【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第27回 安倍晋三氏と統一教会、 北朝鮮とウクライナ、その不思議な関係

寺島隆吉

このたび、『ウクライナ問題の正体1・2』を7月30日に発刊できる目処がつきましたので、やっとブログに復帰できます。

本当は研究所「野草・野菜・花だより」を一刻も早く書きたいのですが、その矢先に、元首相安倍晋三氏が選挙演説の最中に銃で撃たれる事件が起きました。

犯人とされる人物が元自衛隊員であり、犯行の動機が安倍晋三氏が関わっていた「宗教団体」から自分の母親が大金をむしり取られていたことだったと知りました。

その「宗教団体」は当初、新聞では公表されていませんでしたが、最近になってやっと、それが「統一教会」だということが報道されるようになりました。投票の前日だったから、大手メディアは、 自民党に不利になることを恐れて、 公表を控えたのかもしれません。

その作戦が功を奏したのか、同情票を獲得して自民党の勝利となりました。 「改憲」すなわち「壊憲」ができるだけの議席数を与党勢力は手に入れることができたからです。

野党勢力が自民党と一緒になってロシアとプーチン大統領の悪魔化に加担してきたのですから、当然の結果とも言えます。

それはともかく、安倍元首相を初めとする自民党が「勝共連合」 「統一教会」から裏の支持を得て選挙活動をしてきたことは、知る人ぞ知る事実ですが、そのことを以前のブログで書いた記憶があったので調べてみました。すると次の記事が見つかりました。

*世界はいま 「大転換」 のとき②―「神によって選ばれた国」 「神によって選ばれた民」その2( 『百々峰だより』2018/06/24)
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-319.html

読み直してみて自分でも驚いたのですが、この統一教会は単に自民党や安倍元首相に関わっていただけでなく、ア メリカ~北朝鮮~ウクライナにまで深いつながりがあったことです。

その当時、この記事を書いたときは一生懸命に調べて書いたのですが、2018年6月に書いた記事だったので、恥ずかしいことに、 「統一教会と安倍晋三氏の関わりについて書いた記事があったはず」という記憶しか残っていなかったのです。

ところが読み返してみると、前述のとおり、非常に重要な事実が書かれており、今のウクライナ問題とも深く関わっていることも再発見して、これはどうしても現時点で再掲して皆さんにも読んでほしいと思うようになりました。お許しいただければ幸いです。

以下が、その記事ですが、 読みやすくなるように当時にはなかった段落番号を付けました。新しく、(1)から番号を付け直しました。

(1)前回のブログを書いてから、次の出版物 『魔法の英会話、 理論編&実践編』 『レポートの作文技術』の編集に追われているうちに、あっという間に1カ月が経ってしまいました。

このブログは、1カ月の空白をおくと宣伝のページが入り込んできて、不愉快で、かつ非常に読みにくい画面になってしまいます。そこで恥ずかしながら、慌ててこのブログを書いている始末です。読者の皆さんには本当に申し訳なく思っています。

(2)それはともかく前回のブログでは、連載「世界はいま『大転換』のとき②」として、 「世
界で孤立する『神によって選ばれた国』 『神によって選ばれた民』」という題名で、アメリカとイスラエルを取りあげました。そしてブログの最後を次のように結びました。

トランプ氏は大統領選挙戦で、 「国内の立て直しに専念する。そのため海外に手を出すことはやめ、ロシアと協力しながらイスラム原理主義勢力を一掃し、海外の米軍を撤退させ、軍事費を国家再建にまわす」ことを公約したのですが、 今はオバマ前大統領も顔負けするほどの軍拡に走り出してしまいました。

その後の言動は先述のとおり、 アメリカの威信を回復させるどころかますます世界から孤立させるものでした。

しかし考えようによっては、トランプ氏はいまアメリカ大統領として世界に巨大な貢献をなしつつあるとも言えます。

というのは、 アメリカが振りかざしている「アメリカ例外主義」 「神から与えられた明白な使
命(マニフェスト・デスティニー)」が、このようにはっきりと目に見えるかたちで世界に提示されたことは、かつてなかったからです。

これはトランプ氏の登場なしにはあり得なかったでしょう。オバマ氏の偽善的な姿勢が、アメリカの真の姿を覆い隠してきたからです。

まだまだ核戦争の危機が完全に消えたとは言えませんが、絶対的帝国として世界に君臨していたアメリカが、これを機会に、その流れを多極主義へと転換することになるとすれば、世界の平和にとってこんなよいことはありません。

トランプ大統領が登場して、「マニフェスト ・ デスティニー」を露骨なかたちで世界に顕示し、自らを孤立化に追い込んだこと-これを第2の 「大転換」 として私があげる所以です。

(3)私がこのように、世界における「神によって選ばれた国」アメリカの孤立化を紹介して間もなく、さらに「神によって選ばれた国」「神によって選ばれた民」の孤立化を歴然と示す2つの出来事がありました。

ひとつは、金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ大統領との直接対話が、2018年6月12日に、シンガポールで実現したことであり、もうひとつは、国連人権理事会からの脱退を、6月19日に、アメリカが表明したことです。

キム委員長とトランプ大統領の直接対話が実現したことは世界の平和にとって非常に好ましいことでした。これは、核戦争を回避しようと努力してきた人たちに大きな希望を与えるものだからです。しかし、同時にこれは軍事帝国アメリカの一層の衰退と孤立化を象徴する出来事でした。

というのは、これまでトランプ氏は、個人的にはキム氏との直接対話を望むと言いながらも、他方では、Deep State(闇の政府)の意向に沿って「北朝鮮が完全な非核化を約束し実行しないかぎりキム委員長とは会わないし韓国との共同軍事演習もやめない」と言明し続けていたからです。

にもかかわらずトランプ氏が一転して前言を翻し、直接対話に乗り出したのは、韓国の文在寅大統領が先導して北朝鮮との直接対話の気運を作りだし、北朝鮮も、それに応えて、2018年5月25日に、米英韓中露5カ国の外国記者団まで招いて、核実験場の爆破を公開したからです。

北朝鮮「外国特派員を招待して核実験場の爆破を公開」。2018年5月25日、核廃絶の意志表明として国内唯一の核実験場を破壊した。
これによって6月12日、シンガポールでトランプ大統領との直接対話が実現した。

 

このような北朝鮮による核廃絶の意思表明は、韓国はもちろんのこと平和を望む多くの人々の支持を得ましたから、この高まる大きな世論を無視して、経済制裁や武力による恫喝のみを繰りかえしていては、ますますアメリカの傍若無人さが際立って、孤立が進行してしまいます。

というよりも、世界中の世論によるアメリカの孤立化が、シンガポールでの直接対話となって実現したと言うべきでしょう。

(4)ではキム委員長に核実験場の廃棄・爆破を決断させた要因は何だったのでしょうか。こ
れについて櫻井ジャーナル(2018/06 /17)は次のような興味ある説明をしています。

(ソ連崩壊後)ミハイル・ゴルバチョフに見捨てられてから生き残りに必死だったであろう朝鮮は、統一教会やイスラエルと手を組み、東アジアの軍事的な緊張を高めたいアメリカにとっ
て好都合なこと、例えば核兵器の開発やミサイルの発射実験を行ってきた。

こうしたことは中国やロシアから止めるよう説得されていたが、無視してきた。ロシアの前身であるソ連に裏切られたという思い、アメリカ軍の強さに対する恐れが朝鮮を動かしてきたのだろうが、昨年4月の攻撃でロシアや中国への信頼が戻った可能性がある。

しかも、韓国がロシアや中国と連携している。ロシアの防空システムがあれば、アメリカ軍をそれまでのように恐れる必要はないと考えても不思議ではない。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201806170000/(太線は寺島)

アメリカは、北朝鮮がミサイル実験をするたびに、それを口実に韓国や日本に巨額の武器を買わせ、THAAD(戦域高高度防衛ミサイル)や地上配備型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」を韓国や日本に配備して中国包囲網を強化してきました。

と同時に、モリカケ問題などで安倍政権が国会で追い詰められているときに、具合のよいことに、いつも北朝鮮がミサイル騒ぎを起こしてくれて、 NHKを初めとする大手メディアは、世論の批判が安倍政権に向かわず北朝鮮非難へと集中する役割を果たしてきました。

私はいつもこのことを不思議に思ってきました。そもそも貧困に喘いでいるはずの北朝鮮が、核実験やミサイル開発に向ける技術やお金はどこから手に入れたのだろうか。 中国・ロシアとの関係は悪化していたのだから、どこが裏で支援していたのだろうか。これが私にとって最大の謎でした。

この疑問を解いてくれたように思われたのが、 右記の櫻井ジャーナルで指摘されている2つの事実、すなわち「生き残りに必死だったであろう朝鮮は、統一教会やイスラエルと手を組み」、および「昨年4月の攻撃でロシアや中国への信頼が戻った可能性がある」という説明でした。

(5)まず後者の「昨年4月の攻撃」ですが、これについて櫻井ジャーナルは、「昨年4月の攻撃が中国や朝鮮の考え方に変化を与えた可能性はあるが、それはトランプ大統領の主張とは逆だろう」として、次のように説明しています。

ドナルド・トランプ米大統領は、 シンガポールで朝鮮の金正恩労働党委員長との会談を行った6月12日、FOXニュースのシーン・ハニティのインタビューを受けたが、その最後の部分で、2017年4月6日にシリアで実行した攻撃について語っている。

その攻撃とは、地中海にいたアメリカ海軍の2駆逐艦(ポーターとロス)が巡航ミサイル(ト
マホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したもの。

シリア政府軍が自国民に対して化学兵器を使ったという口実だったが、証拠はなく、それが事実でなかった可能性は極めて高い。

(中略)

トランプ大統領は昨年4月6日のシリア攻撃で発射されたミサイル全てが目標にヒットしたと主張しているのだが、被害が事実上、なかったことが判明している。

しかも、ロシア国防省によると、目標に到達したのは23機だけ。いくつかは地上に落下しているが、残りは不明。海中に落下した可能性が高い。

トランプ大統領の主張とは違い、 アメリカのミサイルはロシアの防空システムを突破できていないと言える。

つまり、アメリカは59機ものミサイルを発射したのですが、目標に到達したのは23機だけで、その6割は打ち落とされているのです。しかも目標に到達した23機も、事実上は何も被害を与えていないのです。

もうひとつ北朝鮮の姿勢を変えさせる事件がありました。それを櫻井ジャーナルは先の解説に続けて、次のように伝えています。

そして2018年4月、アメリカ軍は再び偽情報を宣伝しながらシリアをミサイル攻撃した。アメリカ国防総省の発表によると、 攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、 ヒム ・ シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、 ヒム ・ シンシャー化学兵器(7機)で、全て命中したとしている。

が、「攻撃目標」と「使用されたミサイルの数」が不自然で、現地の様子とも符合しない。

それに対し、ロシア国防省の説明によると、この攻撃で米英仏の3カ国は103機の巡航ミサイルを発射、そのうち71機をシリア軍が撃墜したという。

今年は短距離用の防空システム、パーンツィリ―S1が配備されていたが、これが効果的だったようだ。アメリカはリベンジを狙って返り討ちに遭った。

ロシア国防省は攻撃された場所として、ダマスカス国際空港(4機。 全て撃墜)、 アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、 バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、 サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、 ホムス軍用空港(16機。うち
13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)を挙げている。

つまり、 発射されたミサイルのうち7割は撃墜されているのです。前回の撃墜率は6割でしたから、大きな前進と言うべきでしょう。しかも狙ったのは化学兵器施設だったとするアメリカの主張が全く嘘だったということも暴露されてしまいました。

そもそもシリアの化学兵器は国際団体監視の下で全て廃棄されているのですから、このような嘘は初めから意味のないことでした。

だとすれば、 北朝鮮が「ロシアの防空システムがあれば、アメリカ軍をそれまでのように恐れる必要はない」と考えて、 自分もロシアや中国に接近したいと思ったとしても不思議ではないわけです。まして韓国の文在寅大統領がロシアや中国に接近し両国と連携し始めているのですから、なおさらのことです。

こうしてキム委員長は急速に中国に接近し、習近平国家主席との会談に至ったのでした。

(6)では第2の事実「生き残りに必死だったであろう朝鮮は、統一教会やイスラエルと手を組み」については、どうでしょうか。

反共団体として名高い「統一教会」が、共産主義国家として悪罵を受けている北朝鮮と手を組んでいるという事実を、 私は、 初めは信じられなかったのですが、Yahoo! ニュースが次のような事を報道している(2015/8/30)ことを知り、やっと納得することが出来ました。

北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信は8月30日、金正恩第一書記が、韓国発祥の宗教団体・世界基督教統一心霊協会 (統一教会) の教祖である文鮮明氏の3周忌に際し、遺族らに弔電を送ったことを伝えた。

日本では霊感商法や有名芸能人の「合同結婚式」などで社会問題化した統一教会だが、教祖の文鮮明氏は、もともと北朝鮮・平安北道出身だ。

社会主義体制の北朝鮮とは、反共団体である国際勝共連撃的に訪朝。当時の合の活動などを通じて長年対立していたが、 1991年に電撃的に訪朝。当時の金日成主席と和解して以降、密接な関係を築いてきた。

金正恩氏は文鮮明氏の死亡時と1周忌に際しても弔電を送っている。

別れを惜しむ、文在寅大統領と金正恩委員長
https://www.rt.com/news/427852-north-korea-moon-jae/

 

この記事は、もうひとつ衝撃的事実を報じていました。 何と安倍晋三氏や自民党タカ派勢力は、これまで統一教会(および北朝鮮?)と親密な関係を築いてきていたのです。Yahoo!ニュースは前頁の報道に続けて、 次のような解説を載せていました。

それだけではない、文鮮明氏は安倍晋三ファミリーとも親密な関係を築いていた。

統一教会は観光や自動車生産で北朝鮮を支援してきたほか、北朝鮮が旧ソ連製の弾道ミサイル潜水艦を「スクラップ」として輸入する際にも、同教団系の企業が関与していた。

また、統一教会は、日本の弁護士グループから「信者らが違法な物品販売等で再三、刑事摘発されている反社会的団体」と指弾されている一方、自民党政治家と親密な関係を築いてきたことで知られる。

中でも、安倍晋三首相の祖父である岸信介元首相は文鮮明氏ととくに親密で、最近では、山谷えり子国家公安委員長と国際勝共連合の関係がメディアで取り沙汰された。

石原慎太郎元都知事も同組織から選挙支援を受け、 熱烈な感謝のメッセージを送っている。

(7)要するに、表では「力で屈服させろ」と北朝鮮を声高に非難しつつ、裏では統一教会を通じて北朝鮮を支援し、アジアの緊張関係を高め、それを口実に日本の軍拡と改憲(=壊憲)を一気に進めるという、高度な戦術を安倍政権は取ってきたわけです。

(ちなみに、山谷えり子国家公安委員長が関係していたとされる「国際勝共連合」は、統一教会の外郭団体です。 )

これはアメリカも全く同じで、 「冷酷な独裁政権」と北朝鮮を声高に非難しつつ、「金正恩の斬首作戦」などの軍事演習を繰りかえしてアジアの緊張関係を高め、それを口実に韓国や日本に巨額の兵器を買わせてきました。

と同時にアメリカは、北朝鮮との緊張関係を口実に、THAAD(戦域高高度防衛ミサイル)やイージス・アショアなどの超巨額かつ超攻撃的な武器を韓国や日本に配備して中国包囲網を強化する、という高等戦術を駆使してきたのです。そして安倍政権は「東のプードル犬」として、このようなアメリカの戦略に積極的に協力してきました。

ですから、このような高等戦術のなかで、北朝鮮は踊らされてきたとも言えるわけです。

もっとうがった見方をすれば、キム委員長とトランプ大統領は、「お互いに悪罵を投げつけ合いながら中国包囲網を強化するという猿芝居を演じてきたのではないか」という疑いすら浮かんできます。

北朝鮮にしてみれば、このようなかたちで、敵対しつつあった中国に恨みを晴らすつもりだったのかも知れませんが、シリアにおけるロシア軍とロシア兵器の目を見張るような働きが、キム委員長の姿勢を大逆転させたのではないか︱これが櫻井ジャーナルの意見であるように私は思われました。

こうしてアメリカの孤立(そして安倍政権の孤立)は、世界が注視する中でいっそう歴然としてきたのでした。

 

1 2
寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ