【特集】ウクライナ危機の本質と背景
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必読!国連安全保障理事会でマックス・ブルメンタール氏が発言:私的利益をむさぼる少数の者たちが米国を支配し代理戦争を強行している。(全文日本語訳)Max Blumenthal addresses UN Security Council: Japanese Translation

乗松聡子

米国の調査報道メディア『グレイ・ゾーン』のマックス・ブルメンタール氏が国連安全保障理事会で発言し、ウクライナ戦争の本質を完膚なきまでに言語化しました。ブルメンタール氏の許可を得てここに全訳を掲載します。翻訳は Deepl の力を借りました。(アップ後に翻訳は微修正する可能性があります)

原文中にはソースを示すハイパーリンクがたくさん張られていますがこの翻訳文には反映させていませんので原文を参照してください。

ツイッターで日本語字幕版の動画を拡散しているアカウントもありました。

‘Why are we tempting nuclear annihilation?’ Watch Max Blumenthal address UN Security Council

なぜ米国は核による全滅を誘導しようとするのか?マックス・ブルメンタールの国連安全保障理事会での演説を見る

The Grayzone『ザ・グレイゾーン』のマックス・ブルメンタールは、国連安全保障理事会で、ロシアとの紛争をエスカレートさせたウクライナへの米国の軍事援助の役割と、キエフの代理戦争に対するワシントンの支援の背後にある本当の動機について演説した。

このプレゼンテーションの準備を手伝ってくれたワイアット・リード、アレックス・ルービンシュタイン、アーニャ・パランピルに感謝する。ワイアットは、2022年10月にドネツクで彼が泊まっていたホテルがウクライナ軍の米国製榴弾砲の標的になったジャーナリストとして、このテーマについて直接体験している。彼は100メートル離れたところで攻撃を受け、瀕死の重傷を負った。

私の友人である公民権活動家のランディ・クレディコも今日、私とここにいる。彼は最近ドネツクに滞在し、ウクライナ軍による民間人を標的とした定期的なハイマース(訳者注:米国製の高機動ロケット砲システム)攻撃を目撃することができた。

私は、20年以上にわたって複数の大陸で政治と紛争を取材してきたジャーナリストとしてだけでなく、自国政府に引きずられ、同胞の福祉を犠牲にして地域と国際の安定を脅かす代理戦争に資金を提供することになったアメリカの一市民としてここにいる。

6月28日、アメリカでまたしても、今回はモンタナ川で発生した有毒な列車脱線事故(それはこの国の慢性的なインフラの資金不足とそれが我々の健康にもたらす脅威をさらに明らかにした)に緊急作業員たちが処理にあたっている間に、国防総省は、ウクライナに5億ドル相当の軍事援助を追加する計画を発表した。

これはウクライナ軍が自慢の反攻作戦を開始してから3週間目に入ったところで出てきた動きだ。この反抗作戦については、CNNは「期待に応えられていない」とし、ヴォロディミル・ゼレンスキーでさえ 「思ったよりも進行が遅い」と述べている。

ウクライナ軍がロシアの主要防衛線を突破できなかったため、CNNは6月12日までに、キエフに送られた米国製の装甲車16台を「失った」と報じた。

それで国防総省は何をしたのか?ウクライナの浪費された軍備を交換するために、私のような平均的な米国の納税者にさらに3億2500万ドルを請求してきたのだ。この件に関してアメリカ国民の意見を聞く試みはまったくなく、大多数のアメリカ人はこのやり取りが行われたことすら知らなかっただろう。

今述べたアメリカの政策とは、自国の国内インフラが目の前で崩壊する一方で、政府が外国の核保有国との代理戦争に無制限の資金提供を優先させるというもので、ウクライナ紛争の核心にある不穏な動きを露呈している。つまり、欧米のエリートが、一般市民が苦労して稼いだ富を奪い取り、西側が支援する団体「トランスペアレンシー・インターナショナル」でさえ「ヨーロッパで最も腐敗している」と評価する外国政府(訳者注:ウクライナのこと)の財源に注ぎ込むことを可能にする、国際的なねずみ講的詐欺である。

アメリカ政府は、ウクライナへの資金提供について公式な監査を行っていない。アメリカ国民は、自分たちの税金がどこに消えたのか知らない。

そこで今週、『グレーゾーン』は、2022年と2023会計年度を通じてウクライナに配分された米国税に関する独立監査を発表した。我々の調査は、元軍事情報将校であり、アフガニスタンとイラクにおける米国の戦争の退役軍人であるヘザー・カイザーが主導した。

その中で我々は、米国社会保障庁からキエフ政府への448万ドルの支払いを発見した。

また、ウクライナの国家債務返済のために、米国国際開発庁から45億ドル相当の支払いがあったことがわかった。その債権の多くは世界的な投資会社「ブラックロック」が所有している。

これだけでも、アメリカ国民の10人に4人が400ドルの緊急医療費を支払う余裕もない時代に、国民全員から30ドルも巻き上げられていることになる。

さらに、トロントのテレビ局、ポーランドの親NATOシンクタンク、そして信じられないかもしれないが、ケニアの地方農家の予算が、ウクライナに充てられた税金で水増しされているのを発見した。

ジョージア共和国の企業を含む非公開企業への数千万ドル、キエフの個人起業家への100万ドルの支払いも見つかった。

我々の監査はまた、国防総省が「アトランティック・ダイビング・サプライ」という会社と450万ドルの契約を結び、ウクライナに不特定の爆発物を提供していたことも明らかにした。この会社は以前、上院軍事委員会のトム・ティリス委員長が 「詐欺の歴史」があるとして非難した、悪名高い腐敗企業である。

しかし、議会はまたしても、このような疑わしい支払いや巨額の武器取引が適切に追跡されていることを確認できていない。

実際、ウクライナに送られた軍事援助や人道援助の多くは消えてしまった。昨年、『CBSニュース』はウクライナの親ゼレンスキー派NPOのディレクターの話を引用し、ウクライナの前線に届いている援助はわずか30%程度だと報告した。

資金や物資の横領は、少なくとも軍用兵器の不正な移転・販売がもたらす潜在的な結果と同じくらい厄介だ。昨年6月、国際刑事警察機構(インターポール)のトップは、ウクライナへの武器の大量移送は、「ヨーロッパとそれ以外の地域への武器の流入が予想される」ことを意味し、「犯罪者たちは今こうしている間にも、これらの武器に注目している」と警告した。

今年5月、ウクライナ政府から支給された装備で身を固めた反クレムリン派のロシア人ネオナチ集団が、アメリカ製のハンヴィー(高機動多目的装輪車)を使ってロシア領内でテロ攻撃を行ったとして、西側の政治家たちから称賛された。いわゆる 「ロシア義勇軍 」と呼ばれるこの集団は、自らを 「ホワイト・キング」と称する男が率いており、アドルフ・ヒトラーを公然と敬愛する者も多数含まれているが、ロシア軍に対するこの民兵集団を西側諸国が武器化していることについて、議会から何の反発も出ていない。

バイデン政権は、送られた兵器についてはしっかり管理していると約束しているが、昨年12月にリークされた国務省の公電は、「ウクライナ軍とロシア軍の間の動きと活発な戦闘は、標準的な検証手段が時には実行不可能か不可能な環境を作り出している」と認めている。

バイデン政権は、ウクライナに輸送している兵器を追跡できないことを知っているだけでなく、世界最大の核保有国に対して代理戦争をエスカレートさせていることも知っているし、ウクライナにそれなりの対応をするようあえてけしかけているのだ。

政権がそういう認識であることは明白だ。2014年、バラク・オバマ大統領がキエフに攻撃用武器を送るという要求を拒否したのは、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が言うように、「ウクライナを武装させれば、モスクワを刺激してさらにエスカレートし、ワシントンを代理戦争に引きずり込むことになりかねないという長年の懸念」があったからだ。

2017年に大統領に就任したドナルド・トランプは、オバマの政策に一線を画そうとしたが、レイセオンのジャベリン・ミサイルをウクライナ軍に送ることを拒否したことで、ワシントンの記者団や民主党からすぐにロシアの操り人形の烙印を押された。トランプがジャベリンの送付を渋ったことは、弾劾の根拠の一部とされた。驚きではなかったが、トランプは譲歩した。

米国製の攻撃兵器がドンバスの最前線に到達し始めると、西側諸国はミンスク合意を悪用して、ドイツのアンゲラ・メルケル元首相が言ったように、ウクライナに武装する「時間を与える」ことにした。

2022年1月、米国はウクライナへの2億ドルの武器供与を発表した。2月18日までに、欧州安全保障協力機構(OSCE)のオブザーバーは、停戦違反が倍増していることを報告した。OSCEの地図によると、ドネツクとルガンスクの親ロシア分離主義者側が標的となった場所が圧倒的に多い。その5日後、ロシアはウクライナに侵攻した。

それ以来、アメリカとその同盟国は機会あるごとにエスカレーションの階段を駆け上がってきた。

「エスカレートさせる武器だからということで1月に送ることができなかった武器は2月には送ることができるようになった」と、ウクライナ側との会合を終えた国務省職員は言った。「そして2月には送れなかったものが4月にはできてしまう。これがパターン化している。スティンガーをはじめとして、どうしようもない!」と、彼らは肩に装着するミサイルのことを指して言った。

ジョー・バイデン大統領自身、2022年3月にこう語っている。「攻撃的な装備を送り込み、飛行機や戦車を保有するという考えは……ごまかしはきかない。どう呼んだって、それは第三次世界大戦という意味だ」と。

アメリカからハイマースシステムを受け取ってからウクライナ軍が重要インフラを標的にし始めるまで、わずか2カ月しかかからなかった。ドニプロ川に架かるアントノフスキー橋を攻撃するためにハイマースを使用し、その2カ月後には「ロシアの横断を阻止するためにドニエプル川の増水が可能かどうかを確認する」ためにカホフカ・ダムを試験攻撃した、と『ワシントン・ポスト』紙は報じている。

3週間前、カホフカ・ダムが破壊され、大規模な洪水と地元水源の汚染を引き起こし、大きな環境破壊を引き起こした。ウクライナはもちろん、この攻撃をロシアのせいだと非難しているが、何の証拠も示していない。

またこの頃、ウクライナはロシアがザポリツィア原発で挑発行為を計画していると、根拠のない非難をした。これが引き金となり、リンジー・グラハム上院議員とリチャード・ブルメンタール上院議員(私とは無関係)は、このような事件が起きた場合、NATOがウクライナに直接介入し、ロシアを攻撃することを求める決議案を提出した。

ブルメンタールとグラハムによるこの動きは、シリアで設定されたレッドラインと同様、アメリカの軍事行動を開始するための事実上のレッドラインを確立した。元米外交官がジャーナリストのチャールズ・グラスに語ったように、「偽旗への公然の招待状」であった。

ドゥーマ(訳者注:シリアが化学兵器を使ったとされる疑惑で米国がミサイル攻撃を正当化した)の手口が、今度はザポリツィアで見られるのだろうか?

アメリカはなぜこんなことをするのか?なぜウクライナに高度な兵器を溢れんばかりに送り続け、交渉をことごとく妨害することで、核による全滅を誘導しようとするのか?

私たちは、ディック・ダービン上院議員のような人々から、ウクライナは「文字通り、自由と民主主義そのものを守る戦いの中にある」のだから、バイデン大統領が言ったように、「必要なだけ」武器を供給しなければならないと言われてきた。ウクライナへの軍事援助に反対する者は、この論理によれば、民主主義の防衛に反対しているということになる。

では、ヴォロディミル・ゼレンスキーはどうなのか。野党を禁止し、正当な野党のメディアを違法化し、野党のトップを投獄し、彼の部下たちを一斉検挙し、ロシア正教会を家宅捜索し、聖職者たちを逮捕したといった決定のどこに民主主義があるのか?

ウクライナ政府が、アメリカ市民であるゴンザロ・リラを、戦争に関する公式見解に疑問を呈したとして投獄したことのどこに民主主義があるのか?

戒厳令が発令されたという理由で2024年の選挙を停止するというゼレンスキーの最近の決定のどこに民主主義があるのだろうか?最近はウクライナに民主主義を見つけることは、突然いなくなった軍最高司令官、ヴァレリー・ザルジニーを見つけるよりも難しいようだ。

グラハム上院議員は、ウクライナに何十億ドルもの武器を供給する根拠として、もっと厳しい、そして的を得ている根拠を提示している。最近、キエフでゼレンスキーと面会した際に同議員がこう自慢した。「ロシア人はどんどん死んでいる。我々がこんなに上手に使った金はなかった。」

グラハムは、われわれアメリカは、この戦争を「最後のウクライナ人まで」戦わなければならないとも言っている。公式の死傷者数は厳重に機密扱いにされているが、ウクライナではグラハム議員の残酷な妄想が実現しつつあることを懸念しなければいけない。

今月、ウクライナの兵士が『バイス・ニュース』に訴えた。ゼレンスキーの「計画が何なのかはわからないが、自国民の絶滅のようだ。戦闘可能な労働年齢人口の全滅作戦のような。まさしくそれだ」と。

実際、ウクライナの兵隊墓地は、ロッキード・マーチン、レイセオンなど、第二次世界大戦後2番目に高い軍事費から利益を得ている軍需産業の幹部たちのバージニア州北部の豪邸街やビーチフロントの邸宅群と同じくらい急速に拡大している。

この者たちがウクライナ代理戦争の真の勝者である。平均的なウクライナ人でもアメリカ人でもない。ロシア人でも西ヨーロッパ人でもない。

その勝者とは、オバマ政権とバイデン政権の間に「ウェストエグゼク・アドバイザーズ」というコンサルティング会社を立ち上げ、諜報機関や兵器産業に有利な政府契約を獲得したトニー・ブリンケン国務長官のような人々である。ブリンケンの「ウェストエグゼク・アドバイザーズ」の元パートナーには、国家情報長官アヴリル・ヘインズ、CIA副長官デビッド・コーエン、元ホワイトハウス報道官ジェン・サキ、そしてバイデンの国家安全保障チームの現・元メンバー12人近くが含まれている。

ロイド・オースティン国防長官は、レイセオンの元役員であり、将来もまた役員になる可能性がある。また、ウェストエグゼクと協力関係にあり、ブリンケンが顧問を務める「パインアイランド・キャピタル投資会社」の元パートナーでもある。

一方、現在の米国国連大使であるリンダ・トーマス・グリーンフィールドは、オルブライト・ストーンブリッジ・グループ(自称 “商業外交会社”)の上級顧問として名を連ねている。この会社は故マデレーン・オルブライトが設立したもので、彼女はアメリカの制裁体制下で50万人のイラクの子供たちを死なせたことは “それだけの価値がある “と言った悪名高い発言で知られる。

つまり、ウクライナの中年男性たちが憲兵によって路上から拉致され、最前線に送られる一方で、この代理戦争の資金的・政治的につながりのある立役者たちは、バイデン政権での任期が終われば、回転ドアをくぐって想像を絶する利益を得ようと画策しているのだ。

彼らにとって、この領土問題を交渉で解決することは、ウクライナに対する1500億ドル近いアメリカの援助という「金のなる木」の終焉を意味する。

国連安全保障理事会の常任理事国であるアメリカ合衆国が、「必要な限り」代理戦争を続けようとする政府(訳者注:バイデン政権)の支配下に入ったとき、バイデンが言ったように「ルーブルを瓦礫に変える」一方的な強制措置(訳者注:経済制裁のこと)を外交であると取り違えた政府に支配されているとき、その指導者が利益を追求するために交渉を破壊する一方で、自国民が何に対して金を払わされているのかをきちんと知らせようとしないとき、地政学上のライバルを打ち負かすために、仲間であるはずのウクライナ人の息子たちや兄弟たちを殺戮の場に押し出すとき、ゼレンスキーも米国議会の議員も、国連憲章第51条の精神に反するロシアへの先制攻撃を求めているとき、安全保障理事会は憲章を実施するための行動をとらなければならない。

同憲章の第6章第33条から第38条は、安全保障理事会は、特に国際安全保障を脅かすような紛争が発生した場合、その平和的解決を保証するためにその権限を行使しなければならないと明言している。それはロシアとウクライナだけに適用されるべきではない。安全保障理事会には、米国と、NATOという違法な軍事組織を厳しく監視し、牽制する義務がある。

ありがとうございました。

(翻訳以上)

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※この記事はカナダ・バンクーバー在住のジャーナリスト・乗松聡子さんが運営するPeacePhilosophyCentreの記事(必読!国連安全保障理事会でマックス・ブルメンタール氏が発言:私的利益をむさぼる少数の者たちが米国を支配し代理戦争を強行している。(全文日本語訳) Max Blumenthal addresses UN Security Council: Japanese Translation)からの転載です。
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乗松聡子 乗松聡子

東京出身、1997年以来カナダ・バンクーバー在住。戦争記憶・歴史的正義・脱植 民地化・反レイシズム等の分野で執筆・講演・教育活動をする「ピース・フィロ ソフィーセンター」(peacephilosophy.com)主宰。「アジア太平洋ジャーナル :ジャパンフォーカス」(apjjf.com)エディター、「平和のための博物館国際ネッ トワーク」(museumsforpeace.org)共同代表。編著書は『沖縄は孤立していない  世界から沖縄への声、声、声』(金曜日、2018年)、Resistant Islands: Okinawa Confronts Japan and the United States (Rowman & Littlefield, 2012/2018)など。

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