【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/真実はいつも一つでも仮説は多数

植草一秀

「陰謀論」とは何か。

重大な事象に関して、
「邪悪で強力な集団(組織)による陰謀が関与している」
と断定したり信じたりする行動を「陰謀論」と表現する場合が多い。

しかし、定義はあいまいであり、有力な「仮説」について、明確な根拠なしに、これを否定したいときに「陰謀論」というレッテルを貼ろうとする者が多いように見受けられる。

「陰謀」とは「悪だくみ」のこと。

良いことを計画する場合には「陰謀」の言葉を用いない。
悪いことを計画するときに「陰謀」という言葉が用いられる。
世の中に存在する「計画」のなかには「良い計画」と「悪い計画」がある。
悪いことを計画する「悪だくみ」は存在する。
現実に存在する「悪だくみ」が存在するときに、その発覚を恐れる勢力、その「悪だくみ」が露見することを阻止したい勢力が用いる言葉が「陰謀論」である。
現存する「悪だくみ」を的確に指摘する者が出現することがある。
このときに、この主張者の主張に多数の市民が影響を受けることを恐れるとき、この主張に「陰謀論」とのレッテルを貼る。

一般市民が「悪だくみ」を的確に指摘する言説に影響を受けないように、印象操作を図るのが「陰謀論」である。

したがって、「陰謀論」という言葉が用いられるときに、より強い注意を払うべき対象は、「陰謀論」で名指しされる発言者ではなく「陰謀論」だと主張する糾弾者の側である。

すべての者が目にしてきた重大事案のなかに、「悪だくみ」によって実行された事案は無数に存在するだろう。
人間という存在のなかに「邪悪」が潜んでいる。
「正義」や「誠実」も存在するが、他方に「不正義」、「不正」、「邪悪」、「悪質」も無数に存在する。
権力を有する者が「善良」、「正義」、「誠実」である保証など存在しない。
権力を有する者が「不正義」、「不正」、「邪悪」であった例は枚挙に暇もない。
したがって、人々に広く知られる歴史事実のなかに、「悪だくみ」によって遂行された事象が多数存在することは間違いない。

仮に、「悪だくみ」によって実行された歴史的事象について。その事実を的確に指摘する者が存在するとき、この指摘者の言説は「陰謀論」ではない。

歴史の真理を指摘した正当な言説でしかない。

2001年に発生した911同時多発テロ。

2022年2月に拡大したウクライナ戦乱。

国連で賑わう「地球温暖化仮説」。

そして、安倍晋三元首相銃殺。

さまざまな重大事象が存在する。

これらの事象についてはさまざまな見解、推論が存在する。
しかし、特定の推論が完全に正しいとの客観的証明はなされていない。
どの見立て、見解も、ひとつの「仮説」に過ぎない。
その仮説のなかに、権力者による「悪だくみ」によって事案が創作されたとの「仮説」があるにせよ、その「仮説」を「陰謀論」として排除することは適切でない。
このような「悪だくみ」があったとする仮説が存在する場合、その「仮説」が客観的事実によって明確に否定されていない状況下では、存立し得る一つの仮説として存続することが正当である。

911の同時多発テロには多くの疑わしい事実が存在する。

存在する事実と整合的な仮説が構築され、客観的事実と矛盾が存在しないならば、その仮説は現実を説明し得る有力な仮説の一つであって、「陰謀論」として棄却されるべきものでない。
「陰謀論」という言葉が用いられるときには、この点に十分な注意が必要である。

911の同時多発テロは米国の国家権力による自作自演であるとの仮説が存在する。

1985年に発生した日航ジャンボ123便の群馬山中への墜落事故は圧力隔壁の損傷が原因ではなく、外部からの「異常外力の着力」によって尾翼が損傷したことに伴うものであるとの仮説も存在する。

新型コロナワクチン接種後に観測されている死者の激増がワクチンに起因するものであるとの仮説も存在する。

地球温暖化仮説はこの仮説構築によって生まれるビジネスチャンス創作を目的に創作された合理性の乏しいものであるとの仮説も存在する。

これらの「仮説」は多くの事実に裏打ちされているものであり、「陰謀が存在する」ことを強く示唆する仮説ではあるが、「陰謀論」であるとして慎重な吟味なく棄却するべき言説でない。

「陰謀論」という言葉のマジック、印象操作に惑わされないことが重要だ。

 

※本記事は、植草一秀先生のブログ「植草一秀の『知られざる真実』」http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2023/04/post-e0fa9d.htmlから転載させていただいたものです。

 

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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