流しない」とこだわられる理由は、私にも判然としない。

 ――取材している側からもよくわからない。合流によって選挙にプラスにもなるのだが。

 川内 「プラスになる」とかではなくて、国民生活を守るために何が何でも政権交代をしなければならないと思っています。新型コロナウイルスに対して現政権は対応ができないことが明らかになっていますから、人心一新が必要だと思っています。ウイルスは隠蔽にも改竄に応じてもらえませんから。

野党の責任は、現政権を倒すこと

 ――合流で立憲民主党の良さが失われて、昔の民主党に戻っただけではないかという声もある。松井一郎市長(維新代表)のコメントに代表されるマイナスイメージを懸念する見方もあり、具体的にいうと、原発ゼロの綱領も揉めていて、「そこを緩くして電力総連系の議員が加われるようにするといいのではないか」という議論も国民民主党の両院議員総会でもあった。

 川内 立憲民主党の良さというか、目指すのは「立憲主義に基づいた真っ当な政治」であり、民主主義を実現しますということは1丁目1番地です。安倍政権は憲法さえ守らないわけで、日本国憲法に書いてあることを平気で踏みにじっています。大マスコミもそれを「おかしい」と言わない。日本国憲法に4分の1をもって召集の要求をしたら、内閣は招集を決定しなければならないと書いてあるのに、大マスコミを含めてポカーンとしている。日本国憲法を守らない、踏みにじる政権があるときに、我々はどう行動するのかを考えないといけない。

原発ゼロに関して、一日も早く原発ゼロを目指しますと書いてあって、電力総連の方たちは原発が必要なのだとおっしゃる。でも、未来永劫に原発が必要になることはない。それなら、「一日も早く」(なくす)で折り合えばいいわけでしょう。すべては議論なので、そういう違いを乗り越えて、新型コロナウイルス感染を目の前にして憲法さえも守らない政治に対して、我々がどうアプローチするのかが問われている。

 ――枝野代表も電力会社を潰せとか、原発関連の雇用を即時になくせとは言っていない。雇用を守るために手厚い補償を原発立地地域に対して言っているわけですから、電力総連系議員の利害とは食い違わないのではないか。

 川内 食い違いません。「原発ゼロ」の綱領が合流しない理由にはなりえないと思います。合流しないための理屈はいくらでもつくり出せると思うのです。野党側にいる政治の責任は、憲法さえ守らない、この現下の状況に対応できない現政権を倒すことなのです。何よりも重い責任です。その責任を果たすのか果たさないのかということだと思います。

安倍政権は7年8カ月、「悪夢の民主党政権」と悪口を言いながら政権を維持してきた。長期政権を維持してきたということでは凄いことだけれども、安倍政権は悪い成長なのです。それで、自分のお友達とか周りの人々に利益を分け与えてきた。だから僕らは、少なくとも過去の失敗を踏まえて、安倍政権の後に良い成長をお見せできる自信があります。

 ――辺野古埋立も反対に転じて、沖縄では野党共闘で勝利をして、参院選でもイージスアショアに反対した野党統一候補が秋田選挙区で勝った。野党陣営も進歩して、政策がよりブラッシュアップされている。

 川内 前(民主党時代)に戻るということではまったくありません。安倍政権を支持される皆さんや一部誤解をしている皆さんは、「ダムのおかげで氾濫が抑えられた」とか、熊本での豪雨災害でも「川辺川ダムがあれば、あんなふうにならなかった」という間違った理解をされている方がいるわけです。そもそもダムが治水上の役目を果たしうるのか否かについては、専門家の間でも議論がある。それよりも最近は、国交省が言い始めている「流域治水」とか堤防改修方法の変更などによって、治水を確保していかなければならないのが専門家の間では主流になってきている。

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立憲民主党・川内博史衆院議員(前)

これまで何十年もダムに固執をして、巨額の税金を投入してきた。治水効果がないとは言いませんが、「(ダム建設で)ほんの何十センチ水位を下げました」と鬼の首を取ったかのごとく言い立てるのは、科学的に正しい態度ではないのではないか。それよりも流域治水や堤防改修方法の変更などによって、局地的集中豪雨などに対応できる真の治水対策を、やはりこれも政権交代をして議論をしていくべきではないかと思います。

維新の主張は「強者の論理」

 ――最後に維新について。前原(誠司・元民進党代表)さんが地方分権の勉強会を立ち上げて、吉村知事を講師に呼んで人気にあやかろうとしている。「玉木新党が維新と組むのではないか」という報道もあるのですが。

 川内 維新は「イソジン」に命運をかけていただければいいのではないですか。

 ――「イソジン吉村」「ウソジン吉村」「大阪イソジンの会」というふうに呼ばれ始めました。

 川内 「維新」と言いながら、旧勢力の補完勢力でしかない。だからこそ「維新」を自称して新しいふりをするということなのでしょう。本当に維新を目指すのであれば、大阪ワクチンの開発とかイソジンとかビジネスベースに乗らずに、もっと真摯に新型コロナウイルスに向き合うべきです。そうすれば、協力関係をつくることができるのではないでしょうか。

この20年、30年というのは、新自由主義で弱肉強食が進み過ぎたのです。格差の是正という意味においても、これからはもう一度、民衆の時代をつくらなければならない。それなのに、維新が言っている効率化とか合理化とか改革なる言葉は、強者の論理の言葉が多いのです。そうではなくて、民衆側からの政策提言というものをしていただれば、手を携えることができるのではないかと思います。

 ――吉村知事がコロナ対策で一躍有名になって、コロナ対応で最も信頼できる政治家トップになりましたが、人口比のPCR検査数は東京よりも大阪のほうが少ない。それなのに、大阪はなぜかGOTOキャンペーンが除外にならない。しかも都構想の住民投票は(11月1日に)予定通りやると。府民は二の次で維新の目玉政策を進めるのだという旧勢力らしい強権政治になってきている。

 

川内衆院議員のTwitterより

 川内 都構想で人々の生活を向上させることはできないと思います。人々の生活を向上させることができるのは具体的な政策です。大阪発ワクチンの開発とか、イソジンでコロナウイルス重症化を抑制できるとか、何か少し方向が違うような気がします。これからは民衆の時代。民衆が新勢力を支えるとすれば、民衆・大衆・労働者の側に立脚した政党になっていただきたいと思います。

 ――前原さんはなぜ維新との連携を口にしているのか。吉村人気にあやかろうとしているのか。

 川内 関西での維新の力を感じると、前原先生は京都ですから。維新に候補者を立てられるとひとたまりもないということではないかと思います。

(了)

【特別取材班】

☆【横田一インタビュー】「自公内閣に新型コロナウイルス対策はできない。すぐに政権交代を」立憲民主党・川内博史衆院議員(後半)NetIB-NEWS(2020年9月8日) からの転載 https://www.data-max.co.jp/article/37490

 

★Home – 川内博史オフィシャルサイト★
https://www.kawauchi-hiroshi.net/
川内 博史(かわうち ひろし、1961年11月2日  )立憲民主党所属の元衆議院議員(6期)。
鹿児島市出身。ラ・サール中学校・高等学校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。大学在学中は雄弁会に所属。1993年の第40回衆議院議員総選挙に旧鹿児島1区から日本新党公認で出馬したが、当選ラインには遠く及ばず落選となった。その後、新党さきがけを経て、1996年の第41回衆議院議員総選挙では民主党公認で鹿児島1区から出馬。選挙区では落選となったが、比例九州ブロックでは重複立候補を活用して復活、初当選した。
衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員長、衆議院国土交通委員長、衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員長、衆議院文部科学委員長、ガソリン値下げ隊隊長、民主党本部常任幹事、旧立憲民主党常任幹事会議長などを歴任。
「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」を結成し、会長に就任。普天間飛行場を将来的に国外・県外に移設することを実現するため、テ二アン島を訪問し、連立与党・政府の基本方針の策定を求めて、与党内議員182人の署名を集め当時の鳩山首相に提出した。「原子力発電への依存度について今後どうするべきか」との問題提起に対し、「ゼロにすべき」と回答。福島第一原発1号原子炉建屋に事故後に2回入り、自分自身で視察した状況を撮影して公式ホームページで公開した。安倍内閣による森友学園問題・加計学園問題への対応について、2017年のアンケートで「評価しない」と回答。森友学園問題では2022年9月21日に赤木雅子氏、辻恵弁護士などとともに東京地検特捜部に佐川元局長らの刑事処分を求める告発状を提出した。

横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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