【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/100年前の大虐殺事件

植草一秀

いまからちょうど100年前の1923年9月1日に関東大震災が発生し、朝鮮人・中国人虐殺事件が起きた。
未曾有の災害と流言飛語によってパニックが生み出され、多くの人が朝鮮人狩りに狂奔した。
殺された人の数は6000人前後。

しかし、実数ははるかに多いと見られている。

2011年3月11日に東日本大震災が起きた。
この地震で東電福島第一原子力発電所は過酷事故を引き起こした。
原子炉核燃料は溶融=メルトダウンした。

しかし、原子炉メルトダウンの事実は長きにわたって隠ぺいされた。
放射能汚染水は海洋に垂れ流された。
溶け落ちた燃料デブリがいまどこにあるのかも定かでない。

その後、燃料デブリに接触した放射能汚染水がタンクに貯められてきた。
その汚染水が処理されて海洋投棄され始めた。
海洋投棄に多くの人々が反対している。

反対理由の中心は処理後汚染水の海洋投棄を東電に任せることはできないというもの。
東電はこれまで数々の問題で改ざん・隠ぺいを繰り返してきた。
処理後汚染水の海洋投棄で類似した問題が発生しないと言い切れない。
外部から完全に監視可能な形態が採られる必要がある。

処理後汚染水の海洋投棄に反対している者の多くは日本国民。
中国や韓国野党、香港なども強く反対しているが日本の多くの識者、市民も反対している。

ところが、日本の報道は処理後汚染水海洋投棄に反対する人々の反対理由を一切伝えない。
トリチウム濃度を基準値以下に薄めているのだから問題はない。
処理後汚染水を海洋投棄する「科学的根拠」はトリチウム濃度の低さ。
異論を唱える者の主張は「科学的根拠に基づいていない」の一点張り。

「異論を唱えること」=「科学的根拠に基づかない」という決めつけですべての報道を展開する。

これはNHKも同じ。
中国政府や中国の人々が処理後汚染水海洋投棄に反対することを、「歪んだ主張」、「異常な行動」として伝えている。
これでは相互理解も相互尊重も相互信頼も生まれるわけがない。
「中国人はおかしい」、「中国人が悪い」とのイメージが、こうした偏向報道によって刷り込まれる。

政府とメディアが結託して中国の人々に対するイメージを悪化させるキャンペーンを展開しているようにしか見えない。

100年前の震災発生時。

「不逞鮮人が井戸に毒を入れた」
「日本人を皆殺しにしようと火を付けた」
との流言飛語が流布されて何の罪もない朝鮮人が多数虐殺された。

「(1923年)9月3日午前8時15分了解」の記述とともに内務省警保局長名で各地方長官宛てに

「東京付近の震災を利用し、朝鮮人は各地に放火し、不逞の目的を遂行せんとし、現に東京市内に於て爆弾を所持し、石油を注ぎて放火するものあり。
既に東京府下には一部戒厳令を施行したるが故に、各地に於て充分周密なる視察を加へ、鮮人の行動に対しては厳密なる取締を加へられたし。」

との「官製デマ」が打電された。

8月31日午後6時15分、文京区の文京シビックホールにおいて、

「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年犠牲者追悼大会」
https://100nen-jikkoui.blogspot.com/
が開催される。

8月25日の会見で実行委員会事務局長の藤田高景氏は
「日本政府は虐殺を謝罪して、アジアの平和と友好のために出直すべきだ」と強調。

また、追悼行事の神奈川実行委員会代表のる山本すみ子氏は
「虐殺はなかったとする歴史修正主義にどう立ち向かうかを考えなければならない」と語った。

9月1日には森達也監督映画『福田村事件』が公開される。
https://www.fukudamura1923.jp/

事件の本質は遠い過去の物語ではない。
現代にそのまま通じる問題が横たわる。
歴史を直視して考えることが必要だ。

 

※なお、本記事は、植草一秀の『知られざる真実』2023年8月31日(木)
100年前の大虐殺事件: 植草一秀の『知られざる真実』 (cocolog-nifty.com)からの転載であることをお断りします。

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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