【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第27回 安倍晋三氏と統一教会、 北朝鮮とウクライナ、その不思議な関係

寺島隆吉

(8)では櫻井ジャーナルが「生き残りに必死だったであろう朝鮮は、統一教会やイスラエル
と手を組み」と指摘している「イスラエルとの関係」については、どうでしょうか。これについても櫻井ジャーナル(2017/11/15)は次のように述べています。

中国には一帯一路(海のシルクロードと陸のシルクロード)というプロジェクトがある。かつて、輸送は海路の方が早く、運搬能力も高かったのだが、技術の進歩によって高速鉄道が発達、パイプラインによるエネルギー源の輸送も可能になった。海の優位さが失われている。

しかも中国は南シナ海からインド洋、 ケニアのナイロビを経由して紅海に入り、 そこからヨー
ロッパへ向かう海路も計画している。この海路を潰すため、東の出発点である南シナ海をアメリカは支配しようと考え、日本はアメリカに従ったということだ。

ところが、 2016年6月にフィリピン大統領となったロドリゴ・ドゥテルテはアメリカに中国は東アジアでの経済的な交流を活発化させて軍事的な緊張を緩和しようとする。

従属する道を選ばない。ベトナムなどもアメリカの好戦的なプランから離れていく。ロシアと
例えば、 2017年9月4日から5日に中国の厦門でBRICS諸国(ブラジル、ロシア、 インド、 中国、南アフリカ)の会議が開催され、 9月6日から7日にかけてロシアのウラジオストックで同国主催のEEF(東方経済フォーラム)が開かれた。

このイベントに朝鮮も韓国や日本と同様、代表団を送り込んでいる。韓国がロシアや中国との関係を強化しようとしていることは明白だ。

こうした中、核兵器の爆発実験や弾道ミサイル(ロケット)の発射実験を繰り返し、 アメリカの軍事的な緊張を高める口実を提供してきたのが朝鮮にほかならない。BRICSの会議やEEF(東方経済フォーラム)が開かれた直後、 9月15日にもIRBM(中距離弾道ミサイル)を発射している。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20171115/

上記の説明にあるように、今までアメリカによる中国包囲網に加わっていたベトナムやフィリピンも、アメリカ離れを始めているのです。ここでもアメリカの孤立化が進行していることは明らかです。アメリカに唯ひとり従っているのが日本政府・安倍政権です。

北朝鮮も、この路線を裏から支えてきたことは前頁の説明でも明らかでしょう。それが中国の北朝鮮に対する姿勢を一層硬化させてきたことも疑いのないところですが、これについて櫻井ジャーナルは、さらに詳しく、次のように重要な事実を暴露しています。

このところ朝鮮の爆発実験やミサイルの発射は成功しているようだが、少し前までは四苦八苦していた。

ところが、短期間の間にICBM(大陸間弾道ミサイル)を開発し、水爆の爆破実験を成功させた可能性があるという。そこで、 外国から技術あるいは部品が持ち込まれたと推測する人もいる。

ミサイルのエンジンについて、イギリスを拠点にするシンクタンク、 IISS(国際戦略研究所)のマイケル・エルマンは、朝鮮がICBMに使ったエンジンはソ連で開発されたRD‐250がベースになっていると分析、朝鮮が使用したものと同じバージョンのエンジンを西側の専門家がウクライナの工場で見たとする目撃談を紹介している。

また、 ジャーナリストのロバート ・ パリーによると、 エンジンの出所だと疑われている工場の所在地は、 イゴール ・ コロモイスキーという富豪(オリガルヒ)が知事をしていたドニプロペトロウシク市(ウクライナのドニプロペトロウシク州、 現在はドニプロ市と呼ばれている)にある。

(9)北朝鮮が核実験やミサイル発射をするたびに、私は、 「そのような技術やお金はどこか
ら出ているのだろうか」という疑問をもち続けてきたことは最初に述べたとおりですが、この叙述で、私の疑問はかなり解消された気がしました。

しかし、ウクライナとイスラエルの関係はどうなっているのでしょうか。北朝鮮とイスラエルは、どのような関わりでつながっているのでしょうか。この疑問について櫻井ジャーナルは、さらに次のような説明を加えています。

富豪コロモイスキーは、 ウクライナ、 キプロス、 イスラエルの国籍を持つ人物で、 2014年2月の(ウクライナの)クーデターを成功させたネオ・ナチのスポンサーとしても知られている。

2014年7月17日にマレーシア航空17便を撃墜した黒幕だとも噂されている人物だ。

国籍を見てもわかるようにコロモイスキーはイスラエルに近い人物だが、朝鮮はイスラエルと武器の取り引きをした過去がある。

1980年のアメリカ大統領選挙で共和党はイランの革命政権に人質解放を遅らせるように要求、その代償としてロナルド・レーガン政権はイランへ武器を密輸したのだが、その際、イランは大量のカチューシャロケット弾をアメリカ側へ発注。

アメリカはイスラエルに調達を依頼し、イスラエルは朝鮮から購入してイランへ売っているのだ。この関係は切れていないと考えるのが自然だろう。

その後も朝鮮とイスラエルとの関係は続き、イスラエルには朝鮮のエージェントがいるようだ。そのエージェントがエンジンの件でも重要な役割を果たしたという情報も流れている。

(10)アメリカもEU諸国も、ウクライナの政変をア メリカが裏で支援したネオナチによるクー
デターだったということを、いまだに認めていません。

しかし、これが長年にわたって大金を注ぎ込んだアメリカの仕組んだクーデターだったことは、オバマ政権時の国務次官補ビクトリア・ヌーランド女史が公開の場で堂々と述べた通りです。

ウィキペデ ィアによれば、 彼女は、 2013年12月13日にワシントンで開かれた「ウクライナを巡る会議」において、 「米国は、ソ連崩壊時からウクライナの民主主義支援のため50億ドルを投資した」と語っています。

またヌーランド女史は、 2014年4月、テレビ局CNNのインタビューでも、 米国は「より強い民主主義的な政府を目指すウクライナ国民の欲求をサポートするために」50億ドルを拠出した、と述べているのです。https://jp.sputniknews.com/us/201701263276021/

(ただし、ヌーランド女史は、 「ウクライナの政変は民衆革命だ」と主張しネオナチの暗躍についても認めていませんが、ネオナチの存在は今では公然化しています。いまだに日本の大手メディアは、このことを報じていません。 )

(11)しかし 、いずれにしても、北朝鮮がウクライナを経由してイスラエルとつながってきたことだけは確かなようです。

もし、これが事実だとすれば、アメリカが統一教会やイスラエルと協力しつつ裏で仕組んだ猿芝居に、金正恩委員長はまんまとのせられ、中国封じ込め政策に利用されてきたのではないか、という疑いすら出てきます。そして私たち日本人も、この猿芝居に騙され、日本中に鳴り響いた「Jアラート」に翻弄されたことになります。

とはいえ、いま北朝鮮はアメリカと正面から対峙し、中国やロシアとの関係改善へと、新しい方向に歩み出そうとしていることだけは確かなようですから、その意味でも、アジアにおけるアメリカの孤立化は、ますます鮮明になってきたように見えます。そこで慌てふためいているのが安倍政権です。

以上で、私が今回のブログで論じようとしてきた、 「アメリカとイスラエルの孤立化を示す、さらなる2つの出来事」のうちの前者についての説明を終えたいと思います。

まだ論じ残したもうひとつの出来事、すなわち「国連人権理事会からの脱退」が残されているのですが、もう長くなりすぎていますので、今回はこれで打ち止めにして、次回に譲りたいと思います。

(追記1)

このブログを書くに当たって、いろいろ調べているうちに、さらに次のような衝撃的記述を見つけたので、ここに紹介させていただきます。

イラク戦争に失敗してネオコンは退潮した。それでもネオコンは生きていてオバマ政権にも補入り込んだ。ネオコンとして今も生き残っているのがビクトリア・ヌーランド国務省国務次官
(ヨーロッパ・ユーラシア担当)である。彼女の夫のロバート・ケーガンがネオコン第3世代
(副島隆彦『トランプ大統領とアメリカの真実』178頁)の代表だ。…ビクトリア・ヌーランド女史は、明らかにムーニー(統一教会員)である。そしてヒラリー派だ。

統一教会の旧名称は「世界基督教統一神霊協会」(今は「世界平和統一家庭連合」と名称を変更)で、アメリカにも支部があることは知っていたのですが、まさかヌーランド女史までが統
一教会の一員であったことに驚愕させられました。

これが事実だとすれば、統一教会とイスラエルは、北朝鮮だけでなくウクライナでも暗躍してきたことになります。

ちなみに、ウ ィキペデ ィ アによれば、 統一教会は「開祖 ・文鮮明の姓ムンから、俗にMoonies(ムーニーズ)の名で知られていて」 、アメリカでの活動は次のように説明されています。

1954年5月に韓国ソウルで世界基督教(キリスト教)統一神霊協会が創設され、 1965年に文鮮明一家と幹部たちは宗教・政治的情宣活動の拠点をアメリカに移し、世界宣教経済活動を拡大し、巨大な統一運動傘下組織を作った。

韓国の多くの少数派宗教団体と異なり、朝鮮半島を超えて世界中に普及したという特異性を持つ。世界193か国に支部がある。

(中略)

文鮮明は戦闘的な反共産主義者であり、共産主義は神の摂理に基づく民主主義に対抗する悪
魔によるものとされた。

(追記2)

私は、 櫻井ジャーナ ル(2017/11/15 から)次のような引用をしつつ、 北朝鮮がイスラエルから
援助を受けながら核実験やミサイル開発をしてきたのではないかと、述べました(25~26頁)。

1980年のアメリカ大統領選挙で共和党はイランの革命政権に人質解放を遅らせるように要求、その代償としてロナルド・レーガン政権はイランへ武器を密輸したのだが、その際、イランは大量のカチューシャロケット弾をアメリカ側へ発注。アメリカはイスラエルに調達を依頼し、イスラエルは朝鮮から購入してイランへ売っているのだ。この関係は切れていないと考えるのが自然だろう。(太線は寺島)

しかし、上の引用で「1080年のアメリカ大統領選挙で共和党はイランの革命政権に人質解放を遅らせるように要求、その代償としてロナルド・レーガン政権はイランへ武器を密輸した」という件くだりについては、もう少し説明を付け加えないと理解しにくいのではないかと思うようになり、慌ててこの追記を書き始めています。

この「共和党とイラン革命政権との裏取引」について時系列に沿って略述すると次のようになります。

1980年の大統領選挙では、現職ジミー・カーター大統領(民主党)とロナルド・レーガン候補(共和党)の間で接戦が繰り広げられていた。

その当時、カーター政権は、 イラン革命(1979年)でテヘランのアメリカ大使館が占拠され、大使館員52人が人質にとられるという試練を抱えていた。

1980年4月、特殊部隊デルタ・フォースによる人質救出作戦に失敗し、 2期続投を目指すカーター政権への大きな打撃となった。

このため、 カーター政権の外交姿勢を「弱腰」と批判する共和党を勢いづかせる結果となった。

1980年10月18、 19日、 共和党の大統領指名を争う予備選に出馬し、レーガン政権の副大統領へ転身を企むジョージ・ H・W・ブッシュ(元CIA長官)とレーガンの選挙チーム責任者ウイリアム・ケイシー(後のCIA長官)は、 パリで密かにイラン政府関係者と会談した。

共和党は、イランの最高責任者ホメイニ師ほかイラン政府関係者に賄賂と武器供給を約束し、
人質解放時期をレーガン大統領就任時まで延長するように交渉した。

これは、 「レーガンが大統領に当選した暁にはお望みの武器を供給するから、それまでは人質解放をしてくれるな」という交渉だった。

カーターの在任中に人質事件を解決させないことで彼の人気を落とし、接戦を繰り広げていた大統領選挙で、レーガンを当選させるという隠密作戦だった。

その結果、この選挙でカーターは敗北し、1981年1月20日、レーガンが第40代大統領に就任した。

同日、人質となっていたテヘランのアメリカ大使館員らも無事解放され、 生還した。 人質解放
がレーガン大統領の誕生で実現し、 共和党は 「強いレーガン大統領」 を演出することに成功した。

まさに「事実は小説よりも奇なり」です。イラン革命は「ア メリカを後ろ盾とする王制独裁国家に対する革命」でしたから、 本来ならア メリカとイラン政府とは敵対関係のはずです。

にもかかわらず共和党は、自分たちの利益を最優先にして、イランと取引したのです。

しかも何と!敵に武器(大量のカチューシャロケット弾)を売るというのですから、信じがた
い光景です。

そしてレーガン政権は「イスラエルに調達を依頼し、イスラエルは朝鮮から購入してイランへ売っている」のですから、何度も言いますが、まさに「事実は小説よりも奇なり」です。

ですから、今度の核実験やミサイル開発でも、北朝鮮とアメリカとの間でどのような裏取引があったか、凡人にはとても推し量ることは出来ません。

レーガン大統領は、この後も有名な「イラン・コントラ事件」で全く同じ手口を使っています。ここでも仲介役としてイスラエルが暗躍していました。

だから私は、櫻井ジャーナルの説明は信じるに値する分析ではないかと考えています。

それにしても私たちは何と恐ろしい世界に生きているのでしょう。よほど腹を据えてかからなければ、まんまと権力者がばらまく嘘に騙されてしまいます。

北朝鮮もトランプ大統領を無邪気に信じて行動すれば、まさにリビアの二の舞になるでしょう。これまでの言動を見れば分かるように、アメリカ政府の政策は猫の目のように変わるのですから、いつ前言を翻して攻撃に移るか予想だにできません。

ましてトランプ大統領は今やDeep State(闇の政府)の傀儡と化しているのですから尚更のことです。しばしば「今日の約束」は「明日の反故」となるのですから。

上記サイトを翻訳したものですが、あくまでも直接アメリカが手を下した外国干渉(&戦争)のみを挙げているわけです。ただし、これにはウクライナの政権転覆工作(2005・2014)は含まれていません。アメリカが直接にのり出した戦争ではなく、ウクライナによる代理戦争だからでしょう。また『ウクライナ問題の正体1』62頁には、東欧諸国のカラー革命による政権転覆について紹介しています。グルジア(2003)、ウクライナ(2005・2014)、モルドバ(2009)、アルメニア(2018)、ベラルーシ(2020)。

 

(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体3—8年後にやっと叶えられたドンバス住民の願い—』の第1章から転載)

 

※ウクライナ問題関連の注目サイトのご紹介です。

https://isfweb.org/recommended/page-4879/

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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