書評:宮川路子『人生100年の健康づくりに医師がすすめる 最強の水素術』―究極の治療法・健康法としての「水素療法」(上) 島崎隆

島崎隆

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※編集部注:この記事は、季報『唯物論研究』第64号(2023年8月)に掲載した記事を、書評として改題の上で、転載したものです。
『最強の水素術』の紹介ページ:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784782905982
著者の宮川路子医師のブログ「こころと身体の栄養療法」:https://eiyouryohou.com/

私は23歳の若いころから、いままで40回以上断食を試みてきた。平均3日の水だけの本断食を中心に、ほぼ1年に1回以上続けてきたが、こうして内臓を休ませ、体の老廃物や疲労を取って、そこで普段の食生活などを反省して、また一年間の健康な生活を送るというものであった。この方法と意義については拙論*に譲るとして、私はいま別の方法を発見したような思いでいる。そしてそれは、種々のガンなど、現代の多様な病気を治療するのに役立つように思えるが、それは予想もしないものだ。それは「水素療法」といわれるものであり、それに加えるに、ビタミンⅭなどいくつかのビタミンやミネラルを摂取する方法である。とはいえ、この方法は断食と同様に、多くの偏見にさらされているものとなっている。だがいまや、世界的に注目され、多くの研究文献が存在している。私がここで取り上げるのは、水素療法の本格的な著作、宮川路子『最強の水素術』(サンライズ、2023年)である。著者の宮川博士は、分子総合療法医学の考えにもとづき、開業医の仕事とともに、法政大学の人間環境学部で教育・研究をおこなっている。本書は370頁以上の大著であり、巻末に多くの外国語文献が掲載される専門的な著作であるが、それでも本文は「ですます調」で書かれ、本人のお人柄を反映してか、わかりやすい、かみ砕いた筆致で展開されている。
*わかりやすいものとして、拙論「断食・小食は体内環境を変える」、『aromatopia』第155号、2019年所収を参照。

極小の原子の水素というのは、どこにでもあるもので副作用はゼロであり、その産物は酸素と結合して水となるだけである。この何の変哲もない物質が身心の不調を治し、難病や生活習慣病を治していくということは、いかに専門家が主張しているとしても、多くの人は信じられないというだろう。それはただの平凡な物質ではないかと。本書は、宮川氏自身の豊富な治療体験はもちろん、「治った!」という何人かの医師の体験も取り上げている。本書には、豊富な患者自身の体験談が掲載され、おおいに説得的である。私はここに、断食療法と水素療法の類似点を強く感ずる。両方とも、基本的に金のかからないもの(断食は水のみ、水素療法は水素のみ)が材料であり、断食は、医者からさえも多くの先入観、偏見をこうむるが、他方この水素療法も同様だからである。水素療法は、斬新な療法として、世界的にいま注目されている。だが、医療の専門家ですら断食のメカニズムと効能に無知であるように、水素療法に関しても、世界的にあれほど豊富な研究文献がありながら、同様に彼らの多くは偏見から免れていないのである。そして単に類似点があるだけではなく、宮川氏は事実、16時間断食を推奨するのである(122頁)。

さて一般論はこのくらいにして、水素療法の具体的内容を紹介しよう。そのさい私は、すでに一部言及してしまったが、自分の体験を述べて、また断食との比較をおこない、コロナ、ワクチン後遺症への対応にも関連付け、さらに医者たちの偏見にも注意を向けたい。

 

水素療法とは、水素を大量に連続的に、おもに肺から血管に取り込み、心臓から血流を全身に行きわたらせるものである(136頁)。特殊な器具を使って水素を発生させ、カニューレといわれるチューブによって鼻から水素を吸入するのが基本的とされる。水素を吸収する方法は多様であり、さらに水素点滴、水素局所注入、水素点眼薬、飲用の水素水、水素ゼリー、携帯用の水素サプリメント、水素風呂などである。だが第一に重要なのは水素吸入であり、これがもっとも効果的だとされる。私自身はこの吸入と、水素の粉などを入浴直前に風呂に入れて、温泉のようにして使っている(「水素風呂」と呼びならわす)。たしかにこの水素風呂は、疲れが取れ、冬でも朝まで体が暖かいという実感がある。それでも、従来の温泉の素などよりもはるかに効果的である。水素療法は悪玉の活性酸素を除去するのが主目的であり、私の体験によれば、激しい運動後でも、意外と疲れが出ないし、不思議と楽なのだ。水素は活性酸素と結合して、水になり、それで除去されるのであり、何か副作用は出てこない。水素療法は副作用が出ないというすぐれた特徴があり、安心である。

「はじめに」を読むと、この療法の概略がわかりやすく書いてある。そこで、「私の信念は、『患者さんがクリニックに一度しか受診しないで済むようにする』ということです」と驚くべきことが書いてある。最初にしっかり二時間くらいかけて水素を中心とした療法の原理と方法を説明して、あとは患者さん自身が自宅で健康になるための行動をとるだけだという。「クリニックは“通う”ところであってはいけません」という。では困ったことがあったらどうするのか。メイルで質問すれば、その答えがもらえるのだ。実際私は、いま緊急の診察を必要としていないので、直接の診察はまだやってもらっていないが、自分の症状や各種の器械やグッズについてアドバイスを何回も(おそらく10回くらい)してもらっている。そのつど恐縮しているが、どういう商品がいいかまで教えてもらっている。そこから直接、送料無料で送ってもらうこともある。

氏によれば、「全国超百寿者研究」に従って、「慢性炎症を抑えることが健康長寿の達成に重要である」と指摘する(18頁)。「百寿者」とは、100歳以上の長寿者のことである。慢性炎症は体の各部で発生し、高血圧、動脈硬化、肥満、ガン、喘息、腎臓病、緑内障、うつ病、しみ・しわ、などの多くの病気や不調の原因となる。実は私自身、老齢になって緑内障になり、いまもほぼ毎日点眼薬をつけている。緑内障は治らないと医者からもいわれており、点眼薬で悪化を防ぐだけだという。放置すると視界が狭まっていき、やがて失明に至るという難病なのだ。しかし他院の事例だが、水素吸入を始めて、わずか一月で視野欠損がほとんどなくなり、本人はもちろん、かかりつけの医師も驚いたという(226頁)。症状が軽かったのかもしれない。氏によれば、水素療法が眼内の血流を改善し、活性酸素の除去によって視神経の障害を除いたのだろうということである。実際、私も何種類もの飛蚊症で視界がすっきりせず、困っていたが、水素療法後一月もたたないうちに、視野がかなりすっきりしてきたと実感している。一緒に吸入などやっていた妻も飛蚊症がなくなったとびっくりしている。

(下)に続く

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島崎隆 島崎隆

一橋大学経済学部を卒業ののち、群馬県で高校教諭。現在、一橋大学社会学部名誉教授、社会学博士。ヘーゲル、マルクスらのドイツ哲学に関心をもってきたが、日本の学問研究には「哲学」が不足しているという立場から、多様な問題領域を考えてきた。著書として以下のものがある。『ヘーゲル弁証法と近代認識』『ヘーゲル用語事典』『対話の哲学ー議論・レトリック・弁証法』『ポスト・マルクス主義の思想と方法』『ウィーン発の哲学ー文化・教育・思想』『現代を読むための哲学ー宗教・文化・環境・生命・教育』『エコマルクス主義』『《オーストリア哲学》の独自性と哲学者群像』。

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