鳥の目で琉球弧を見る

宮城恵美子

 

死の商人は、いつでも戦争をほっしています。今ウクライナで戦争し、次に沖縄・琉球弧を舞台とする東アジアでも戦争準備に入っています。それが日米が喧伝している「台湾有事」論です。沖縄は戦後、ずっと米国の基地・軍隊の島にさせられてきましたが、近年は日本政府による軍事拡大の波が急激に押し寄せてきています。

2016年、与那国島で自衛隊配備が本格化して以来、石垣島、宮古島、沖縄島、奄美大島、奄美大島、最近、更に北大東島や久米島も軍事要塞化し、ミサイルを配備しようとしています。

ウクライナ情勢を見ますと、死の商人が跋扈しています。死の商人とは、米国を中心とする軍産複合体、多国籍企業、金融業、軍需産業、細かく言えば、靴・薬・制服・鉄板・水筒類を含む広範囲の製造業も含みます。もっと言えば、商社、運輸、さらにはGAFA等の情報産業やマスコミもコンサルタント企業までも含むと思われます。死の商人は思想的にはネオコンや新自由主義あるいはグローバリズムをバックボーンに持ち、世界を市場化しようと動いていると考えられます。世界市場化は手っ取り早いのは戦争です。人権よりも「今だけ自分だけ、お金だけ」の考えが本音にあるだろうと思います。

現在、ウクライナでは40万人以上も死者が出ているようです。ロシアの死者を加えるとどれだけ多くの人が犠牲になったのか、ため息が出るばかりです。

その一方で市の商人は稼ぎまくっています。人の血を踏み台に商売繁盛で、米国の軍需産業は空前の株価を記録したと聞きます。ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、レイセオン・テクノロジーズ、ゼネラル・ダイナミックス等米国の軍需産業の株価が軒並み高騰し、最高値を更新しています。また米国防総省オースチン長官はレイセオン・テクノロジーズの重役でしたし、ブリンケン国務長官はコンサルタントの重役でした。バイデン政権の中に死の商人が入っています。バイデン政権のヴィクトリア・ヌーランド国務次官補は夫のケーガン氏と共にネオコン思想家として有名な人です。

かねてから、ロシアはNATO東方拡大に反対を表明してきました。国境を接するウクライナがNATO加盟をすることは「第2のキューバ危機」になる、と危機感を持っていました。しかし、2008年オバマ政権時代、バイデン副大統領は部下の国務次官補ヌーランドと共にウクライナ入りを繰り返していました。ウクライナのNATO加盟の勧誘がはじまり、2019年には「ウクライナ首相のNATO加盟義務」を憲法に明記させるに至りました。

かつて米国とソ連は「キューバ危機」に直面したことがありました。キューバにソ連ミサイル配備計画の存在が明らかになったからです。キューバは米国の対岸にあります。キューバにミサイルがおかれるのは米国の喉元に刃を突き付けることと同じことである。つまり米国の「国家安全保障上の重大な危機」である、と批判し、ソ連に計画撤回を迫り、ソ連は受け入れて、ミサイル配備を止めました。戦争に至る道を止めた、世界を震撼させた大事件でした。

今回はキューバに当たるのがウクライナ・NATO軍でミサイル配備する側です。危機感を持ったのがロシアです。なぜならばロシアの喉元に刃を突き付ける状況になるからです。

ウクライナの軍事化(NATO加盟)つまりNATOの東方拡大を撤回すればいいはずで、折り合いがつかない程、難しい話ではないはずです。しかし、米・西側はNATOの東方拡大をとめずに、ずっとロシアを挑発し続けました。

もう一つの問題ですが、「ウクライナ戦争」は2022年に始まったと思われますが、すでに戦争が起こっていました。実は2014年に内戦=戦争が発生していました。ウクライナ南部・東部はロシア語話者が多数共住しています。そこで虐殺行為が頻発し2022年までの8年間に14000~15000人の死者がでています。加害者は自国軍です。ロシア敵視のとばっちりを受けて、ロシア語話者ウクライナ人が攻撃されてきたのです。

ロシアとウクライナのルーツが異なることが根っこにあるのであれば、ロシア語系は国内少数者として自己決定権を行使し分離や自治権の強化をはかるとか、知恵を出せば行きらでも解決ができるはずです。現代の人権思想はその道を開いています。解決方法はありますが、模索せずにウクライナ政府が自国民を虐殺していたのです。

ウクライナは国としてのメンツが潰れるので、自治権行使させたくない意向であろうか、先に独立したクリミアも国家承認していません。近代法は人権を国家よりも優先する価値と考えています。ウクライナのメンツよりはクリミアの人権の方が価値があり、ドンバス地方の人権が価値が高いのです。近代の人権意識から読み説けば、折り合いがつく話です。どうぞ自己決定権を行使してください、自立してださいと言えば済む話です。

ところが全部否定されているのです。だからと言ってロシアの軍事進攻は全く認められません。武力に訴えては被害を大きくするだけです。戦争に至らない道をもっと探すべきだったと思います。

とはいえ、米・西側はウクライナの土地とウクライナの人を利用してでも戦場を設けたかったのです。戦場にすることを「セッティング・シアター」にすると証言した米軍中将がおります。戦争を欲する死の商人の市場化を拡げたいのです。

ウクライナでドンパチすることが武器の大量生産・大量消費に繋がります。どこかで戦争しなければ死の商人は在庫の山を築くことになります。いつかは製品を放出しなければいけないということで、戦争をどこかで起こすことになるのです。

ウクライナのように戦争を誘導するシステムが日本でも展開されています。日本の場合は日米安保条約が利用されています。安保に基づく米国の子分の日本を、米国の対中国封じ込め作戦のために使って、日本人を戦場に立たせて、事実上、日本と中国を戦わせる戦略が、米戦略です。それが進んでいます。その方法は沖縄・琉球弧の島々ほぼ全域にミサイルを配備する計画です。中国を脅すためにミサイルの発射場にする、その計画が実行に移されているのです。

中国から見れば、中国の喉元に刃を突き付ける状態です。つまり中国にとっては「第2のキューバ危機」の危険性が高まっても当然です。キューバ危機を起こしているのが日米および琉球弧の側なのです。私たちが自分の足元で立たされている状態、つまりミサイルを置く側であることを見れば、「他者・中国他のアジア諸国」の痛みが分かります。

他者の痛みを自分の痛みとして、他国を恫喝や挑発をしてはならないと思います。また他国を挑発して、もしものことがあれば、ミサイル応酬合戦になって、琉球弧の島々は木っ端みじんに潰されるでしょう。その危機感が大きいです。どっちにしてもこのミサイル配備の動きを止めるべきです。第二のキューバ危機に至らないように日米政府に声を上げてこの動きを止めましょう。

日米の親分・子分関係から抜け出す道も提案したいと思います。一つは、日米の2国間重視から多極間重視政策に舵を切ることです。二つ目には、死の商人に異議申し立てようと、米大統領候補者、ロバート・ケネディ・ジュニアの支援等、米国内で、死の商人に抗っている人々と連帯することです。三つ目に、BRICS、ASEAN、グローバルサウス等の同盟ではなく、ネットワーク型の関係構築の動きを促進しそこの仲間入りを果たすことです。四つ目に、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間、「英雄」と言われた人で、死の商人に真正面から立ち向かって、歴史から消され、かろうじて沖縄海兵隊総司令部キャンプ・バトラーとして、その名を留めているスメドレ-・バトラー将軍の演説を思い起こすことです。それによって死の商人の歴史から現在に至るまでも、巨大権力であることに気付いて、死の商人にいかに対抗していくかを探る運動を拡げることです。死の商人は巨大です。多国籍企業からグローバル企業等、それは今の日本のお金=税金を吸い取るシステムまでも作っています。多くの人が気付いていませんが、日本政府も動かしていると思います。竹中平蔵やエマニュエル駐日大使を代理人にして。

ここから言えることは日本人もウチナンチュも「大きい物にまかれろ」意識からの脱皮が必要です。政府がすることに従っていればいい、米国が守る、安保が守る、日本国が沖縄を守る、と思った「復帰」思想と向き合うことでもあります。大樹に寄り掛かるのは楽だという思想を乗り越えることだと思います。

沖縄の人が事大主義と思うのは、政府に従えば良いと、石垣市長やうるま市市長等がすぐ口に出す、「防衛は国の専管事項」だから「意見を述べる立場にありません」と、まさにこれが事大主義です。

市長だけではなく多くの沖縄人にも言えます。日本を「祖国・親元」と勘違いした「復帰」思想にも当てはまります。「大きいものに巻かれた」結果、沖縄を利用しつくす日本、日本の親分である米国の支配下にあります。沖縄に自由はありません。その構図はつまり、沖縄は今も日米両国の植民地支配下にあるといえます。日米の戦略から抜け出る脱植民地の在り方が問われています。

沖縄は今後いかにあるべきか。それは先に述べた「4つ」を推進する中から見えてくるのではないでしょうか。

※なお本稿は、東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会、第7回シンポジウム(2023年11月11日開催予定)の報告原稿です。

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宮城恵美子 宮城恵美子

独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。

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