【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/猿之助氏とガーシー氏の相違点

植草一秀

歌舞伎界で活躍してきた市川猿之助氏が自殺ほう助の疑いで逮捕された。

母親の自殺に関しての疑いでの逮捕。

猿之助氏の父親も死亡している。

猿之助氏が父親の死亡に関与したのかどうか。

この点は現時点では明らかにされていない。

今後、父親の死亡についても捜査の進展があるかも知れない。

猿之助氏の逮捕についてメディアが報道しているが猿之助氏が乗せられた車には遮蔽措置が取られており、車の内部の様子は映像として放映されていない。

刑事事件で容疑者が逮捕された場合の映像がテレビメディアで頻繁に流される。

その際、流される映像が二種類に分かれることに気付く人は少ない。

何気なくテレビメディアの情報に接している限り、細かな点には注意が行き届かない。

二種類に分類されるというのは、逮捕された容疑者の模様が放映される場合とされない場合があるということ。

先日逮捕されたガーシー元参議院議員の場合、ドバイからの航空機内で逮捕され、空港に到着して逮捕、拘束されている状況が放映された。

モザイクがかかっていたが手錠をはめられた状況が映像で映されている。

他方、逮捕されている状況の映像が流布されない場合が存在する。

これが「二種類」の意味だ。

法務省管轄の下では容疑者の段階での逮捕者の状況は公開されない。

移動の際の車に遮蔽措置が取られている。

しかし、警察管轄下では異なる。

容疑者は取り調べを受けるために検察庁に身柄を送致される。

警察署から検察庁に護送される際の状況を実質的に「公開」している警察署が多数存在する。

しかし、警察所管の警察署等の留置施設のなかには容疑者の状況を撮影できない形態の警察署等が一部存在する。

警視庁湾岸署、警視庁本庁、麹町警察署などがこれに該当する。

警察所管の留置施設にも遮蔽措置が取られている施設が存在する。

この二種類の取り扱いが存在することは憲法が定める「法の下の平等」に反する。

警察がどのような運用を行っているか。

遮蔽措置が取られる施設に収容される場合と、遮蔽措置が取られない施設に収容される場合の区別は何に基くのか。

たまたま事件を取り扱う担当警察署が、遮蔽措置がある警察署になる、逆に遮蔽措置がない警察署になる、ということはあり得る。

この場合は、恣意ではなく偶然による取扱いの差ということになる。

しかし、それだけではない。

特定の容疑者に対して意図して遮蔽措置のある施設で収容し、特定の容疑者に対して意図して遮蔽措置のない施設で収容することがある。

また、警察署から検察への護送に際して、集団で護送する場合と単独で護送する場合の違いも生じる。

これらの「差別」を警察が意図して、恣意的に実行していることが問題の核心。

芸能人の逮捕等によって収容される警察署の代表が警視庁湾岸警察署。

この警察署は遮蔽措置を施している。

縄手錠の写真、動画を撮影できない構造になっている。

また、護送の際の車に遮蔽措置を施す。

より根本的な問題は、逮捕されたとしても、その時点ではあくまでも被疑者であること。

1789年のフランス人権宣言が明確に定めているように、被疑者の段階では無罪が推定されなければならない。

「無罪推定の原則」は刑事司法の鉄則のひとつ。

被疑者の段階では被害者の人権が守られる必要がある。

したがって、被疑者に対する対応としては法務省所管施設の対応が適正である。

警察署の対応は明らかに憲法違反。

この「裁量権」も「警察権力」の重要な一部を構成している。

警察が被疑者の縄手錠写真・映像をマスメディアに提供することは、警察とメディアの癒着の重要な一部を構成している。

被疑者、被告の人権擁護について、「法の下の平等」と整合的な制度対応が法的に整備される必要がある。

※なお、本記事は、植草一秀の『知られざる真実』2020年6月29日 (木)
猿之助氏とガーシー氏の相違点: 植草一秀の『知られざる真実』 (cocolog-nifty.com)からの転載であることをお断りします。

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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