メールマガジン第81号:中城港湾・与那国空港の自衛隊使用許可反対と日米共同統合演習について②
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会メルマガ琉球・沖縄通信【市民による沖縄県および全市町村議会への働きかけ】
私も所属している沖縄平和市民連絡会は、10月31日(月)に沖縄県交渉をもった。県側は土建部統括官、港湾課課長、基地対策課参事等が参加した。市民側は連絡会とうるま市島ぐるみの会メンバー計11人が参加した。そこで、今回予定されている「日米共同統合演習」に中城湾港や与那国空港など県管理施設や民間地域が使われていくとのことで、今回の共同統合演習の全容を明らかにすること、中城湾港使用の許可をしないこと、今後米軍による県管理港湾の使用を絶対に認めないことなどの要請を行い、要請を基にして県と交渉を行った。
これまでもこの交渉に入るだいぶ前から今の動きに対しては県庁にも県議会の各議員一人ひとりに対しても資料を付けて「日米共同作戦計画」の在り方に関して警鐘を鳴らし、且つ県議会で議論するようにと訴えてきた。それは、琉球弧の島々が「台湾有事」に伴う「日米共同作戦計画」で中国封じ込めの最前線に位置づけられてきていること、そして、ミサイル配備など基地建設強化が行われてきているとのこと、そのままでは再び戦場にされてしまうとのことの懸念が沖縄を覆ってきていることがあるからである。
県への働きかけ以外にも沖縄平和市民連絡会は今年の初めの2月頃から、沖縄の全市町村議会と県議会に「沖縄を再び “いくさば(戦場)”にさせないための陳情」の提出を行ってきた。その中で唯一反応があったのは北谷町議会で、そこは陳情の採択を行ってきている。
連絡会が提出してきた資料等は以下の通りである。日米が去る1月7日の「2プラス2」で推進を確認してきている「日米共同作戦計画」の根拠資料として、月刊誌「世界」の3月号掲載の石井暁氏(共同通信)の「台湾有事と日米共同作戦―南西諸島を再び戦禍の犠牲にするのか」などを県議会や全沖縄の市町村議会に提出した。このように前から市民側は議会にも働きかけている。
今回の日米共同統合演習(キーン・ソード23)はその一環で、琉球弧全体で大掛かりな実動訓練として行われていること、そのことは「台湾有事」と関連付けられ、一段と戦争の危機が身近に迫ってきていることを感じさせるものである。作戦計画から統合演習と急ピッチで「有事」に進めていることは実に恐ろしいことだ。
【沖縄県の交渉と反応】
10月31日の県との交渉で沖縄県の対応は、自衛隊から「使用許可申請」が具体的には出されていないとして、出されてきたら法令に基づいて検討し、他の一般船舶と同じように対応すると甘い態度であった。米軍と自衛隊が一体となって島々で戦争する「演習」にもかかわらず危機感の無さは住民の命を守る観点と姿勢が全く感じられないとして参加者から厳しく批判が出された。「演習」についての県政としての立場が示されておらず、改めて、直接デニー知事との交渉が必要との声が大きくなってきている。
参考に北上田毅氏のブログを掲載したい。そもそも北上田氏は今回の交渉を牽引してきた。この交渉の経過を連絡会会員の北上田さんが的確にまとめてくださったので共通認識とした確認しておきたい。
<北上田毅<チョイさんの沖縄日記>10月31日より)
「今日(10月31日・月)は、日米共同統合演習問題について沖縄県交渉を行った。県は、土建部統括監や港湾課長、基地対策課副参事等が対応、我々の側は、平和市民連絡会のメンバーとうるま市でミサイル基地設置計画に反対している人たち、合計11名が参加した。今回の自衛隊と米軍の合同演習は、今までにない大規模なもので、台湾有事による「武力攻撃事態」を想定した実践訓練である。基地内だけではなく、県管理の公共施設が自衛隊・米軍のために使用される。中城湾港では自衛隊車両・自衛隊員の搬送(自衛隊のチャーター船が接岸し、往路・復路で車両122台、自衛隊員327名を陸揚げ、積込)。与那国空港では、自衛隊の16式機動戦闘車(MCV)を輸送し、公道を自走させる訓練が行われる。また、米軍が与那国島で演習するのは初めてのことだ。中城湾港や与那国空港の使用には、事前に知事の許可(空港の場合は届出)を得ることが必要である。今日の交渉で、県は、「県としてはなるべく使わないでほしいという要望を伝える」、「与那国島でのMCVの公道走行には県民の不安があると伝える」と説明したが、「防衛省への要請については、現在、検討中」というにとどまった。その一方で、「申請が出れば、法令に基づいて許可を出すかどうか審査する」という態度に終始した。現時点ではまだ、中城湾港や与那国空港の使用申請は出ていないという。しかし、正式な演習期間は11月10日から19日だが、防衛局が10月7日、県に示した文書では、中城湾港では、「往路:11月1日~9日の間で事前輸送」、「復路:11月17日~25日の間で撤収輸送」とされている。明日(1日)からでも使われるかもしれないのだ。少なくとも、具体的な使用方法の協議も始まっていないとはとても信じられない。知事は早急に県民に日米共同統合演習について説明し、防衛省に、①「演習の中止」を求めること。② 少なくとも、知事の権限で、県の港湾・空港を使用させないこと等、毅然とした対応を講じるべきである。」と、記載して下さった。ここで改めて感謝の意を伝えたい。
文中の自衛隊数とか数字はマスコミによっても統一されておらず、政府の公表を待ちたい。10月31日の県交渉にあたり県に提出した資料は11月11日付け資料である(掲載済)。
交渉では歯がゆいほど煮え切れない県上級官僚の態度であった。港の利用者、自衛隊に手続き上のミスが無ければ、認めるのが当然であるかの態度を崩せなかった。一般船の使用申請と軍事目的申請を全く区別しないということは今後も軍事行動が無条件に沖縄の土壌で通過することを意味する。それ自体が沖縄県の問題であることを痛感した。玉城県政には、法律や県条令制定の意図には憲法の平和的生存権、平和主義の精神こそが前提であることを認識して頂きたい。元々、戦後は先の大戦を反省することからスタートしたのではなかったか。戦後の法律や条例には港湾も空港も軍事利用は想定されていなかったはずである。なし崩しに自衛隊が民間船「はくおう」をチャーターしていることで民間船扱いするとすれば思慮が足りないと言わざるを得ない。今回の中城湾使用や与那国島空港の使用は自衛隊である。今回の中城港には約自衛隊員人員200人と軍車両約70台が陸揚げされた。それらが公道を使って民間の住宅地を通っていった。自衛隊が大挙して堂々と通過する沖縄の状況は一種の「地ならし作戦」ではないか。熟慮していただきたい。住民の持つ戦争への道への緊張感や抵抗感を薄めようというのか。軍隊の存在を前提とした生活様式に変えようというのだろうか、政府の意図はそうだろうと推察できるが、県政は住民の命こそまず守ことを鉄則にしなければ国防の論理に巻き込まれる。国を守るとは一体何なのか、歴史は軍事産業の実を上げ一部の上層者の命を大切にする一方で若者・庶民の命を簡単に戦場に送って「消耗品」の様に扱った。「徴兵制」はコストのかからない、安くつく軍隊だという。国を守という言葉ほどいかがわしいものはない。沖縄県民に有名なスメドレー・バトラー将軍は「戦争はいかがわしい商売」と言ったではないか。戦争で一儲けしたいアメリカの勢力は、戦争をして稼ぐ。中国のアジア太平洋での勢力削減、中国封じ込め、それは正義でもない。米国がアジア太平洋で「威張りたい」「米覇権」争いに日本の土地、琉球弧を提供することをやめさせよう。日本の防衛費を上げれば米軍産業界は大儲けするだろう。ウクライナ戦争同様だ。琉球弧で戦争になったら、米軍は「オフショア・コントロール」戦略で遠くから指揮する。EABOという米海兵隊運用戦略では有事の際に、琉球弧で島伝いに中国艦船に向かって砲撃しては移動する。その後、米軍はグアムかハワイなどに「逃げる」。自衛隊と沖縄住民らを島で「闘わせて」、米軍は自国艦隊や爆撃機の「消耗」を最小限にするという。だから「逃げる」。米国の代理戦争を米国の為にやってあげる、こんな日本はあまりにも浅はかである。本来、外交・対話を尽くせば平和は創れる。日本はただ米軍に従うだけでいいのだろうか。日本人やネットウヨは日本の住民・国民の立場で考えることができないのか。「日本のナショナリストは米国益を考える人たち」との指摘がある。米国益を追求する日本愛国者って、言葉自体が成り立たない。だがその通りで、「日本の保守は米国の利益を考える人たちであるのは嘆かわしい」と述べておられる伊藤貫氏の言葉を紹介しておきたい(松田政策研究所での発信)。
市民側は国の軍事「地ならし」にも抗っている。市民は努力しているのだ。沖縄の顔である知事にも努力をお願いしたい、といった意見が出ている。それでも沖縄県民は国から分断されないように注意しながら玉城知事を支えようとしている。その一方で、国家は、再び沖縄を戦場にする政策には断固止めていかねばならない。難しい運動になっている。日米政府だけならば「糾弾」の一本でまとまれば良いが、今は何としても玉城デニー県政を味方につけていかねばならない局面である。県政も共に戦場化に抗ってほしい。この課題を背負って市民は闘っている。実は、2019年には北部にある本部港(もとぶこう)の使用に対して、玉城デニー知事は使用を許可していなかった。その時の様子は(沖縄タイムス2019.9.20)「米海兵隊の本部港使用を、今後も緊急時以外は認めない考えをしました。(略)県はこれまで民間船舶の円滑かつ安全な運行を確保するため、緊急時以外の民間港湾や空港の使用の自粛を要請している。その方向性は今までもこれからも変わらない」。緊急避難以外は使用を力強く否定している。しかも、日米統合演習はスケジュールに則って行うので全く緊急避難的な行為ではない。今まで通り否定すべきである。
【自衛隊の本質は軍隊】
県やデニー知事は米軍と自衛隊とは違うからとおっしゃりたいのかもしれない。それだと日米安保の本質と自衛隊の本質を知る必要がある。自衛隊は災害救助で親しまれている。だが、それは本質ではない。日米安保条約制定当時、吉田茂首相とクラーク大将が1952年7月23日に指揮権密約を結んでいた。その公文書が1981年、古関彰一氏(憲法学)によって発見された。戦争の脅威が生じたときは「すべての日本軍は、海上保安庁も含めて、(略)(米軍の)統一指揮権下に入る」。条約の通り米軍は自衛隊に要求できる。日米統合の動きもその流れなのである。自衛隊認識を誤ってしまってはいけない。軍隊から市民を守るという市民目線で対策を考えねばならない大事な局面にあると思う。
宮城恵美子
(平和市民連絡会共同世話人 ISF理事 ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会発起人)
(以下は再掲です)
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