中国の「ロシアとの同盟復活」はない―拭えぬ相互不信と対米協調路線の継続―
国際・対米関係が優先課題
消息筋によると、共産党は3月5日の全人代開幕直前、幹部党員に次の「3つの指示」を出した。
①ロシア、ウクライナのどちらにもつかず中間の立場をとる
②対ロ経済制裁を求められても応じない
③対米関係改善と経済貿易の推進を図る
これを読めば、中国にとっては対米関係改善が依然として外交の最重要課題と見ていることが分かる。中国にとり対ロ関係は、欧米との厚い経済関係と対ロ支援の価値とのバランスにある。同時に、外交と内政の基本スタンスは、米中対立が激化しても中国経済を損ねないようハンドリングすることにある。
中国内政との関係にも触れよう。秋の20回党大会で総書記3期目を目指す習近平国家主席は、「共同富裕」の実現に向けて2035年に「社会主義現代化を基本的に実現」し、建国100年の2049年には、「中華民族の偉大な復興」と「世界一流の社会主義強国」の実現を目指す二段構えの目標を設定している。
中国指導部は、「ゼロコロナ」政策を維持して最大の経済都市、上海を都市封鎖した。ウクライナ問題で、経済発展の足を引っ張られると5%台の成長も危うい。対米関係改善の順位が高い理由は、経済発展を順調に進め、内政の安定を図ることにある。
中国は対ロ制裁に与していないから「制裁破り」も存在しない。ただ上記のような基本姿勢に沿えば、軍事物資はロシアに供与しないだろう。また西側との経済関係を損ね、それが国内経済に跳ね返る恐れがあるような「制裁破り」はしないと思われる。
中国の力の源泉は、軍事力ではなく経済力にある。一方のロシアの力の源泉は、エネルギーと、核戦力を含む軍事力と対照的だ。反米戦略でいくら協力しても両国の体質と国家目標の差は大きい。同盟復活の可能性は低い。
共同通信客員論説委員。1972年共同通信社入社、香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員などを経て、拓殖大客員教授、桜美林大非常勤講師などを歴任。専門は東アジア国際政治。著書に「中国と台湾 対立と共存の両岸関係」「尖閣諸島問題 領土ナショナリズムの魔力」「米中冷戦の落とし穴」など。「21世紀中国総研」で「海峡両岸論」http://www.21ccs.jp/ryougan_okada/index.html を連載中。