世界を裏から見てみよう:ジャニーズ事務所は永遠か?
漫画・パロディ・絵画・写真社会・経済ネスレ日本元社長の「ジャニタレ不使用」論
創業者・ジャニー喜多川氏による性加害問題でジャニーズ事務所は9月7日、初の記者会見を開いた。姪の藤島ジュリー景子社長がその座を退き、新社長には所属タレント最年長の元少年隊・東山紀之氏が就任。東山氏は9月30日、57歳になった。
会見には大勢の記者が詰めかけるも、1人1問という制限つきで内容は深まらず。詰まるところ景子氏は、社長の職は外れるが代表取締役にとどまり、100%所有の株式はそのまま。何のことはない、従来通りの体制継続宣言だった。それでも、「加害者の名を冠した社名は『ヒトラー株式会社』と同じでは?」という記者の指摘もあって、名称変更をその後、決めている。
東山氏は社長就任を「一晩考えて引き受けることにした」と、いかにも苦渋の選択のように話したが、前日の打診ということはあり得ない。おそらく誰も引き受けてくれないので、東山氏になったのだろう。「貧乏くじ」だ。
サントリーホールディングス社長で経済同友会代表幹事の新浪剛史氏は性加害問題を「人権侵害であり、大変遺憾だ」としたうえで、ジャニーズタレントに関して「(広告などに)起用することはチャイルド・アビューズ(児童虐待)を認めることになり、国際的な非難のもとになる」と述べた。サントリーは広告宣伝に年間4千億円をかける国内最大級の広告主。ジャニーズタレントを広告などに起用している上場企業は8月末で65社。その多くが即時中止や見送りの方針を示している。今後も増えていくだろう。
一方、食品メーカー「ネスレ日本」元社長兼CEOでビジネスプロデューサーの高岡浩三氏はフェイスブックで、この〝CM撤退ドミノ〟についてこう言及した。
「正直言って、いったい何をこんなに騒いでいるのだろうか?」
「クライアントサイドにいた私でさえ、ジャニー喜多川氏がもともと性癖があってジャニーズ事務所を開設したという噂は、かれこれ20年以上前から噂として知っていた。メディア関係者も絶対私以上に知っていたはず」
「私は、ネスレのガバナンスとコンプライアンス規定の観点から、キットカットといえども1度もジャニーズのタレントをCMや販促に起用しなかった」
「大手クライアントこそ、この手の問題を知っていたはずだし、知らなかったとしたら恥ずべきことだ。それ以上に、日本のメディアはクライアントの不祥事や人気芸能事務所の問題に蓋をして、事が起こってから白々しく報じる体質だと理解しておくべきだ」
まさに正論だが、彼の判断は、外資系企業のネスレだからでは。いつか〝この日〟が来ることを見越していたのだろう。
一方、そんな流れを読めなかったのが、昨年4月にNHKを退職後、6月からKADOKAWAの執行役員とジャニーズの顧問を兼務する元理事の若泉久朗氏だ。大河ドラマ「風林火山」(2007年)や連続テレビ小説「ほんまもん」(2001年)など数々のドラマを手がけたプロデューサー。制作局長などを経て理事に上り詰めた人物が、関連会社などを経ずに民間に移籍した例は少ないそうだ。
そのNHKでは「クローズアップ現代」(9月11日放送)に被害者タレントをはじめ、NHKや民放の元プロデューサーなどが出演し、性加害問題を振り返った。NHKを退職後にジャニーズ事務所の顧問を務めている元理事という人物にも、性加害が見過ごされてきたことへの見解を尋ねたが回答はなかったという。「匿名」としていたこの元理事こそ若泉氏ではないのか。正々堂々とコメントしたらどうなのか。
エプスタイン事件
ジャニーズ問題を語る場合、「エプスタイン事件」に触れないわけにはいかない。
ジェフリー・エプスタインはアメリカの金融業界で成功し財をなした実業家。プライベートジェット機にボーイング727を所有していたというからとてつもない大富豪なのだ。
しかし2019年7月6日、エプスタインは、ニューヨークとパームビーチの豪邸で14歳を含む未成年の少女数10人を性的に搾取した疑いで逮捕されると、8月10日に勾留中の刑務所で首吊り自殺を遂げた。ところが、この死因には疑問が生じている。
エプスタインは財団を作り多くの科学者に資金提供を続けていた。元マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長の伊藤穰一氏は、エプスタインから研究資金の支援を受けていたという理由で、所長の椅子だけではなくハーバード大学客員教授など多くの職を辞めている。少女売春の犯人と知りつつ支援を受けていたという理由で大きな非難を浴びたのだ。
他方で、エプスタインとの交流がありながら、何の非難も受けていない有名人が山ほどいる。そうした人物には、ビル・ゲイツを筆頭に、マイケル・ジャクソン、ケネディ家・ロックフェラー家・ロスチャイルド家の面々、イスラエル首相、イギリス首相、はたまたサウジアラビアの皇太子などの名前が挙がっている。これらの富豪や政治家は、エプスタインが所有するヴァージン諸島の島に招待され、パーティなどが開かれたという。今やこの島は「エプスタイン島」と呼ばれるに至っている。
世界同時多発する〝性加害〞問題
〝性加害〟をめぐる問題は、近年、世界中で勃発している。2017年には、過去の性的暴行罪で、ハリウッドの元大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが逮捕された。これをきっかけに、セクハラや暴行を受けた女性たちから「#MeToo(私もです)」というハッシュタグ付きコメントが全米に拡大し、始まったのが「#MeToo運動」。WHO(世界保健機関)は、世界中の女性の35%が性暴力・身体的暴力の被害を受けていると推定する。
なんだか作られた流れにも見えなくはないが、陸上自衛官だった五ノ井里奈さんが、基地内でのセクハラ被害を訴えた事件は深刻だ。彼女は被害申告に対し適切に対応しなかったとして国を提訴。相談部署や上司に被害を申告したが、措置が取られないまま男性隊員と日常的に顔を合わせる環境に置かれた。しかも、こともあろうに彼女だけ実名を出し、男性隊員を擁護する内容で事例が紹介されたという。
ジャニーズ忖度メディアに抗った梨元勝
ジャニーズに話を戻すと、2003年に最高裁でジャニー氏による性加害認定の判決を勝ち取った週刊文春の編集長(当時)の木俣正剛氏が、ダイヤモンド・オンライン(9月10日付)に寄稿している。
木俣氏が振り返ったのが、芸能レポーターの故・梨元勝氏。梨元氏はジャニーズに限らず、大手芸能プロダクションに迎合するテレビ局の姿勢を厳しく批判。ジャニーズの問題を取り上げないように番組から求められ、自ら降板したこともある。その結果、人気や実力は第一人者でありながら、テレビでの出番を激減させた。
木俣氏はジャニー氏の蛮行を知りながら黙認してきたキャスターやメディアがここにきて急に「反省」とか「報道すべきだった」などと言い出すことを「全く信じられない」と切り捨てる。週刊文春はジャニーズ裁判で勝訴した後も、数々の嫌がらせを受けた。ジャニーズのタレントが出ている広告は週刊文春に出稿されなかった。「兵糧攻め」を受けたのだ。
さて、日本テレビ系「news zero」のキャスターを長年務める嵐の櫻井翔は、日本ラグビー協会の「ジャパンラグビーアンバサダー」を降りるかと思いきや、協会は継続を決めこんだ。この強気の判断の背景には協会の元名誉会長・森喜朗元首相の存在があることは間違いないだろう。しかも櫻井の父親・櫻井俊氏は元総務省事務次官で退任後は電通の副社長に天下りして、現在は財団法人全国マルチメディア振興センター理事長。メディア業界に隠然たる力を保持しているのだ。岸田首相に性加害問題へメスを入れる動きが見られないのも、こうした政治家や官僚たちの勢力が蔓延しているからなのではないか。
(月刊「紙の爆弾」2023年11月号より)
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日本では数少ないパロディスト(風刺アーティスト)の一人。小泉政権の自民党(2005年参議院選)ポスターを茶化したことに対して安倍晋三幹事長(当時)から内容証明付きの「通告書」が送付され、恫喝を受けた。以後、安倍政権の言論弾圧は目に余るものがあることは周知の通り。風刺による権力批判の手を緩めずパロディの毒饅頭を作り続ける意志は固い。