【連載】『日本の進路』の特集

沖ハブ2023シンポジウム:第2部「経済トーク 沖縄、福建、台湾の経済協力で平和と発展」

『日本の進路』(編集部)

 

■ パネリスト

陳 海騰
東和株式会社代表取締役
(中国・福建)
周 鵬邦
上海庄周企業管理顧問有限公司総経理
(中国・台湾出身)
比嘉 盛太
株式会社フューチャーネオ代表取締役
(沖縄)
司会 泉川 友樹
(一社)琉球経済戦略研究会事務局長

泉川友樹(以下、泉川) 本日は福建、台湾、そして沖縄からすばらしいパネリストの方をお招きしました。この3つの地域の経済発展、共に豊かになるというお話をしていきたいと思います。その前にお隣では、どういう経済発展の状況が起こっているのか、ビデオでご覧いただきます。広東省深圳市が数十年間でいかに劇的な経済発展を遂げたかのビデオです。(ビデオ上映)

これが私たちの隣の国、地域で起こっている現実です。それを踏まえて沖縄はどう発展していくのか、今回の経済トークで考えていきたいと思います。最初に自己紹介と手がけている事業をご紹介ください。

 

■自己紹介と事業紹介

陳海騰(以下、陳) 皆さんこんにちは。出身は中国福建省厦門です。私は沖縄を第二のふるさとだと思っています。地元の大学で日本語を専攻したあと、沖縄と神戸の大学で経済学を勉強しました。その後、NTT西日本に最初の中国人社員として入社。中国でいちばん大きい検索エンジン百度(バイドゥ)の日本社長などを歴任し、いま東和の代表取締役としてWeb3(インターネットの新たな形式、次世代の分散型インターネットの総称)の事業を全面的に担当しています。
沖縄留学のきっかけは厦門に視察に来た沖縄の方々に誘っていただいたことです。本当に沖縄はすばらしい。昔の琉球王朝との関係があり、福建省の人に対してすごく親切ですね。それがすごく印象に残っています。沖縄の恩人たちがいなければ、いまの陳海騰はないと思い、心から感謝しています。それで沖縄のためにどうやって恩返しができるのか一生懸命考えています。
恩返しの一つとして、私が百度日本社長の時には、観光で沖縄をサポートしました。中国の観光向けホームページに百度で広告を出して、中国の観光客を沖縄に連れてきました。直近では首里城火災のとき仮想通貨で寄付を募りました。仮想通貨は世界通貨で、寄付を簡単なやり方でメールを送る形でできます。当時副知事だった富川盛武先生と取り組みました。仮想通貨は悪いイメージがありますが、仮想通貨が悪いんじゃなくて、仮想通貨が悪用されているということを皆さんに知ってほしいです。
周鵬邦(以下、周) 私は台湾で生まれ、中国大陸で20年以上仕事をしています。主要な事業は食品と小売業のコンサルティング業務です。2010年から中国の大学で企業管理マネジメントの授業をもたせていただいています。1986年からアジアはもとより世界とビジネスをしています。きょうは台湾、あるいは海外とビジネスをしている視点から、皆さまと交流していきたいと思っております。
比嘉盛太(以下、比嘉) 僕はウチナーンチュです。東京の大学を卒業後イギリスの大学院に留学し、帰国と同時に楽天株式会社に入社。その後、今のフューチャー関連の親会社に勤めて、事業投資や貿易で東南アジアに行き、インドネシア、マレーシアに半年間常駐し、2年前に沖縄に戻ってからフューチャーネオという会社で代表取締役をしています。かなり沖縄に視点を絞った活動をしています。
事業はアドブルーという尿素水の製造と販売です。尿素水は沖縄のインフラを支えるディーゼル車両、トラックとかバスとかユンボとかの重機、農業トラクターに必要な次世代型のエネルギーです。それを本土から高い輸送費を払って運ぶのではなくて、地産地消ですね。沖縄県民の手でつくって、適正価格で提供していくというビジネスです。工場が稼働して1年半くらいになります。今回、こういう機会をいただいて、東アジアの経済に沖縄がどういうような立ち位置で貢献していくのかというところに非常に面白み、楽しみを感じていますので、きょうはよろしくお願いします。

■沖縄の立ち位置を考える

泉川 ありがとうございます。それぞれのご専門をお持ちの非常に魅力的なパネリストだと思います。それでは皆さんから見て、今の沖縄はどういうふうに見えているのか、あるいはこれからどうすればよりよくなるかということについて、ご提案をいただきたいと思います。まずは、比嘉さんからお願いします。
比嘉 僕はまだ32歳という若さではあるんですが、感じていることを話させていただきます。沖縄は非常に可能性があると、強く思っています。まず人口が増えています。少子高齢社会の日本で、2050年には160万人突破という数字が出されています。あとは観光ですね。17年にはハワイを抜いて観光客1000万人に到達したり、ANAハブによって那覇空港が活性化し物流量が180倍くらいに増えたりしたという事実もあり、非常に活性化している部分があります。また、台湾とか中国が隣にあって東南アジアにも近いというところで非常に可能性が高いと感じています。
ただ、沖縄の認知は世界的にどれほどあるのか。海外の友人に聞いても、ほとんどが知らないという状況でした。ハワイとか香港とかシンガポールは知っている人が多い。なぜ沖縄がまだそこまで認知度がないのかということ、東アジアの目まぐるしい成長の中で何ができるのかということを、一経営者として、県民と一緒に考えていけたらなと、すごく思っています。
泉川 沖縄は知られていないというご自身の体験を踏まえたなかで、そこからどうやって立ち上がっていくのかというところで、非常に新しい視点でとらえているなと思います。続きまして、陳さんお願いします。
 沖縄でぜひWeb3の特区とか、Web3の企業の誘致に力入れてほしいです。Web3というのは基本的にブロックチェーンを使っているから、分散型ですね。だから、地域と関係ない。東京にいても沖縄にいても同じ仕事ができる。
沖縄はもともと観光産業以外に大きな産業がないので、ぜひWeb3の産業をやってほしい。実際、昨年1月にはIMSのイベントで5000人が沖縄に集まってけっこう盛り上がりました。そういうイベントもできる。
もう一つは仮想通貨でいろいろ取り組みがあります。沖縄のサッカーチームは人気ありますね。仮想通貨で10億円集めています。私ももっと力を入れてブロックチェーン企業とか誘致して沖縄に貢献していきたいと思っています。
泉川 ハイテク技術や科学技術の力、ITなどの力を使って、新しい産業、あるいは新しい経済発展モデルというものを構築してはどうかという、たいへん貴重な提言だったと思います。それでは周さん、お願いします。
 コロナが3年続き、状況は大きく変わっています。これまでのような発展の方法を続けていいのか各国で模索が始まっており、いかにして新しいものをつくりあげていくかということが考えられております。その中に当然沖縄も視野に入っているということです。
沖縄はアジア太平洋地域の非常に重要なところに位置しています。国同士の熾烈な競争やあるいは地域間の熾烈な競争という中でどういうふうに発展していくかということを考えたときに、やはり重要なことは沖縄にしかない魅力、あるいは差別化されたものをもつということが重要です。
たとえば香港、シンガポール、台湾などは国際的な人材をひきつける独自の政策をもっています。さらにいえばシンガポールも香港も、国際貿易を盛んにするために税制面での独自の優遇政策もあります。また、物流面ですとか産業チェーン、サプライチェーンなどについても独自の政策で資源配置を行っています。こういった周りの状況がありますので、その中で沖縄がどうやって独自の差別化された道を歩めるかということに対しては、われわれは今後一緒に考えていく必要があると思います。

■沖縄の発展について提言

泉川 周りに発展するアジアの国、地域があって、彼らもより発展するためにあらゆる政策を用意している。その中で沖縄がこれらの地域とどう差別化を図り発展していくのかというご意見だったかと思います。それでは最後にまとめとしての発言を周さんからお願いします。
 今申し上げたことを具体化するためにはどうすればいいのかという話をしたいと思います。一つは政策によって、方向性を決めて誘導していくという手法です。そしてもう一つは現地の法人や企業経営者あるいは学者、専門家等々が一つの方向を決めるような集まり、アライアンスをもつことだと考えます。
より重要なのはこれらを基礎にして地域間の交流を促進するしくみ、あるいは組織をつくることです。そのうえで何が有利で何が不足しているのかを見極め、自分の優位性、あるいは不足の部分を台湾や福建の方たちと交流することで補い合う、そして新しいサービスをつくっていくことが重要だと思います。
いくつか例を挙げると、コロナになってから食品、特に冷凍食品に関しては非常にニーズが高まっています。日本は100年を超える冷凍食品の歴史をもっており技術、設備、人材、ともにそろっています。現在、台湾も中国大陸もこの産業を発展させたいと思っているんですが、設備、技術、人材いずれも不足しています。そしておいしいものを食べるということに関しては、どこの国の人でも同じように大きな需要が見込めます。
二つ目としては物流の拠点になることです。しかしこれは他地域と差別化しなければなりません。冷凍食品のコールドチェーンで物流の中心になることも考えられます。物流をさらに大きなコールドチェーンに伸ばしていく発展のモデルも考えられます。
三つ目の事例としまして、フィリピンのセブ島には英語が学べる多くの学校があります。ここには英語圏に行って勉強したくても経済的に難しい人が集まるところになっています。日本でも日本語を理解する外国人の人材が不足しています。フィリピンのモデルを沖縄で導入できないだろうかとも思います。
それから最後に申し上げたいのは、考え方のコンセプトをバージョンアップするというかチェンジする、考え方の転換が重要だということです。台湾有事が叫ばれていますが、これらの問題は1日や2日で解決できるものではありません。しかし経済活動は日々続く投資や経営の連続です。経営の成果によってもたらされた製品やサービスを消費することによって、さらに経済が発展していくというモデルになります。中国大陸や台湾あるいは日本が協力を深めることによってより新たな発展の可能性が探れるのではないかと思います。そのことによって政治的なリスクを避ける、あるいは軽減するということになろうかと思います。
 さっきも話したんですが、ブロックチェーンとかWeb3はみんな新しいですよ。そこにチャンスがあります。たとえば香港は6月1日から仮想通貨の個人取引が解禁され、免許制度が始まりました。日本が暗号資産に対してもっとよい政策をやれば、人材もそうだけど、税収もそうだけど、間違いなく世界中の人が沖縄に集まってきます。新しい産業だからチャンスがあります。古い産業について今からやっても難しいです。
泉川 ありがとうございます。新しく起こってきた産業をとらまえていくという非常に前向きな話だったと思います。最後に比嘉さん、お願いします。
比嘉 沖縄の今後の発展のために、すごく重要だと思うのが、一人ひとりの意識かなと思います。実は僕もコロナが発生する前に深圳に行く機会があったんですが、ここは大企業がやっているわけでもなく、個々の力がすごく集まって、ああいう大きなプラットホームを形成しているということを知りました。一人ひとりが次にできることは何なのかと考えることが重要なのかなと思いました。
先ほどから対話を通じて諸外国と接していくことが言われていますが、もう一歩踏み込んで何かを一緒にやることで対話することが重要だと思います。昨年ちょっと大きな貿易で失敗して、何千万という損害を出しそうになって、1カ月くらい眠れないときがあったんです。担当の中国人の方と、どうしたらこの損失を補塡できるかということをすごくやり取りし合ったことがありました。その結果、無傷ではなかったんですが、かすり傷程度の損害に抑えることができ、中国人の担当の方とも意気投合して歓喜しました。
いま台湾有事が騒がれていますが、沖縄が平和のハブとして、こういう対話を通して東アジアの平和に貢献できるんではないかと思います。これからも僕自身も一経営者として、政治だったり外交、ビジネスはもちろんのこと、諸外国との人材交流だったりとか、対話を通して貢献できればなと思っております。
泉川 沖縄に「万国津梁」という世界の懸け橋となるという言葉があります。橋というのは架かっているだけではなく、それを渡る人がいないといけません。なので、橋を架ける仕事を一生懸命やりますが、それを渡ってくださる人が沖縄に求められていると思います。魯迅は「地上にもともと道はない。歩く人が多くなればそれが道になるのだ」と言っています。これからも沖縄の人たちがアジアと交流する道を渡り橋を渡り、あるいは橋を架け交流するなかで、今回の経済トークが有益なものになれば幸いです。ありがとうございました。

本記事は『日本の進路』沖ハブ2023シンポジウム:第2部「経済トーク 沖縄、福建、台湾の経済協力で平和と発展」からの転載になります。

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