【連載】『日本の進路』の特集

沖ハブ2023シンポジウム:第3部「次世代トーク  アジア・先島・沖縄、平和・運動・未来へ」沖縄の可能性に改めて確信、若者は発信する

『日本の進路』(編集部)

 

■ パネリスト

上原 美春さん
宮古島市、高校1年生
2021年沖縄全戦没者追悼式「平和の詩」朗読
金城 龍太郎さん
石垣市、マンゴー農家
石垣市住民投票を求める会代表
神谷 美由希さん
那覇市、沖縄ゼロエミッション共同代表
司会 神谷 めぐみさん
沖縄国際大学法政研究所研究支援助手

 

司会・神谷めぐみ(以下、司会) まず宮古島から参加の上原美春さんをご紹介します。2021年6月の沖縄全戦没者追悼式で「平和の詩」、「みるく世の謳」を朗読しました。これは姪っ子の誕生に抱いた喜びと戦争を生き抜いた先人たちの思いを「みるく世ぬなうらば世や直れ」という宮古民謡の一節でつないだ唄でした。22年8月に広島で行われました「第1回ひろしま国際平和文化祭」で「ひろしまアワード」音楽部門の国内の部を受賞しました。もともと絵が大好きだった美春さん。先日は宮古島内のアートスペースで2人展を開催するなど、大変精力的に活躍しております。お話を伺いたいと思います。


上原美春(以下、上原) 「平和の詩」を書こうと思ったきっかけは、17年の沖縄全戦没者追悼式で姉が「平和の詩」を朗読して、その練習の段階からずっとそばで見守っていました。強い憧れを感じて、「私もこの場で発表したい」と思ったので、朗読しようと詩を書きました。(拍手)
司会 周囲の反応はどうでしたか。
上原 みんな、喜んでくれましたね、まあ賛否両論あったんですけど。友達とか親戚とか、おばあちゃんがごちそう作ってくれて喜んでくれたし(笑)、とってもうれしい反応をいただきました。
「武器を置く」ことを「強さと呼びたい」(上原美春)
司会 美春さんの詩や絵は多くの人に感動を与えたということで、大変高く評価されています。この「みるく世」の翌年に「Unarmed(アンアームド、非武装)」という作品を発表しております。これはどのような気持ちで書かれた詩ですか。
上原 反戦の思いを込めたのはもちろんなんですけど、日本は世界的に見ても自殺率が高い。いじめやDV、学校や会社の人間関係っていう争いのなかで、苦しんでいる人たちがたくさんいる。ニュースで見た「どちらも武器を置きなさい」と言っている女性が印象的で、プライドや「こうしなくてはいけない」という固定観念という「武器」を置いて「逃げてもいいんだよ」という、心の平穏がなければ平和ではないと思うのです。そういう思いを込めたのと、私自身も許す気持ちをもちたかったという思いを込めました。
司会 この「武器を置く」ことを「強さと呼びたい」というフレーズを選んだということが大変印象的です。あれはルアンダのことだと述べていましたね。
上原 1994年にルアンダで起こった「ルアンダ虐殺」というのは100日間で80万人の命が亡くなっている。一つの国の中の二つの民族間の争いなんですけど、結局、和解して終結した争いで、ルアンダの人が口をそろえて「憎しみからは何も生まない」と言うんですね。その後、ルアンダは「アフリカの奇跡」と呼ばれるくらいの発展を遂げている。女性の社会進出も国会(議員)の7割が女性であったりする。私が「Unarmed」で訴えた「非武装は夢物語じゃないんだ」と私に根拠を与えてくれた物語です。
司会 ありがとうございます。大変素晴らしいです。(拍手)
美春さんは今年つくった「うむい」という詩があるそうですね。これは「絵を描きたい」という言葉が入っていると伺っています。この詩について教えてください。
上原 いちばん初めにつくった「みるく世の謳」は沖縄戦に目を向けた詩なんですけど、そして翌年つくった「Unarmed」は「武器を置く」っていう非武装とかに目を向けていた。今回の「うむい」は世界に視野を広げた。その視野を広げてくれたのがたまたま(クラシック音楽歌手の)岡本知高さんのコンサートを聴きに行ったときに出合った美空ひばりさんが広島平和音楽祭で歌った「一本の鉛筆」という曲がもう衝撃的で。岡本知高さんは、歌うときに願っていることはやっぱり「平和を願う心が大事だ」と言っていて、「じゃあ、私には何ができるだろう」と思っていて、いちばん得意なのは絵かなぁと思って、絵を描くことで私の思いを伝えるっていう……。
司会 ありがとうございます。
美春さんの詩には世界に平和や愛を届ける力があると思って、楽しみにしております。美春さんは飛行機の時間があるため途中で席を外させていただきます。美春さんのご報告に感謝を込めて皆さまからの盛大な拍手をお願いいたします。(拍手)
今後も美春さんのますますのご活躍を期待しております。
続きまして、「石垣市住民投票を求める会」代表の金城龍太郎さんをご紹介いたします。
金城龍太郎さんは1990年生まれで、八重山高校を卒業後、アメリカのアーカンソー州立大学を卒業して、2014年に石垣島に戻り、両親と共にマンゴー農家をしております。18年11月から陸上自衛隊配備計画の賛否を問う「石垣市住民投票を求める会」代表として活動しております。
それでは金城さん、お願いします。
金城龍太郎(以下、金城) こんにちは。金城龍太郎と申します。
美春さん、すごすぎて、すごいですね。高校1年生でこの場に立って堂々としゃべっている。こんな近くでこの可能性を見られて、本当に幸せです。もう、うっとりとしてしまいました。
私は石垣で両親のやっているマンゴー農家の後継ぎです。石垣のちょうどど真ん中の於茂登岳の麓の地域が農園です。僕たちの農園の近くに陸上自衛隊の駐屯地が開設しました。この配備場所をめぐっての住民投票を18年に請求して、なかなか実現しないまま状況が進んでしまっています。
今日はよろしくお願いします。
司会 続きまして、「ゼロエミッションラボ沖縄」の神谷美由希さんです。
神谷美由希(以下、美由希) 神谷美由希と申します。
私はアメリカ留学から帰ってきて、今の日本がこのままでは大変になると思って、いろいろな問題について考えるようになりました。次世代に地球を残すために、地球温暖化(対策)の問題をやり始めました。去年くらいから「台湾有事」の問題が沖縄で話題になってきた。韓国の大学院に行こうかと考えていたんですが、今は沖縄にいて平和の問題に立ち向かって、沖縄、日本を守らないといけないという思いで、平和外交の活動に去年から力を入れています。
司会 最初に、1部、2部を聞いて何か感想とかご質問ありますでしょうか。
金城 すごく勉強することばかりで、何でこっちに自分が座っているかも分からないぐらいです。とくに今の沖縄を取り巻く平和の問題とか、経済のこととか聞いていると、ものすごく沖縄に可能性があるんだなというのを感じて、結構ワクワクしています。早くいいマンゴーを作りに帰らないといけないという焦りも(笑)、すごく刺激されました。(拍手)
司会 では、美由希さん。
美由希 私も勉強になることがすごくたくさんありました。
羽場先生とは去年の8月のシンポジウムでお会いして、いろいろお話しさせていただきました。今日のお話にも出てきた全欧州会議(全欧安全保障協力会議、CSCE)のお話で、若者とか市民が最初のきっかけをつくって欧州の平和の基礎がつくられたというお話を聞いています。そのあたり、市民とか若者がどう動いて大きな国と国が手をつなぐところまでいったのかというお話を詳しくお聞きしたいです。
司会 羽場先生、短くお願いします。
羽場 ヨーロッパの全欧安保協力会議っていうのはヘルシンキから始まったんです。
若者たちが、このままでいいのか、冷戦のなかで武器を取ってお互いに緊張関係を高めるのではなくて、東と西がお互いに顔を突き合わせて話し合うなかでお互い問題を解決していこう、それを中立国で始めようと。こうして始まったのがCSCEなんですね。
それが15年後には冷戦を終結させるほどの力になっていった。こうしたことを考えるとやっぱりNGOの力もすごい。沖縄で見られる素晴らしい若者たちの交流と活動の力というのは本当に優れたものだと思います。
「栄えた与那国」(金城)
司会 金城さんに教えていただきたいんですけど、両親が与那国出身で、台湾との交流もあると聞きました。そのことについて紹介いただけますか。
金城 はい。僕、こんな顔をしているんですけど、おやじとおふくろ、共に与那国出身でございます。(笑)「与那国は昔、密貿易で栄えたんだよ」という話を聞きながら、もっとすごいのはひいオジー、オバー(曽祖父母)なんかは「札束を枕にして寝ていたんだよ」っていう夢のあるような話を聞かされて育ちました。おやじの本家は「どなん」、与那国の酒を造っている酒蔵です。そういった台湾とのいろいろの交流の関係も聞きながら、そしてまた今育てているマンゴーも台湾の方が石垣にパインなどとともに持ってきた技術だったのです。発祥は台湾とか、海や言葉を超えたところから、今ある産業への影響もものすごく大きいなぁと感じながら、ハイ、畑でがんばっております。
司会 美由希さんは社会運動で活動されていますね。
美由希 今、平和活動のなかで活動している一つに「台湾有事を起こさせない対話プロジェクト」っていうものがありまして、台湾の専門家の方をお呼びして、台湾の専門家と沖縄側とでシンポジウムを何回か行っています。台湾の専門家、ジャーナリストや大学の先生などが台湾に帰られたら、台湾の大手新聞にもシンポジウムの話や、他の聞いた話とかを書いてくださったりして、広がりがどんどん進められています。
もう一つ、県民の平和集会の実行委員もしています。どんどん広がりを見せています。実行委員の段階では2月のとき若手は30代の仲間たちだけだったんですが、5月には20代の仲間も増えていって、その20代の子が大学の講義のなかで、平和集会の話をすることになって、そこからまた興味をもってくれた大学生もいるっていう話もあって、それは結構希望がもてる話だなぁと思っています。
司会 はい。ありがとうございます。
お二人とも交流を通じて、多様性豊かな関係を築いていて、平和の懸け橋となるような活動をされていて、大変素晴らしいと思います。
お二人に最後の質問は沖縄の「未来予想図」や将来像について金城さんと神谷さんのイメージをお聞かせください。
また、沖縄の理想とする将来に向けてどういったことが必要だと思いますか。お願いします。
「ゆいまーる」、海を超えて(金城)
金城 今日のシンポジウムを聞いて、沖縄は意外に、何と言いますか、選択する権利がないというか、地域としての主権、主導権がないのかなと。経済的発展でも、また、平和外交的にもなかなか進んでいない。そういった選択肢がないようなシステム、枠、仕組みができてしまっているんじゃないかとすごく感じました。
これを我部先生が言っていたように、何というか、政治的に無人島というか、そういうニュアンスで言ってましたよね。なかなか声が届かない、日本にいないような。
だから、政治的なところでは今はもしかしたら厳しいかもしれない。でも、先ほどの経済のシンポを聞くと、沖縄は経済からもすごく発展していける、また、美春さんのような文化の力もすごい影響をもって、外に外に発信していける。そういったところが最終的に政治にも影響を与えられるんじゃないかと思って……はい、可能性あるなと。
で、沖縄でも「ゆいまーる」って言うじゃないですか。たぶん、「ゆい」と「まーる」がカギになってくると思うんですよ。僕たち、今はちっちゃな地域で「ゆいまーる」しながら農業やっているんですよ。この「ゆいまーる」、海を超えて、ちょっと隣の国と「ゆいまーる」したいとやりながら、つながりを広げていく。また、「まーる」って言葉は、石垣では「超」と。何て言うんですか……「まーる、疲れた」っていう使い方するんですよ。「でーじ、疲れた」と同じような使われ方する。「まーる、すごい」とか。「まーるゆい」、「超ゆい」あるいは「でーじゆい」。これからは「でーじゆい」と「ゆいまーる」でなんか……いけないですかね。(笑、拍手)
「同世代で連帯、それを沖縄を中心に」(神谷美由希)
司会 斬新なアイデアで素晴らしいと思います。
では美由希さん、お願いします。
美由希 羽場先生の紹介で3月に韓国に行ったんですが、そのときに沖縄の話を活動家の団体の方々にしたらすごく興味もってくれて、これから一緒に連帯していきたいねという話をしました。
やはり、歴史的に植民地的なところだったり、似ているところがあったり、アメリカの基地問題で悩まされているところなどもすごく似ているところがあって、共感してもらいやすいんだなぁと感じました。
数日前も韓国で出会った方が沖縄に来て、その方は慰安婦問題を研究している方なんですが、一緒に連帯していきたいと言ってくださいました。韓国の方々はすごく沖縄に対して親近感というか、心がすごく近いなぁと感じています。
お互いの社会問題とか、いろんな問題を共有し合って、同世代で連帯し合える、それを沖縄を中心にやっていきたい。これからもっともっと沖縄が盛り上がるように自分もがんばっていきたいと思っています。(拍手)
司会 最後に羽場先生にも一言、お願いいたします。
羽場 もう本当に感動しながら聞いていました。私、「本土」から来て、沖縄の若者たちが政治にも大変関心をもち、文化や経済や、あるいは美春さんのように詩や絵画で発信するというのは素晴らしいことだなと思うんですね。
実は東京でも平和の問題を衆議院会館でやったりすると300人くらいの人が集まるんですけど、ほとんどが70代以上だったりする。沖縄の方から発信していただいて、日本や韓国、中国の若者を鼓舞していただけるようなエネルギーをもっていらっしゃると思いました。本当、沖縄の若者、素晴らしいです。(拍手)
司会 ありがとうございました。
パネリストの皆さん、ありがとうございました。(拍手)

本記事は『日本の進路』沖ハブ2023シンポジウム:第3部「次世代トーク  アジア・先島・沖縄、平和・運動・未来へ」からの転載になります。

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

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