【連載】ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン
ノーモア沖縄戦

メールマガジン第68号:島嶼防衛戦争は宇宙戦争への道

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この数年、米国は中国に対する軍事的圧力を強化している。その理由は、中国が台湾への武力侵攻に向かう可能性が高いからだという。しかし、8月のペロシ米下院議長の訪台は、アメリカ自らが、東アジアにおける軍事的緊張を高めていることを示した。台湾有事は、日本、とりわけ南西諸島地域に、大きな影響を与える。
‘島嶼防衛’と声高に叫ばれるなかで、超音速兵器が戦闘の前面に躍り出ようとしている。2019年度の防衛装備庁発表によると、開発中の超音速滑空弾と呼ばれる新型兵器は、ロケットで打ち上げられ、十分な速度まで加速された後、ロケット本体が切り離される。その後は、先端部分が上下に振動しながらグライダーのように滑空する。標的の上空まで来たとき、弾頭が着弾するという兵器である。その飛行速度は、音速の5倍程度である。2026年に配備される早期装備型と、2032年ごろに開発が完了する性能向上型がある。陸上自衛隊のなかに島嶼防衛用高速滑空弾部隊が新設される。防衛装備庁の公表した文書によると、対空火器による攻撃が困難な高高度の超音速滑空技術を確立し、敵が島嶼部に上陸した場合、島嶼間射撃により高速滑空弾で敵を迎撃することとなっている。
エンジンを搭載する極超音速誘導弾も開発中である。一種の巡航型ミサイルで、マッハ7まで加速される。搭載されるラム・スクラムジェットエンジンは、極超音速気流のなかでジェット燃料を燃焼させる。このエンジン開発は、防衛装備庁とJAXA(宇宙航空研究開発機構)、岡山大学と東海大学の共同研究で、2026年に完成する予定である。これらの超音速兵器は、ミサイル防衛で培われた迎撃システムは通用しない。マッハ7で100kmを飛行するのに1分はかからない。島嶼間で戦闘状態になった場合、超音速兵器による攻撃は、これまでの戦闘の様相を一変させてしまうだろう。超音速兵器が、「ゲーム・チェインジャー」とよばれる所以である。
超音速兵器に加えて、既存のミサイルの長射程化も進められている。南西諸島に配備されている12式地対艦ミサイルは、射程200kmであるが、これを1500kmまで伸ばし、相手の射程圏外から攻撃できるようにする。いわゆる‘敵基地攻撃’にあたるために、憲法に違反することが指摘されている。
これらの兵器の運用には、打ち上げから着弾までの時々刻々のミサイルの位置を把握する必要がある。このために、ミサイルに搭載された計器で、人工衛星からの電波を受信し、それから自分の位置を計算する。これを「衛星測位」と言い、そのための衛星を測位衛星と呼ぶ。GPSは、世界で最初に開発されたアメリカの測位衛星である。31機で、地球全体をカバーしている。日本の人工衛星「みちびき」は、アジア・オセアニアの空域をカバーする測位衛星で、現在は4機、2023年には7機の体制で完成する。
「みちびき」と電波を送受信し、衛星の飛行を管制する地上管制局は、茨城と神戸に置かれている。通常、衛星の地上管制は、1~2か所で行われる。しかし、準天頂衛星に関しては、2015年から16年にかけて、恩納村、種子島、久米島、宮古島、石垣島にも管制用のアンテナが設置された。宮古島には、2基のアンテナが置かれている。これらは、追跡管制局と呼ばれる。これらのアンテナの役割は何か?亜熱帯上空の大気は不安定で、この層を通過する電波に雑音が混じるなどの影響が出る。地上のデータを衛星に送る恩納村のアンテナを別にすれば、他は、雑音を処理するためのアンテナである。測位衛星の7機体制と、追跡管制局の設置は、ミサイルや超音速兵器が使われる島嶼戦争に備えてのものと考えられる。
2009年4月、プラハでオバマ米大統領が「核なき世界を目指す」と演説したとき、副大統領であったバイデン氏が、超音速兵器の開発を進めていた。オバマ氏のノーベル平和賞受賞の背後に、新型兵器が息をひそめていたのである。今では、米・ロ・中国に加えて、韓国や北朝鮮も超音速兵器を開発中である。核に替わる兵器というふれこみであったが、日米両政府は5月23日、日本が核使用の脅威を受ければ米国が核を含む抑止力を行使すると確認した。安倍元首相が、「核共有」という言葉で、それを言い表した。世界は超音速兵器の脅威に加えて、核兵器にも脅かされている。
最先端の軍事技術が投入される島嶼‘防衛’戦争は、一方で、住民を犠牲にした沖縄戦の再来を予感させる。2012年、陸上自衛隊富士学校の隊内誌に掲載された記事には、島嶼防衛戦は、「敵に離島を占領させた後、強襲上陸し奪還するものである」とある。占領などの際は、「領域保全を優先」するため「住民混在の国土防衛戦」を行う」と書かれている。翌2013年、沖大東島で離島奪還訓練が実施されたとき、琉球新報は、「いったん敵に島を占領させた後、増援部隊が逆上陸して敵を撃破する戦い方が採用されたようだ。」と報じた。少数の守備隊を島に残して、大半は島外にでる。島民は、島に留まらせる。上陸する敵の部隊を、守備隊が迎え撃つ。島外に出た部隊が後から上陸して敵の部隊を撃破するという。住民を盾にした「国土防衛戦」を沖縄の地に再来させることは、二度とあってはならない。
(琉球新報 2022年9月22日から転載)
前田佐和子 (元京都女子大学教授

 

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