岸田訪米に同行した〝影の総理〞 「木原事件」報道管制の大問題

浅野健一

7月28日、文藝春秋本社での会見に臨む、木原氏の妻を聴取した佐藤誠元警部補(筆者撮影)

岸田文雄首相は8月17日から1泊3日の弾丸日程で訪米した。事実上の“宗主国”である米国のバイデン大統領からの指令で、韓国の尹錫悦大統領とともに、ワシントン近郊の米大統領山荘キャンプ・デービッドで開催された米韓日首脳会談(18日)に駆け付けるためだった。

約30年前、米CNN東京支局長が「今週の日本」という番組で、「日本人はなぜ8月だけ平和主義者になるのか」と特集し、私もインタビューを受けた。日本の人民が非戦・平和を祈るその8月中旬に、米国の「拡大抑止戦略」に沿った三角軍事同盟の対中戦争、第2次朝鮮戦争を睨んでの戦争準備会議がセットされたのだ。

首脳会談は、3カ国による軍事同盟を「新たな高み」に引き上げ、緊急事態の際には迅速に協議するとの共同声明をまとめた。共同声明は「覇権主義的な行動を強める」と、中国を名指しで批判した上で、インド太平洋地域での「一方的な現状変更の試みに強く反対する」と表明。ミサイル発射事件を実施する朝鮮民主主義人民共和国について、「強く非難する」と表明し、日米韓による情報即時共有の運用を年内に開始するとした。

また、首脳・外相・防衛相・経済産業相・安保担当高官が少なくとも年1回会談し、新たに財務相会談なども立ち上げると決めた。

岸田氏はバイデン氏との会談で、朝鮮や中国、ロシアが開発を進める極超音速兵器を迎撃するために新型ミサイルを米国と共同開発することに合意した。中国は「中国脅威論というデマを拡散させた」と強く反発した。

何のために日韓両首脳が、この時期に“米国詣で”をしたのか日本の報道ではまったくわからない。政府専用機に箱乗りした内閣記者会常勤幹事社(新聞・通信社、テレビ局の19社)の社員記者の社名・氏名も公表されない。会談でウクライナ戦争へのさらなる加担と、新たに兵器爆買いを約束させられたのではないかと私は推測している。

エリゼ独仏条約にならい非戦・非核の北東アジアを
 元広島市長の平岡敬氏(95歳。元中国新聞編集局長、元中国放送社長)は8月5日、私のインタビューに応じ、「岸田首相はハト派のような顔をし、広島選出という看板を掲げて『核なき世界をライフワークとしている』と言いつつ、米欧の核抑止強化を後押しするなど真逆のことをやっている。まさに米国の“走狗”だ」と指摘した。また、「3月にウクライナのゼレンスキー大統領と会った際の『必勝しゃもじ』はお笑いだった。岸田氏の世界観・歴史観が欠如していることを表していると思う」と述べて、こう続けた。

「ロシアも国際法違反で侵攻したのは悪い。しかし、米国もイラクなどでやっている。大国のエゴだ。要するに民主主義国家であれ、専制国家であれ、支配者と被支配者がいる。結局、戦争で被害を受けているのは両方の国民だ。だから、広島は、『戦争を止めろ』ということを、一番言わなければならない。それを5月のG7サミットでも、広島市長の8・6平和宣言でも言っていない。広島は原爆体験によって、戦争はしないんだと決意をした。日本もそう決めた。それが憲法第9条だ」

平岡氏は日帝統治下の1937年、朝鮮に家族で移り、1945年9月に広島へ引き揚げた。

「2019年9月、91歳で74年ぶりに訪朝した。京城帝国大学予科の時に学徒動員で、興南(現在は咸興市の一部)にあった日本窒素肥料工場で1945年4月から敗戦まで5カ月働いた」

そう話す平岡氏は、日本の政府とメディアが揃って中・朝・ロが侵攻してくると煽ることについてもこう語った。

「その3カ国が侵攻してくることは絶対にないと思う。理由がないからで、日本が挑発すれば別だ。問題は、東アジアがなぜ緊張しているかだ。米国とべったりで、日本に米軍基地があるから、中朝は警戒している。日中平和条約と日朝平壌宣言の両方をきちんと守れば問題がなかった」

平岡氏は、戦後の欧州の和解プロセスから学ぶべきだと主張する。

「1963年に西ドイツとフランスが締結したエリゼ友好条約がある。トップが年2回、外相らが4回、軍参謀クラスが6回会談し、青少年の交流をするということで、300年の旧敵が仲直りし、欧州連合(EU)に発展していった。日本もそういう定期的な会合をやっていれば、誤解がなくなるし、両国民の交流が盛んになる」

「日本では、ウクライナ情勢も含め、西側の情報ばかりだ。虐殺・残虐行為があったと報道するが、見ていないのだから、どちらがやったかわからない。戦争開始後に和平交渉があったが米国が潰した。米国はロシアの力を弱めたい。ウクライナは米国の手先になって以降、カネと武器で戦わされている」

最後に平岡氏は「今、マルクス主義思想を学ぶべき」「万国の民衆は団結せよ」と、こう訴えた。

「軍国主義を支えたのはメディアと教育。私も『鬼畜米英』『アジアの解放』を信じる軍国少年だった。ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が1981年に広島を訪ねた時、『過去を振り返ることは、将来に対する責任を担うこと。広島を考えることは核戦争を否定することだ』と述べた。危機を煽らず、事態を冷静に見つめる視点と非戦に向けた行動が、政治家やメディアに今ほど求められている時はない」

いま、日韓のトップがやるべきは、中国・朝鮮との対話の再開ではないか。すでに緊密な関係を持つ米韓との定期会談を新たに設定する必要はない。バイデン氏は米韓日会談後の会見で、習近平国家主席との首脳会談が今秋実現することに期待を表明した。岸田氏も日中首脳会談を実現すべきだ。

「北朝鮮と連絡がとれない」とこぼした岸田氏
 岸田氏は朝鮮の金正恩総書記と無条件で会談を求めているが、朝鮮とはまったくパイプがないことがわかった。

岸田氏は8月6日、広島の平和記念式典に参列した後、県内の被爆者7団体の代表との「被爆者代表から要望を聞く会」に出席した。林芳正外相、加藤勝信厚労相が同席した。私は「広島市政記者クラブ・首相同行記者(内閣記者会常勤幹事社)以外は取材不可」と強硬だった広島市広報課と談判を重ね、前日にプレスパスを勝ち取り、「記者席」で取材した。

最初に、金鎮湖・広島県朝鮮人被爆者協議会会長理事長が、朝鮮に住む被爆者(確認された生存者は約150人)の支援を求めた。昨年のこの場で、佐久間潔外務副大臣(現・自民党国防部会長代理)が「適切に対応していく」と回答したことを挙げ、こう質した。

「総理は日韓首脳会談で徴用工問題に触れ、『心が痛む思い』だと言及された。過去、日本の誤った植民地政策によって、朝鮮半島の方々は言葉では表現できない苦しみを与えられた。重ねて、広島・長崎においては米国が投下した原爆により、何の罪もない数万の朝鮮半島出身者が犠牲になった。『心が痛む思い』を抱き、韓国の原爆犠牲者に対して哀悼の意を表するのであれば、現在、実質的には被爆者援護法の対象外となっている在朝被爆者に対しても同じ気持ちを持ち、支援していくことが人間としての良心だと思う」

林外相は「厚労省など関係省庁と協議を行なっているが、現状の1つ1つを明らかにするということは事柄の性質上控えなければならない。また日朝間の具体的な内容を明らかにすることは控えるが、一般論として申し上げると、北朝鮮との間では北京の大使館ルートなど、様々な手段を通じてやりとりを行なってきている」と答えた。

「聞く会」の終了後、岸田氏は7団体の代表と握手を交わし、言葉を交わしたが、金氏との対話が一番長かった。金氏が「1日も早く朝日関係を改善し正常化してください。お願いします」と要請すると、岸田氏は「私が直轄するハイレベル協議をしようと向こうに伝わっているのに何も返事がない」と答えた。また、「現状では在日が一番苦しいんですよ、ぜひお願いします」との金氏の言葉には、「頑張ってみます」と返事した。

岸田氏は、「朝鮮の被爆者協会に連絡をとったらどうか」という金氏の進言に、「北朝鮮と連絡がまったくとれない」などとこぼしたのだ。在朝被爆者問題をめぐる金氏と岸田・林両氏との意見交換は重要なニュースだと思うが、日本の報道各社はまったく報道していない。

木原官房副長官が首相外国訪問に同行
 岸田訪米の話題に戻ろう。岸田氏が8月17日、政府専用機に乗り込む映像に、木原誠二官房副長官の姿がはっきり映った。岸田氏が米国に到着した際も、タラップを降りる岸田氏の後ろに木原氏の顔があった。木原氏が1カ月半ぶりに表に出たと思われる。

週刊文春は今年6月から連続で、木原氏の婚姻外恋愛・隠し子問題と、木原氏の妻X子さんの前夫の安田種雄氏(当時28歳)が自宅で不審死(2006年)した事件の再捜査(2018年)を妨害した疑惑を調査報道してきた。

共同通信は同日、次のように報じた。

〈首相の外遊には、2人いる政務の官房副長官のどちらかが同行し、首相をサポートする。3月のウクライナ、5月の韓国訪問は木原氏が同行したが、週刊文春報道後の欧州と中東の歴訪同行は、いずれも磯崎氏だった。関係者によると、中東歴訪は木原氏の担当だったが、磯崎氏に交代になった。〉

9月の内閣改造・党人事で、岸田氏が木原氏を留任させるのかが注目されている。岸田氏の2回の総裁選出馬の際に公約や演説文を書いたのは木原氏で、彼がいないと政策遂行ができないともいわれる。不審死した安田氏の父親と姉2人は7月20日に司法クラブで記者会見し、同17日に、警視庁に再捜査を求める上申書を出したと明かした。

遺族の代理人を務める今給黎泰弘弁護士(東京市谷法律事務所)は7月28日付の「SmartFLASH」で、「再捜査がされない場合、今後の遺族の意向によっては民事での訴えを(X子さんに)起こす可能性もあります。少なくとも、途中で捜査が止まってしまった現状には、なんらかの力が働いているのではないかという不信感を持っています」とコメントしている。

木原氏は7月5日、代理人弁護士を通じ「私と私の家族に関連した記事は事実無根」と抗議するコメントを発表。また、代理人弁護士は同日、文藝春秋を告訴することを明らかにした。弁護士の氏名・所属は公表されていない。

文春オンラインによると、代理人は東京の司法記者クラブに「御通知(至急)」と題したA4判で3枚にわたる文書を送付し、告訴を明らかにした。通知書は〈文春の記事は事実無根のもの〉〈マスコミ史上稀にみる深刻な人権侵害〉と批判し、即刻記事を削除するよう求めた。X子さんの代理人も7月21日と28日、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた。

木原氏は28日には松野博一官房長官に「私が捜査に圧力を加えたとの指摘は事実無根だ」と報告している。ところがメディアは“木原事件”では木原氏に会見を求めようともせず、木原氏が文春を告訴したとか、X子さんが日弁連に申し立てをしたとか小さく報じているだけだ。

木原事件の本筋をまったく報じていない朝日新聞だったが8月2日付の「天声人語」で、木原事件を突然採り上げ、〈副長官が記者会見などで反論しないのも解せない。いったい事実はどこにあるのか。疑念の声がくすぶるのも仕方あるまい〉と書いた。警視庁担当記者は驚いたことだろう。それでも、社会部は木原事件を報じない。

共同通信も8月18日、加盟紙向けの企画記事の〈政治コラム「政流考」(オピニオン欄用)〉で、〈看過できる疑惑ではない 問われる首相の危機感〉と題した記事(井手壮平編集委員)を配信した。事件内容を詳述したうえで、〈あまたの政治家のスキャンダルとは次元が異なる看過できないものだ。1方、木原氏は代理人弁護士などを通じ「事実無根」と繰り返すだけで、報道以降、公の場にほとんど姿を見せていない〉〈ある中央省庁トップは「記事を見る限り、信ぴょう性は高いように見える」と指摘。記者会見で事件性を否定した露木康浩警察庁長官に対しても「部下から事案の詳細を知らされずに踏み込んでしまったのではないか」と同情する〉〈これほどの事態に静観を続けるならば、首相に民主主義を語る資格はない〉などと書いている。

 

元捜査官が実名で「殺人」と断定、捜査終結を糾弾
 当初自殺とされたこの事件では、警視庁大塚署の女性刑事が2018年、現場に落ちていたナイフの柄が綺麗な状態だったことなどから、「誰かが血糊を拭き取ったのだろう」と疑問を抱いたことで、捜査1課特命捜査対策室捜査第1係に持ち込まれた。その後、殺人捜査係も加わり、約40人で再捜査が始まった。

捜査員はかつてX子さんと親密な関係にあったY氏(覚醒剤事件で宮崎刑務所に収監=当時)に約30回面会。同年10月9日、X子さんの実家などを家宅捜索した。また、X子さんの任意の聴取も10回行なわれた。

ところが、捜査が佳境に入った時点で、同課の佐和田立雄管理官が「明日で終わりにする」と通知した。臨時国会(10月24日開会)直前だった。国会閉幕後も捜査は再開されなかった。

捜査員は、X子さんが警視庁からタクシーで帰宅の際、同乗した木原氏と交わした会話が録画されたドライブレコーダーを回収した。木原氏は「俺が手を回しておいたから心配すんな。刑事の話に乗るな」「国会が始まれば捜査なんて終わる。刑事の問いかけには黙っておけ」と指示。X子さんが「刑事さんが(木原氏のことを)『東大出てボンボンで脇が甘い』とか言っていたよ」と話すと、「そんなもん、クビとって飛ばしてやる!」と発言した。

文春は、“影の総理”とされる木原氏が「家宅捜索も妻への事情聴取も事実無根」という真っ赤な嘘をつき、捜査員に対して凄み、「国会が開くまでに終わらせろ」と一方的に期限を切ったと批判。「権力濫用の木原氏は、国の舵取りを任せるにふさわしいのか」と問いかけてきた。

遺族だけでなく、2018年10月にX子さんを聴取した捜査1課殺人犯捜査第1係の佐藤誠警部補(2022年退職)も7月28日、文藝春秋本社で約一時間記者会見した。私も参加した。

佐藤氏は冒頭、警察庁の露木康浩長官が13日の会見で「事件性が認められない」と発言したことに触れ、「被害者がかわいそうだ。頭にきた。自殺を示すような証拠はまったくなかった。断言するが、明らかに殺人事件だ」と語り、こう続けた。

「現場を見た警察官なら、みんな事件性があると思うはずだ。どんな事件でも、捜査終結時は、被害者遺族に理由などを説明するが、この事件では、被害者側に何の説明もなされていない」

質疑応答で、読売新聞の藤原記者は、「こうやって発言することが地方公務員法違反に問われる可能性があることはわかっているのか」と質問。読売新聞が毎日、公務員である警察官への夜討ち朝駆け取材で、捜査情報を入手して報じているのは違法ではないのか。佐藤氏は「法的問題はわかっているが、やるしかない」ときっぱり答えた。

朝日新聞の遠藤記者は「自殺の証拠はないと言うが、殺人だという証拠もないのでは」と聞いた。殺人の証拠を探すために捜査が必要なのだ。朝日新聞・共同通信などは佐藤氏を「かつて捜査に関わった警視庁の元捜査員(64)」と仮名で報じた。再捜査を求める遺族も仮名だ。犯罪報道で、遺族に寄り添うとして、「実名原則」を取る報道界の二重基準である。

岸田政権には官房副長官が3人おり、そのうちの1人は栗生俊一氏(内閣人事局長兼任)。1981年に警察庁に入庁した栗生氏は2018年から2020年1月まで警察庁長官を務めた。木原事件の異常な捜査終結に栗生氏ら警察トップが関与しているのではないか。

木原氏は文春に対する告訴状を公表すべきだ
 週刊文春8月31日号は岸田氏の訪米に同行した木原氏の近況に触れ、仮名の政治部記者の話として、「木原氏は一度同行を辞退したのですが、『今回の首脳会談は重要だから』と岸田首相が押し切った」「木原氏はこの訪米の間、同行記者団へのブリーフィングを一切しなかった」と書いている。

同記事は、「木原氏自身の嘘も発覚した。小誌が報じてきた木原氏の愛人と隠し子B子ちゃんの存在。木原氏は小誌の取材に『親子関係はない』と断言してきた。だが、木原氏が現在発売中の月刊『文藝春秋』9月号に対し、B子ちゃんが実子であることは『事実です』と認めているのだ」とも報じた。

政治家の異性関係、家族関係をどこまで報じるかは議論が必要だろうが、首相の最側近の政治家が嘘をついてはいけない。米国などでは、嘘をついた政治家、言っていることとやっていることが違う公人は永久追放になる。

木原氏の代理人が7月5日に明らかにした文春に対する告訴がどこの捜査機関(警察・検察)に行なわれ、受理されたかなどは不明だ。

実際に告訴が行なわれたとわかったのは、立憲民主党が8月1日に木原事件を巡って開いた、警察庁と内閣官房からのヒアリングの場だった。立民の公開質問状に対し、木原氏から書面で「事件性がないと判断された事柄について何かを語ることは人道上、また人権上重大な問題を惹起することから、警察当局にお尋ねいただきたい。報道については既に刑事告訴しており、これ以上の人権侵害が行なわれないよう理解をお願いする」との回答があったと明らかにした。

立民側は木原氏の出席を求めていたが、本人は出席を拒んだ。代わりに内閣官房の担当者が、木原氏から聞き取った内容を回答した。

告訴について文春の取材当時、検察担当記者と警視庁刑事部の幹部がともに否定している。ただし、告訴状は東京地検の係官が受け取って、正式に受理が決まるまでには時間がかかるので、告訴がされたのは事実だと思う。木原氏は告訴状を公表すべきだろう。

私は8月21日、木原氏にメールとファクスで、報道機関から本件について取材があったか、木原夫妻の代理人弁護士の氏名と所属などを質問した。また、文春を告訴するという司法記者クラブへの通知文と、立民への文書回答のコピーの提供を求めた。木原氏からは27日までに回答がなかった。

文春に続き木原事件を追う媒体が現れない。週刊現代8月26日・9月2日合併号は、木原氏が「文春へ反撃」と報じ、佐藤元警部補について、〈「地方公務員法違反(守秘義務違反)で立件せよ」という動きが警視庁内で活発化〉〈「事件性がないという見解を覆そうとする文春に怒る幹部は多く、同誌への協力者も許さない」(社会部記者)〉と報じた。警視庁が佐藤氏を立件するはずがなく、警察幹部の脅しに怒らない社員記者は廃業した方がいい。木原氏と文春が手打ちしたというデマも流れた。

私が見た限り、テレビは木原事件を一秒も報じていない。社員記者たちは、木原氏に囲み取材をすべきではないか。現在の首相が頼る“影の総理”に、警視庁捜査への介入の嫌疑がかかっているのだ。大学生の大麻所持被疑事件の何万倍も重要だと思わないのか。

岸田・木原両氏は、安倍晋三政権時のモリ・カケ・カワイ・サクラ事件のように、世間が忘れるのを待つ作戦だろうが、木原事件では、安田氏の遺族が記者会見まで開いて真実の究明を求め、X子さんを聴取した佐藤氏が実名で「殺人事件だ」と断じ、捜査終結の問題点を追及している。なかったことには到底できないと私は思う。

岸田氏は訪米の帰国翌日の20日、東京電力福島第一原発を視察、翌日には全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長と面会した。坂本氏は核汚染水の海洋放出への反対を表明したが、政府は22日に関係閣僚会議を開き、東電は24日に海洋放出を始めた。8月22日付の朝日新聞は一面トップで、「処理水放出24日にも」「一定の理解と首相ら判断」などの見出しの記事(笹川翔平記者)を掲載した。記事の重要部分の情報源は「政権幹部」「首相周辺」だった。

「天声人語」は、中国政府の「安全なら使い道があるだろう」という主張に対し、「ひどく乱暴な主張」「外交カードの意図」と噛みつき、「ため息が出る」と書いた。ため息が出るのは、反中記事を朝から読まされる我々読者だ。中国政府だけが問題視しているという世論操作は万死に値する。南太平洋諸国(16カ国と2地域)も反対している。

26日の社説は「中国の禁輸 筋が通らぬ威圧やめよ」と書いていた。朝日新聞の仮名の情報源である「官邸幹部」「政府関係者」は、元経産次官で政権の原発回帰を引っ張ってきた嶋田隆首相秘書官だろう。木原氏も入っているのは間違いない。

木原氏は、四半世紀にわたる金権腐敗の自公野合政治が産み出した政治屋だ。木原氏とともに、統一協会=国際勝共連合まみれの自民党は自己崩壊するだろう。そのためには人民がキシャクラブメディア報道に騙されず、真実を知り行動することが必要だ

(月刊「紙の爆弾」2023年10月号より)

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浅野健一 浅野健一

1948年、香川県高松市に生まれる。1972年、慶應義塾大学経済学部を卒業、共同通信社入社。1984年『犯罪報道の犯罪』を出版。89~92年、ジャカルタ支局長、スハルト政権を批判したため国外追放された。94年退社し、同年から同志社大学大学院メディア学専攻博士課程教授。2014年3月に定年退職。「人権と報道・連絡会」代表世話人。主著として、『犯罪報道の犯罪』(学陽書房、講談社文庫)、『客観報道』(筑摩書房)、『出国命令』(日本評論社)、『天皇の記者たち』、『戦争報道の犯罪』、『記者クラブ解体新書』、『冤罪とジャーナリズムの危機 浅野健一ゼミin西宮』、『安倍政権・言論弾圧の犯罪』がある。

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