【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

土地規制法の廃止を求める

仲松正人

1.「土地規制法」の正式名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」という。ここでいう「重要施設」は、防衛施設(自衛隊施設や在日米軍施設・区域)、海上保安庁の施設、そして「生活関連施設」である。私はこの法律を「重要施設等周辺住民監視規制法」と略称している。

2.この法律は、内閣総理大臣が防衛施設等の重要施設周辺概ね1㎞の区域や国境離島区域を注視区域に指定(特に重要な施設等の場合は特別注視区域に指定)し、区域内に居住する住民の土地や建物の利用目的や利用状況を内閣総理大臣が調査し、その利用が施設機能や国境離島機能を阻害したり阻害するおそれがあると内閣総理大臣が判断すれば、内閣総理大臣がその利用を禁止するなどの勧告や命令を発し、それに違反すれば処罰するとして利用を規制するものである。

これだけをみれば、そのようなことは安全保障上必要なことだと思われるかもしれない。しかし、この法律は、機能阻害を防止するということを口実にして、住民を監視し、規制し、戦争準備を行うことをその本質とする。

ここで「口実」と述べたことを簡単に説明する。重要施設周辺1㎞の範囲を規制しても施設機能は守れない。射程1㎞を超える銃火器はいくらでも存在する。妨害電波の到達距離は1㎞などではないし、照射機器は土地などに固定する必要はない。サイバー攻撃は地球の反対側からでも可能である。このように、この法律は、防衛施設機能を守ることを本気で考えているとは言えないのであり、それは「口実」に過ぎないのである。

3.この法律の問題点

⑴この法律は、調査事項については氏名や住所以外は法律で規定せず、その他は政令に委ねており、政府が決める。調査の目的は「機能阻害行為をするおそれがあるか否か」を判断することである。「おそれ」とは現実には生じていないが将来生じる可能性があるということである。そうであれば、「機能阻害行為をするおそれがあるか否か」は現在の土地等の利用状況を調査するだけではわからない。

こうして、結局は、その調査の対象となった人物が将来機能阻害行為をするおそれがある人物であるのかどうかを判断するために調査することになるのである。そして、それを判断するためには、住所氏名や国籍、あるいは公簿上の利用目的だけでは全然足りず、土地建物の所有者や利用者の職歴や検挙歴、活動歴、交友関係、メールやSNS等での発信履歴や内容などを調査しなければならないし、ひいてはその思想・信条を調査しなければならない。

このように、対象者は、思想信条を含む全人格が丸ごと調査されることとなる。政府は国会審議において、土地利用の調査に関係するのであればこれらのことを調査するということを否定しなかった。

⑵施設機能を阻害する行為を行い、または行うおそれがあるとされると、内閣総理大臣はその行為を行わないようにと勧告・命令し、それに違反すれば刑罰が科される。国民・住民の側からすれば、機能阻害行為が何であるのかがわからないと、禁止行為を行うことを事前に回避できない。これは、近代刑罰法の「罪刑法定主義」という基本原則にかかわることである。罪刑法定主義とは、処罰の対象となる行為と、それを行った場合にどのような刑罰が科されるのかということを、予め法律で規定し、国民の予見可能性を保障するというものである。

ところがこの法律は、処罰の対象行為となる「施設機能を阻害する行為」とは何かについて規定していない。政令でも規定しない。どのようなものを機能阻害行為とするのかは、内閣が決める基本方針で明示されることになっているが、それはあくまで例示であり、最終的には個々の事例ごとに内閣総理大臣が決めることになる。罪刑法定主義の重大な違反である。

なお、国会審議では基地反対運動や監視活動も機能阻害行為とされる危険性があることも明らかとなった。

People with raised fists at a demonstration in the city. Multi-ethnic group of people together on strike.

 

⑶調査をする主体は内閣総理大臣であり、政府はこの法律施行のために特別な組織を内閣に新たに設置するとしているが、人数は限られている。この限られた人数で、膨大な数がある自衛隊施設周辺の区域1㎞の範囲を調査することは到底無理である。そのうえさらに米軍施設や生活関連施設、あるいは国境離島区域が加わるのである。

そこでこの法律はまず、内閣総理大臣が関係行政機関や関係地方公共団体に情報提供を命じる。つぎに、区域内の土地等の所有者や利用者その他の関係者に報告を求める。土地等の所有者等がこの報告要求に違反したり虚偽報告をすると処罰されるから、処罰を免れようとするなら従うしかない。

ところで、ここでいう関係行政機関には防衛省も警察庁も公安調査庁も含まれる。防衛省の一部門である自衛隊には情報保全隊という組織がある。警察には警備公安警察部門がある。

公安調査庁を含めて、これら組織は、これまで密かに個人情報を収集してきた。その方法は、尾行や張り込み、協力者(元々のスパイなどだけでなく、関係者に利益供与等して情報提供者に仕立て上げることも行っている)からの情報収集、SNS発信情報の収集などにとどまらず、電話やメールなどの盗聴までしてきた。

内閣総理大臣は、これらの機関がこのように収集した情報を提供させることができるし、その時点で情報が不足していれば追加調査を命じることもできる。これらの機関がこれまで行ってきたこのような調査は、それができるとする明確な法律の根拠はない。したがってこの法律は、これらの調査に対し、今後は「土地利用調査のため」という法的根拠を保障することにもなるのである。

⑷調査は1回限りで終了することはあり得ない。「今日までの調査では機能阻害行為のおそれはないが、明日以降はどうなるかわからない」からである。すなわち、調査対象者となれば、機能阻害行為をするおそれがないかどうかを継続的に監視されることになるのである。政府は国会で、このことも否定しなかった。

また、「今日までの調査では機能阻害行為のおそれはないが、明日以降はどうなるかわからない」から、調査・監視対象者は「不審人物」には限られない。対象区域居住者その他の関係者は誰でも継続的に監視されるのである。

⑸この法律は、監視対象が拡大されていく仕組みとなっている。まず、対象は土地だけでなく建物も対象であり、所有者だけでなく居住する住民も、区域内に職場がある勤労者も、店舗などの利用者も対象となる。

さらに、調査対象者は土地や建物の所有者や利用者「その他の関係者」も対象となる。「その他の関係者」については、何らの限定もない。誰を「その他の関係者」とするかは調査する内閣総理大臣が決めるのであり、いくらでも拡大されていく。

重要施設の中の「生活関連施設」にも限定はない。政府は今後対象の拡大があることを認めた。

4.この法律の監視対象は重要施設周辺住民だけではない。国境離島の住民も含まれる。現在、奄美、沖縄、宮古、八重山、与那国という琉球弧は急速に軍事化が進められている。政府にとってはこれが阻害されないように住民を監視し規制する法律が必要であったのである。憲法違反のこの法律は廃止されなければならない。

仲松正人 仲松正人

那覇市出身 那覇高校・名古屋大学卒。1986年弁護士登録(名古屋法律事務所)、1991年岐阜合同法律事務所に移籍、2014年度岐阜県弁護士会会長、2016年2月沖縄弁護士会に移籍し仲松正人法律事務所開設 労働事件(労働者側)を多く手がける。辺野古ドローン規制法対策弁護団 土地規制法の廃止を求める沖縄県民有志の会共同代表、土地規制法廃止アクション事務局、自由法曹団、日本労働弁護団

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