ジャニーズ性加害問題の〝元凶〞 芸能界〝1000億円企業〞の錬金術

紙の爆弾編集部

メリー氏のインタビューを掲載した週刊文春2015129日号

元凶は〝ジャニーズの女帝〞
 ジャニーズ事務所創業者・ジャニー喜多川氏からの性被害を訴える元タレントに対し聞き取り調査をした国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会のメンバーが、84日に日本記者クラブで会見を開き、「ジャニーズ事務所のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く、憂慮すべき疑惑が明らかになった」
と報告。改めて、藤島ジュリー景子社長の責任が問われている。

一方で、芸能関係者の間からは、すべての責任はジャニーズ事務所の実質的経営者で3年前に死去した故・メリー喜多川副社長にあるという声が上がっている。

「生前のメリー氏は副社長という肩書きでも、事実上、彼女が事務所の経営を仕切っていた。まさに“ジャニーズの女帝”です。実弟であるジャニー社長も逆らえなかった。1999年に週刊文春がジャニー氏の“少年愛”についてキャンペーン報道した時には、メリー氏はジャニー氏に対し、『しばらくは送られてくる写真(事務所への応募写真)を見て我慢しなさい』と釘を刺しています」(ベテランの芸能ライター)

メリー氏は1950年代後半に、東京の43丁目にカウンターバーを開業。その店の常連客だった東京新聞記者で、のちに作家に転向した藤島泰輔氏と結婚し、長女であるジュリー景子氏が誕生した。また1962年に弟がジャニーズ事務所を設立すると、バーを閉店して経理を担当するようになった。

「タレントの発掘・プロデュースはジャニーさんが担当。事務所の経営はメリーさん。彼女はジャニーさんと違い社交的で、森光子やTBSの石井ふく子プロデューサーらに接近してタレントを売り込み、“日テレのドン”こと氏家齋一郎氏にも深く食い込んでいた。ジャニタレが中心の、8月の『24時間テレビ愛は地球を救う』がその賜物です」(大手プロ役員)

前出の芸能ライターは、メリー氏はメディア対策にも長けていたと、こう語る。

「メリー氏が表沙汰になることを恐れたのは、タレントのスキャンダルよりも、弟の“ホモセクハラ”だった。過去にいくつかのメディアに報じられたものの、大手が報道しないよう力で握り潰している。それでも、週刊文春のキャンペーン報道だけは別だった。最高裁でセクハラ行為が認定されましたからね」

しかし、それでもタレントへの性加害が止むことはなかった。

メリー氏についていえば、SMAPをめぐる逸話が有名だ。結成当初、メンバーを見たメリー氏は「この子たちは売れない」と言い放ち、当時、デスクだった飯島三智氏にマネジャーを担当させた。すると飯島氏は才能をいかんなく発揮。SMAPを国民的アイドルスターに育て上げた。その手腕をジャニー氏も高く評価。「後継者はジュリー景子か飯島かと派閥争いの行方が一時、注目されたのはそのためだった。

「すると20151月、メリーさんが週刊文春の記者を呼び、後継者は娘のジュリーと断言した。その場に飯島さんも同席させ『嫌なら出ていってもいいのよ』とまで言ってみせ、派閥争い問題に終止符を打ったんです。実際に翌年、彼女は事務所を追われるように退社しています」(スポーツ紙記者)

ジャニーズは20197月のジャニー氏死去にともない、ジュリー氏が社長に就任し、同時に副社長だったメリー氏が代表取締役会長となり、翌年9月に名誉会長に退いた。

「それから約1年半後にイギリスの国営放送BBCがジャニー氏の性加害を報道。国連も乗り出して、世界的な問題となった。メリー氏はジャニー氏の性加害を事務所発展のために見て見ぬふりをし、彼女に篭絡されたメディアが、事態の隠ぺいに手を貸してきた構図があるのです」(前出の芸能ライター)

 

100億円賠償」でも痛手にならず
 8月の国連人権理事会の報告では、「政府が主な義務を担う主体として、透明な捜査を確保し、謝罪であれ金銭的な補償であれ、被害者の実効的救済を確保する必要性があると、政府の主導でジャニーズ事務所に対し、謝罪や金銭的な補償を行なわせるべきと言及した。

前出の芸能ライターが言う。

「国連は被害者を数百人と発表。その数字通りにいけば、賠償額は100億円規模となる。ただし、ジャニーズにとっては十分に払える額。なにしろ年商1000億円以上といわれます。事務所は長年、タレントから金銭的にも搾取してきた。それを主導したのもメリー氏と言って過言ではない」

SMAPが国民的アイドルとして活躍した1997年、吉本興業を抜いてトップとなったジャニーズの年商は35億円と見られていた。以降、1位の座をキープしている。それでも、所属タレントたちは「ギャラが安い」と泣かされてきたといわれる。

そんなジャニーズ事務所の“錬金術”は、メリー氏によって編み出されたものだ。近藤真彦・田原俊彦・野村義男の3人が“たのきんトリオ”として一斉を風靡した1980年代前半。メリー氏は「私たちが考えている対象はいつも、1415歳を基準にしている」と語っていた。

この発想から生まれたのが、現在に続くジャニーズの「ファンクラブ制度」だ。これが、ジャニーズ事務所が躍進を遂げる大きな一因となった。

ネットニュース関係者が解説する。

「事務所は非公表としていますが、ジャニーズのファンクラブの会員数は約20万人といわれていました。年会費は入会金を含めて約5千円。単純計算で10億円です。その後、グループごとにファンクラブをつくるようになります。今年8月現在で、それらを合計すると、延べ1175万人といわれています。チケットをとるため、複数口入会するファンも多い。金額にすると約600億円。驚くべき数字です」

さらに、本業といえるコンサートの売上は、199710月に東京ドームで開かれた「ジャニーズ野球大会」を見ると55千人のファンを集めている。チケットは当時の価格帯で13500円としても、一夜で2億円近くの売上だ。

もちろん、CDやグッズ類も莫大な利益を生み、さらに注目はテレビ・CM出演による収入だろう。当時、テレビは東京キー局だけで、ジャニーズ関連の番組は40本近く。彼らが出演するCMも、それに近い本数があった。

しかし、女性誌記者が言う。

「たとえば、1990年代に人気絶頂だった光GENJICM契約料は3千~4千万円といわれました。それでも、リーダー・諸星和己の月給はわずか20万円。ギャラアップを要求したんですが認められず、彼は1995年に退所しています。その後、しばらくテレビ界から干されることになりました」

ギャラの安さに風穴を開けたのは、当時、諸星と同じ20万円の月給だったSMAP・木村拓哉の父親だった。

「キムタク主演のフジテレビ系ドラマ『ロングバケーション』が96年に大ヒット。コンサートは超満員、事務所に対する貢献度はナンバーワンで、1年で10億円以上を稼ぎ出した。それが月20万円の給料。父親がギャラアップを迫った結果、10倍以上にアップ。ほかのタレントのギャラも見直されるようになったんです」(前同)

それから4半世紀が経ち、ジャニーズ事務所ではSMAPをしのぐ人気の嵐をはじめ、関ジャニ∞などの人気グループが続々とデビュー。現在でもテレビ番組で彼らを見ない日はない。こうして、ジャニーズは1000億円企業と呼ばれるまでになったわけだ。

「人気絶頂をきわめた嵐が2020年末に活動休止した際には、それに向けたセールスで3千億円も売り上げたといわれる。その後もSnow Manらのグループが次々にデビューして稼ぎまくっており、1000億円も過小評価という見方があります」(経済ライター)

この栄光の裏にあったのが、創業者の性加害であり、それを黙認する経営トップと、その威光にひれ伏した大手メディアだった。国連会見でも「日本のメディア企業は数十年にわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられる」

と指摘されている。

鹿砦社を含め、追及するメディアがゼロだったわけではない。しかし、現在のように大きく取り沙汰されるようになったのは、3月のイギリスBBCという“外圧”がきっかけだった。

国際問題にまで発展したジャニー氏の性加害事件。世界を納得させる対応を、ジャニーズ事務所がとれるのか。

結局不発だった〝ガーシー砲〞
 ところで、4月に日本外国特派員協会で記者会見し、性加害問題を訴えた元ジャニーズ所属タレントのカウアン・オカモトが最初に被害を語ったのは、昨年11月、ガーシーこと東谷義和氏とのコラボ配信だった。

ガーシーのネット動画による暴露は昨年来、“ガーシー砲”として日本の芸能界や政財界を激震させ、自身も参院選で当選するまでの影響力を誇ってきた。しかし、俳優の綾野剛ら3人を脅迫したなどとして、暴力行為法違反(常習的脅迫)や強要、名誉棄損などの罪で起訴されたことで国外逃亡を続けたあげく、64日に成田空港で逮捕された。

「ガーシーの暴露も、逮捕で信ぴょう性が薄れた。初公判は919日に開かれるものの、ガーシーが裁判で何を語ろうと、もはや、誰も耳を貸しません」(俳優プロのマネジャー)

実際、金銭トラブルと女性スキャンダルを暴露された俳優の城田優も、嵐の松本潤が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」に登場。「ガーシー砲はいったい何だったのか?」という声が上がっている。

「城田が813日放送の『どうする家康』で、織田家の猛将・森長可役としてNHKの前告知なくサプライズ出演。綾野剛や新田真剣佑も平常の芸能活動に戻っている。ガーシーが逮捕されたことで、芸能界の実力者がテレビ局や映画界に働きかけたという情報が流れています」(同前)

ガーシーはアパレル会社の元社長で、仕事で知り合った有名人や芸能人に女性を紹介してきた。暴露ネタは、当時の情報に由来している。

そんなガーシーを刑事告訴したのが当時、未成年だった女性アイドルとの飲酒・淫行を暴露された綾野剛ほか2人。逮捕後、ガーシーは2度の保釈請求をしているが、証拠隠滅のおそれがあると却下されている。

綾野の方は、ガーシーの再度の宣戦布告という“脅し”に屈しなかったとして、逆に評判を高めたとの声すらある。

「もともとは、綾野が所属する『トライストーン』の山本又一郎前社長とガーシーのトラブルが発端だったんです」

とは週刊誌記者。

「山本社長が相手にしなかったことで、綾野ほか小栗旬や田中圭に飛び火。その後、トライストーンの社長に小栗が就任し、綾野を守ると決めたことから、綾野も強気になったようです。暴露直後のTBS系主演ドラマ『オールドルーキー』は平均視聴率10.4%と及第点。今年1月に女優の佐久間由衣と電撃入籍したこともイメージ回復につながり、11月に主演映画『花腐し』、年明けには『カラオケ行こ!』が公開と、無傷状態です」

前出の城田も、ガーシー砲の当時、NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」のナレーションを担当しており降板の噂が流れたものの、ドラマの終盤には役者として出演していた。

「城田はテレビ界に隠然たる力を持つ『ワタナベエンターテインメント』に所属後、独立。当時のマネジャーがバックアップしていることもあってのことでしょう。新田も人気コミックが原作のネットフリックスオリジナルドラマである実写版『ONE PIECE』で、元気に出演を続けています」(同前)

前出の大手プロ役員が言う。

「“ガーシー砲”で芸能界が激震した時、芸能界の重鎮たちは、ガーシーを苦々しく思いながらも静観してきました。逮捕されたことで、テレビ局や映画会社に働きかけたようです」

芸能プロモーターは、「芸能人に女性を紹介する“アテンダー”はほかにもいる。今後もガーシーのような輩が出現すると思いますが、逮捕が戒めになることを期待したい」と語った。

ジャニーズ性加害問題の解明は、海外メディアや国連の“外圧”が主導している様相だ。一方、国内で騒がれるのは、“文春砲”を除けばガーシーのような、アクセス目当ての暴露ばかり。これでは、芸能界の真の“闇”に光を当てることは難しい。

(月刊「紙の爆弾」2023年10月号より)

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