【連載】週刊 鳥越俊太郎のイチオシ速報!!

2023年9月11日 今週の「鷲の目」

鳥越俊太郎

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今週はニュースが盛りだくさんです。まあ、一番大きなニュースになったのは皆さん、よくご存知、ジャニーズ性加害事件の新展開、東山紀之さんらの記者会見の模様ですね。
それから行きたいところですが、私の心の残ったいくつかのニュースのご紹介と私の意見・考え方も含めてボチボチ行きますね。
とは言ったものの私は明日9日の土曜日京都に行かねばなりません。日曜日の午後遅くに帰宅するはずですので、この「鷲の目」の原稿を書く時間がありません。

今日の金曜日の午後、これを書き始めました。
あぁ、京都はですね、実は9日に京都大学合唱団90周年記念演奏会が京都で開かれます。
その後に記念同窓会が開かれ、その席で私は講演を頼まれています。
勿論私が1958年入団、65年卒団の卒団生だからです。学生時代、歌ってました。
そういう背景もあるからでしょうね、この記事が目に止まり、皆さんにどうしてもご紹介したいなあ、と思いました。

東京新聞の9月6日夕刊。一面のトップ記事です。タイトルからご紹介いたします。
「ヒロシマ ナガサキ 朗読劇38年」「時流に消える 反戦の語り」。
広島や長崎の原爆被爆者の手記や遺稿などを基にした「この子たちの夏」という朗読劇の火が消えるという、少しいや大いに悲しい話。こんなストーリーを夕刊のトップ記事に持ってくる辺りは、さすが東京新聞ですね。

これは、毎日や朝日ではありませんね、読売や産経新聞、日経では絶対にありません。と、考えてくると東京新聞は名古屋の中日新聞社が出している新聞ですが、日本の新聞社ではとてもユニークな新聞社ということになります。

後でご紹介しますが、東山紀之さんらの4時間10分に及ぶ記者会見でも東京新聞の名物記者、望月衣塑子さんのとってもユニークな爆弾発言がありました。
4分余に及びネットでは否定的に取り上げられていますが、テレビや新聞のニュースではさすがにこの部分は取り上げてません。

中継を聞いていた人には分かったかもしれません。
私はネットニュースで見たのですが、まあ彼女らしいわあ、の1発でしたね。
これも東京新聞ならではです。
本題に戻って朗読劇が消える、という話の記事、その前文がこんな感じです。

「戦後78年が過ぎ、プロの役者による戦争や被曝の体験を語り継ぐ活動が先細りしている。
広島、長崎の被爆者の手記や遺稿などを基にした朗読劇『この子たちの夏 1945・ヒロシマ ナガサキ』を長年手がけてきた演劇制作の地人会新社(東京・新宿、渡辺江美代表)が8月6日の東京都世田谷区での公演終了をもって活動を停止した。『芝居づくりが時代に合わなくなってきた』としている」(山岸利行)。

写真はその朗読劇「この子たちの夏」の舞台風景(東京新聞、田中亜紀撮影)

ちょっと悲しいですね。
時と共に世の中、世相は変わっていくんですね。ヒロシマとナガサキの話が消えていくんです。
「この子たちの夏」は文学座出身の演出家、木村光一さんが1985年にスタート、全国約400市町村、800回以上の公演で戦争の悲惨さ、原爆のむごさなどを伝え続けてきた。

しかし、地道に純粋な芝居づくりを目指してきたこのやり方は運営が難しくなってきた。
渡辺代表は「色々な方の思いがあり、完全にやめてしまっていいのか」との複雑な思いがあり、「この子たちの夏」の今後の上演には「志を継いでくれる方がいれば」と望みをつないでいる。
演劇評論家の江原吉博さんは東京新聞の記事のコメントとして「声は文字や写真などと異なり、心に直接届き感情に訴える。

朗読劇での俳優たちの肉声は被災者たちの痛苦や悲嘆を迫真的に伝えて、聞く者の心に強い共感と平和への決意を生む。
そんな貴重な企てがまた一つ消える。なんとか語り継ぐ方策はないか。
知恵を出し合ってみる価値はあるだろう」との気持ちを表している。
写真で見るように出演者の高齢化が活動終了の原因のようだ。
高齢化でさまざまな企てが消えていく。悲しいね。(ここまでは9月8日金曜日夜までに書いたもの)
ここからは9月10日日曜日午後4時47分に書いています。
締め切りは今日の夜中までですが、ちょっと体が保ちませんね。
実は昨日の土曜日9月9日。京都で京大合唱団の90周年記念演奏会があり、その直後に行われた京大合唱団同窓会で私は40分の記念講演をしてきました。その後の記念懇親会にも出て、久しぶりに会う顔ぶれと喜びを共にしました。嬉しかったなあ。親しかった先輩や後輩たち。

そして現在の京大合唱団の諸君たち。
若者に歳を聞いてびっくり19歳。若えなあ。いやいや待てよ。
自分が京大合唱団に入団した時は18歳の少年だったな。そうだった、そういうこともあったね。
などと自分の人生を振り返り昨夜は興奮のうちに京都のホテルに泊まりました。

今日10日日曜日に帰宅しました。今午後5時頃です。
原稿を書き始めました。さすがに疲れ果てています。
しかし、今夜中にはなんとかこの原稿を書き上げなければなりません。
ま、すいません、グチグチとつまらんことを書いて・・・・

おそらく今週の最大のニュースはジャニーズ事務所の「せいかがい」の問題ですよね。
実はこのパソコンで「せいかがい」と打ち込んで最初に出てくるのは「成果街」です。
どこまで「せいかがい」のキーを叩いても出てきません。

このアップルの常識として「性加害」という文字は用意されていなかったことと、もう一つは私が「性加害」という単語を使ったことがなかったからだと思います。
これまでの世間の常識では「性加害」といえば男から女性に対する暴力行為を意味していて、男が男にも性的暴力を加えることがあるということに社会全体にピンときていなかったことが前提としてあるんだと思うんですね。
私のぼんやりとした記憶ではジャニーズのタレントだった北公次君がなんかそういうこと言ってたようなぼんやりした記憶がある。

週刊文春がジャニーズの性加害問題の告発をして裁判問題になったというが、私の記憶には全くい。この問題を日本のメディア、特にテレビは全くニュースまたは特集として取り上げなかったという。今、スマホで調べるとジャニーズのタレントグループ「フォーリーブス」の一人、北公次氏がジャニーズ事務所の社長、ジャニー喜多川氏から受けた性被害を赤裸々に綴った告白本を出版。
翌年にはビデオでも被害を訴えているという。
解散から10年後の1988年のことだという。
ちょっと待って。
1988年といえば私はまだ『サンデー毎日』の編集長の時代。
いろんなニュースを追いかけていた頃だ。
その私が特集すべきテーマとして見ていなかったことは何を意味しているんだろう。

これは想像だけど私もこの話を目や耳に入れたことはあったんだろうな?だけどサンデー毎日で取り上げないだけでなくその後私がキャスターを務めた「ザ・スクープ」でも取り上げなかった。
編集会議で特集のテーマとして提案されたこともない。
その記憶がない。どうしてかな?と思う。「性加害」という言葉は当時なかった。
北公次とジャニーズ氏との関係は当時は恐らくだけど、具体的には考えることはできず、いずれにしろごく特殊な関係でニュース価値があるものとは考えられていなかったと思う。

タレントの出演を巡るテレビ局とジャニーズ事務所との関係から発生する「忖度」なる言葉は我々ニュース追求族には全く関係ないものだった。

しかし、今になってみるとジャニーズ事務所の社長でタレントの育成に関係が深かった人物とまだ年若いタレントの卵との「性加害」は多くの被害者を産んでいる。私たちに当時なぜその追及が出来なかったのか??
私に今その答えは出せないが、おそらくこうした「性加害」つまり男性対女性だけではなく男性対男性の話はこの社会のどこかに潜んでいるのだろう。
それを暴き伝えることはメディアの課題だと思う。

みなさん、頑張ってくれ!!2023/9/11日の「鷲の目」
鳥越 俊太郎記

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鳥越俊太郎 鳥越俊太郎

1940年3月13日生まれ。福岡県出身。京都大学卒業後、毎日新聞社に入社。大阪本社社会部、東京本社社会部、テヘラン特派員、『サンデー毎日』編集長を経て、同社を退職。1989年より活動の場をテレビに移し、「ザ・スクープ」キャスターやコメンテーターとして活躍。山あり谷ありの取材生活を経て辿りついた肩書は“ニュースの職人”。2005年、大腸がん4期発覚。その後も肺や肝臓への転移が見つかり、4度の手術を受ける。以来、がん患者やその家族を対象とした講演活動を積極的に行っている。2010年よりスポーツジムにも通うなど、新境地を開拓中。

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