「対米隷属」から「日本自立」への活路 超円安を克服する〝秘策〞

藤原肇

サイバー戦争の時代
 情報革命が進展する中、サイバー空間のネットワークが国境を越えグローバルに広がったことで、帝国主義は最終段階に到達。悪あがきの果てに戦争で生き延び、自滅する道をたどり始めている。それがウクライナ戦争であり、メディアはフェイク情報の洪水で、巨大な虚偽と欺瞞が渦巻いている。

そんな時代を生き延びるには洞察力が必要だ。しかし、それを持つ頭脳が日本には存在するのか。そんなことを考えながら、幾多のタブーを乗り越える形で、政治評論家の本澤二郎氏とともに『愚者の天国とゾンビ地獄』をまとめ、電子版(アマゾンキンドル)で世に問うてみた。それでも、いつものように異端扱いされ、葬り去られてしまうのだろうか。同書の「まえがき」に書いたとおり、「安倍晋三内閣は独裁制を目指し、戦前回帰を実現するために官邸のスタッフを警察官僚で固めて、情報操作と危機管理体制を敷き、公安優先の路線を築き上げた」のであり、後継の岸田文雄政権もゲシュタポ内閣だ。

ウクライナ戦争の実態はサイバー戦が8割で、火力戦は2割にすぎない。戦車や航空機の役割が激減し、戦争の性格が激変している。にもかかわらず、日本政府は戦闘機やミサイルを爆買いし、防衛力強化だと寝言を言っている。また、安倍がトランプ大統領に購入を約束した、米国製の時代遅れの戦闘機(F‐35A)やミサイル(トマホーク)の5兆円近くの代金を支払うために、防衛費はGDPの1%から2%に倍増となる。

バカ値買いしたF‐35Aもトマホークも、すでに米海軍では使い物にならないものだ。F‐35Aは、米軍は自国の空母の滑走路では揚力不足で離着陸が無理だと判断し、全部廃棄処分にした。それらを安倍は買い集め、税金の無駄遣いをした後で射殺され、勲章とばかりに国葬された。それでも首相を引き継いだノー天気の岸田は、さらに5兆円も追加購入を決めたのである。

しかも、安倍は愚劣極まりないことに、武器の爆買いにおいてFMS(有償援助調達)にもとづく契約を結んでいる。米国政府が勝手に売却価格を決め、中抜きし放題というお粗末さ加減だ。普通の商取引であれば、ロッキードやレイセオンなどのメーカーを相手に直接交渉で価格を決める。FMSでは米国政府の言いなりで、前金を言い値で払う。さらに、納期も品質管理も米国任せである。

3月3日付の東京スポーツには、「米のおさがりトマホークは時代遅れ」と題し、次のような記事が出ている。岸田内閣の国防路線がいかに愚劣でお粗末かをわかりやすく説明しているので、ここに引用しておこう。

〈トマホークは1970年代に開発され、80年代から配備が始まった。米軍が湾岸戦争(91年)やイラク戦争(2003年)で実戦使用。古いミサイルといわれている。軍事事情通は「日本が購入するのは、アメリカが40年も前に作ったまま放置していた在庫です。信号を送っても着火点に達しても、指示通りに動作する保証は全くないジェット推進器ですから、廃棄してしまうのが普通で、それを“新品”だとして日本に法外な値段で買えと迫ってきたから買う。それが実態です。アメリカ国内では1発2億円強なのを倍で売りつけてきたそうです。トマホークと比べるなら、もうちょい性能のいいのを今の技術なら、1発10万円ぐらいで製造できます」と指摘する。〉

記事はそれだけでは終わらずに、軍事問題の専門家の見解として、〈本来、捨てるためのカネがいるが、それが売れるとなれば米国はホクホクだろう。時速900キロの速度はプロペラで推進するゼロ戦の600キロより300キロ速いだけ。ロケット弾で簡単に撃墜されるレベルです。ほぼ100%着弾前に撃墜される、のろまなミサイルです〉とのコメントが加わる。

こんな情けない状況が続くのは、過去四半世紀にわたり岸田内閣に至るまで、日本の政治が対米隷属に甘んじて、属国ですらない“属領扱い”、もしくは“奴隷扱い”され続けたせいだ。無策無能政権の自民党は韓国の邪教に乗っ取られ、首相の安倍が広告塔役で売国行為に明け暮れ、衆院議長の細田博之もその仲間だったのに、誰も批判の声を上げない。日本はカルト集団と米国の尻に敷かれ、愚弄された。

これはユダヤ系のネオコンが支配し、米国の手で戦場にされたウクライナに似ている。日本人は無用な兵器を買わされ、戦場になりかねない立場ということだ。

この愚かな境遇から抜け出し、円安による物価高の苦境も断ち切って、幸せな生活環境を取り戻すために、日本人は持てる知恵を結集して、打開策を打ち出す努力が必要である。

超円安を克服する秘策
 2つの世界大戦を通じて「戦略論」を編み出したイギリスの軍事学者バジル・リデル=ハートは、正面衝突に挑むのではなく、「間接アプローチ」が最良と教える。

ならば、日本はまず円安の克服に挑むべきとなる。すなわち保有する1兆1270億ドルの米国債が、日本の切り札として使える作戦を考える。

これは、現在の1ドル約148円の相場では、約166兆円の手持ち資金ということだ。わずか2%の3兆円ほどを使うと装って、勝負するアイディアを切り口に、起死回生の戦いに挑んだらどうか。

財務省の高級官僚の多くは東京大学法学部卒で、数字に強いが数理発想は苦手な人材群であり、勝負するだけの胆識はないから、日本銀行の理事の中に潜むマーベリック(異端の才)を探し出す。彼に米国債売りの観測記事を執筆させ、デリバティブを使う円高操作について、いかにもそれらしい数字を並べた解説記事を経済メディアに公開する。

1997年6月、当時の首相・橋本龍太郎がコロンビア大学での講演後の記者会見で、冗談混じりに「何回か米国債を大幅に売りたいという誘惑にかられた」としゃべったら、翌日の株式市場で激変が起きた。NYダウは192ドル下落してブラックマンデー以来の大幅値下げとなり、為替相場も円高に振れた。それならば、先物市場を使う攪乱戦法を使えば、その効果は1ドル120円台程度であり、日本は2の矢を放つ姿勢を維持するのだ。

この程度の為替相場の変動ならば、ウォール街の投機屋の何軒かが破産する程度ですむ。米国側も、「国際緊急権限法」を発動し、保護預かりの米国債の売却をストップすることまではしないはずだ。

そこからが勝負の決め手であり、2の矢では2%ではなく5%、すなわち7兆円ほどデリバティブを使い、ドルを小出しに売り浴びせれば、ブリンケン国務長官が大慌てで東京に駆けつけてくるだろう。

そうなった時の日本側の説明はこうだ。円安でエネルギー価格が暴騰し、少子化対策や社会保障が破綻状態にあるため7兆円の貯金の取り崩しが必要だ。武器代金の支払いのために、次は、さらに5%ほどの売却を予定中、と言えばいい。そうすれば、安倍が結んだ密約をなかったことにしたいと彼らは答えるだろう。無駄な武器購入はご破算にできるし、FMSという一方的な愚策は雲散霧消し、日米貿易は普通の商取引に戻る。

アメリカではバイデン大統領の愚策のために、カリフォルニアの住民の多くがテキサスやアリゾナに移住を開始している。カリフォルニア北部では、「ジェファーソン州」として独立する運動が進み、オレゴン州の東部が新アイダホ州に加わる動きもある。しかも、ネオコンの過激な妄動のせいで、米国の内政は支離滅裂であり、無理難題をこれ以上押し付けて日米間に波風を立てることは、得策ではないとの客観条件もある。すでに日本が異常事態にあることを、誰も否定しないだろう。

独裁者が君臨する隣国でも、碧桂園や恒大集団の破綻のせいで、不動産バブル崩壊による金融崩壊が切迫中だ。若い世代の失業が5割に達したとの見立てもあり、社会不安が広がっている。

無理強いした領土拡大路線は、民族協和思想の理念を解体させ、巨大すぎるがゆえにバランスが崩れて、分裂や独立の動きが盛り上がる中で、デコンストラクション(脱構築)が進行する。

 

電磁パルス戦が導く世界の破局
 しかも、EV車の墓場に2千万台が並べば、テスラも上海のギガ工場を放棄し、米国に戻る決断を下す瞬間を迎える。カリフォルニアの拠点もダメとわかれば、「スペースX」だけに専念することになる。

また、電磁波にはポラリティ(極性)があり、宇宙空間で核爆発があれば、ガンマ線が無限に拡散。電磁パルスが発生して電子機器は破壊され、デジタル世界は瞬時に終わりを迎える。

ウクライナ戦争の発端はマイダン革命で、2014年にヌーランド国務次官補が、ネオコン路線に従いキエフで火をつけた暴動に始まる。それがクリミアのロシア併合に結び付いた。その経過は別の機会に考察したいが、これを契機にサイバー戦が本格化し、米ロでは戦略レベルで大改革が起こり、陸海空軍に加え宇宙軍が創設された。

サイバー戦に詳しいジャーナリストの山田敏弘は『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)で、「オリンピック作戦」の詳細を紹介。米国がイスラエルの協力の下に、マルウェアでイランの核施設を攻撃して、遠心分離機を狂わせた話を書いている。

彼は第4章の書き出しで、「サイバー戦争の萌芽は、およそ30年前の1986年にあった。その後インターネットが拡大して、デジタル環境が整うにつれ、ハッキングは国への大きな脅威になっていく」と指摘する。

私が電磁パルスの脅威について強烈に印象付けられたのは、糸川英夫博士が1987年に出した『日本が危ない』(講談社)だ。その衝撃を受けて私が書いたのが『日本が本当に危ない』(エール出版社)である。あまり読まれないうちに出版社が潰れる憂き目に遭ったが、今では古本で、定価の20倍の2万5千円をつけている。

糸川博士が論じる通り、サイバー戦争の行き着く先は電力システムの停止、すなわち電磁パルスによる文明の死である。デジタル世界の夢は雲散霧消して、全生命の終わりに結び付いてしまう。『ゼロデイ』も、そのプロローグは「ある冬の夕方、東京で突然、原因不明の大規模な停電が発生し、同時に多発的にインフラが麻痺した。そして、更なる恐怖が……」の物語で始まる。

サイバー戦争が誕生した1980年代は、中曽根バブルが膨張し、不審な日航123便の墜落事故、続くプラザ合意による超円高をはじめ、レーガンの「スターウォーズ計画」と、奇妙な形で繋がっていく。そして、ソビエト連邦の崩壊で冷戦構造が終わり、旧ソ連からウクライナが独立し、日本が失われた30年の不況に喘ぎ、ゾンビ政治で国力を衰退させ、格差社会の中で国民は貧しくなった。

その間に世界各国はサイバー時代に向け、体質を改めていった。新興の中国も米ロの間に割り込む形で、サイバー時代に備え国造りを推進していく。そうした中で日本の政治だけは、邪教にひれ伏し戦前回帰していった。

国民1人あたりのGDP(国内総生産)では、日本は韓国や台湾にも追い抜かれてしまい、政治を利権化した世襲代議士に未来を踏み潰された状態だ。日本人は閉塞感に支配され続け、亡国の悲哀を噛みしめている。

それにしても、すでにドルの覇権が崩壊しかけている中で、米国の世論は「アメリカ・ファースト」を叫び、世界の警察官の役目を放棄して、海外の軍事基地の撤収を考えるまでになり、国内経済の活性化が最優先課題となっている。

これは日本が独立する上で願ってもないチャンスである。国内の基地から米軍が引き揚げれば、そこを海外から撤収した企業に生産基地として提供して、新生日本の建設に取り組む好機となるのだ。

改めて考える「小栗忠順」の価値
 先に「秘策」を披露したものの、「米国債を売却するのは宣戦布告に似た敵対行為」という神話が日本を覆っている。しかし、自分の貯蓄が人質になって、必要な時に使えないのは不条理である。

この、筋が全く通らない蒙昧に基づく誤解を打破するには、アメリカ人を感銘させた小栗忠順の登場が必要となるだろう。私はその話を『理は利よりも強し』(太陽企画出版)の第4章で、以下のような形で論じたことがある。

〈その典型が遣米使節のナンバー3の小栗忠順で、監察役の彼は卓越した財政感覚を持ち、為替相場の違いについて調べたり、日米の金貨の質の差を明らかにして、アメリカ側から高い評価を受けている。だから、一行が帰国するに際して、米国政府は最新鋭の軍艦を提供し、ニューヨークから江戸まで「ナイアガラ号」で送っている。アメリカ人は感銘すると最大限の敬意を表し、軍艦で本国まで送り届ける気前の良さがある。誠心誠意で日米関係の友好に尽くして客死した斎藤博大使の遺体を巡洋艦「アストリア号」で横浜まで送り届けたケースもある。戦後に日米関係が緊密になったといっても、日本の首相が大統領専用の『エアフォース・ワン』で送り届けられたとは、寡聞にして私は聞いていないが……。〉

ウクライナ戦争に熱を上げるバイデンは、息子のハンターがウクライナと癒着し、汚職まみれで信用が大暴落だ。日本の岸田もバカ息子を首相秘書官にして、乱痴気騒動で人気はガタ落ち。さらに、警察を使い身内の犯罪のもみ消しを図った木原誠二は、デリヘル(宅配売春婦)を相手に淫猥な行為に耽りながらも、岸田の知恵袋として「日米サミット」に加わったのだから、末世の日米関係は醜悪の極みだった。

サイバー時代への構想もなしに、銀座のキャバレーで遊び歩き酒と女に狂う男が政権中枢に陣取る岸田内閣は、日本にとっての疫病神である。

こんな政治がいつまで続くのか。木原が官房副長官から自民党の幹事長代理に横滑りしたかと思えば、同姓の木原稔が防衛大臣に就任し、秘書官の篠田了の利益相反が発覚。防衛絡みの疑獄の炎上により、日本のサイバー空間は大混乱に向かっている。

しかも、日本は二重国籍を認めないのに、米国はイスラエルと米国の二重国籍を持つエマニュエルを駐日大使として東京に送り込み、LGBT問題で内政干渉を行ない、日本人の多くから顰蹙を買っている。

今の日本が米国から買うものは、ろくでもないものばかりだ。魑魅魍魎が横行しているだけに、サイバー戦争が特徴づける現代の時代性に、世の末を痛感させられるのである。

(文中・一部敬称略)

電子書籍『愚者の天国とゾンビ地獄日本のゾンビ地獄の病理』(藤原肇・本澤二郎共著、アマゾンキンドル)

(月刊「紙の爆弾」2023年12月号より)

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藤原肇 藤原肇

フリーランス・ジャーナリスト。『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』『日本に巣食う疫病神たちの正体』など著書多数。海外を舞台に活躍する。

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