【特集】ウクライナ危機の本質と背景

ウクライナ戦争を仕掛けたネオコン勢力の正体

藤原肇

 

ウクライナ戦争の発端「マイダン革命」

ウクライナ戦争にまつわる報道は、世界中で偏見に満ちたものが多い。
ユダヤ資本が支配する欧米のメディアでは、ウクライナは侵略された哀れな国で、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は民主主義の守護者であるとのプロパガンダで洪水状態だ。
同じことは当然ながら日本でも起きている。
メディアは米国の報道にならい、難民化して国外逃亡するウクライナ人への同情を誘い、ゼレンスキーは救国の英雄扱いで、日本の国会は彼の演説に拍手喝采した。

しかし、2022年2月の開戦から2年近くも経てば、そのメッキがはがれ始めている。2022年10月に刊行した『ゾルゲ事件の謎日本のゾンビ政治の病理第2巻』(アマゾンキンドル)の第8章に、私はこう書いた。
〈ウクライナの大統領の演説が日本の国会で放映された件に関しエールを送った細田博之衆院議長は、3回も“閣下”と唱えたが、役者上がりのゼレンスキーは果たして閣下と呼ぶに値する政治家なのか? さらに、彼のパトロンであるハザールマフィアのコムロイスキーは極右の私兵アゾフ連隊を持ち、ウクライナ軍と共同作戦を行なってオデッサのロシア人を虐殺し、次に東部のドンバス地区でもロシア人を殺戮した。だから、ネオナチの暴虐を恐れNATOの東進に怯えたプーチンに、開戦の口実を与えウクライナを戦場にして国土を荒廃に導いた。〉

ウクライナ戦争の始まりは、2014年、当時のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権を転覆させたマイダン革命にある。
米国のヴィクトリア・ヌーランド国務次官補が警官隊にクッキーを配り懐柔してウクライナに内政干渉した愚行も、すでにスキャンダルとして全世界に報道され、ネオコンの仕掛けだとばれた。
また、彼女が樹立しようとした新政権に関する駐ウクライナ米国大使との電話が盗聴され、ロシア政府に暴露されている。

ウクライナ戦争の発端を突き止めて、その背後関係を追跡した塩原俊彦の『ウクライナ3・0 米国・NATOの代理戦争の裏側』(社会評論社)は、現在の日本で手に入る本の中で最も優れた内容を持っている。
この本1冊を読むだけで、市販されている50冊を読む以上に、ウクライナ戦争の本質が理解できるだろう。優れた史観に裏打ちされた、現代史の核心に迫る傑作だ。

同書にはこうある(以下、引用部分は一部要約)。
〈米国政府が2013年から14年にかけて、ウクライナのナショナリストを支援・煽動して、当時のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領を国外逃亡にまで追い込むクーデタに成功して以来、ずっとウクライナ政府に軍事支援を継続してきた。…ヤヌコヴィッチ後の暫定政府も大統領選以後のペトロ・ポロシェンコ政権も、今のヴォロディミル・ゼレンスキー政権も、いわば米国の“掌の上にあり続けている”という特徴を忘れてはならない。〉

マイダン革命を契機に、ロシアがクリミア半島を併合すると、ウクライナ国内の親ナチ勢力がオデッサで住民を虐殺した。
それが武装勢力のアゾフ連隊であり、彼らは東部のドンバス地方でも虐殺を拡大した。
ドンバス地方は石炭の宝庫で、旧ソ連時代は有数のコンビナートを持つ重工業地帯として重機械・精密兵器の生産を誇った。
しかし、移住したプロレタリア系のロシア人と農民のウクライナ人が対立して、独立後のウクライナは内戦化する。
結果、ロシア系住民による、民兵を組織しての、東部ウクライナの独立を目指す紛争が続くことになった。

2014年9月、このドンバス地域の戦闘停止のために、独仏が停戦のイニシアチブをとって、ベラルーシの首都で「ミンスク合意」が調印される。
この合意をロシアは尊重したがゆえに、全面戦争を展開せず、クリミア半島の奪還だけで満足したのである。

内戦を設計した〝仕掛け人〞

ウクライナ内戦の発端となった2014年のマイダン革命は、当時のポロシェンコ政権の腐敗選挙に市民が抗議して、独立広場に集まり正義や自由を掲げたデモに、キエフ政府が弾圧を行なったことに始まる。
古タイヤでバリケードを作り、石畳をはがした石を機動隊に投げつけた市民は、100名以上の犠牲者を出しつつも、たしかに権力に勝利した。

この革命の顛末については、高橋沙奈美が『迷えるウクライナ』(扶桑社)にこう書く。
〈マイダン革命はウクライナが真実や公正を重んじ、ヨーロッパ的価値を共有する国家として、新しく生まれ変わるために踏み出した、着実な「はじめの1歩」であった。
そのあと、2014年5月にオデッサで起こった労働組合ビルの火災事件をはじめとして、マイダン革命は革命勢力として参加した過激な右派による、「親ロシア派」と見なされた住民に対する暴力へと発展した。

「親ロシア派」は中央政府からの分離独立を宣言、これに対して中央政府は「アンチテロリスト・オペレーション」を発動し、ドンバスと呼ばれるウクライナ東部での壮絶な戦争が始まった。
そして、それは2022年2月のロシア軍による、ウクライナ全面侵攻に繋がることになる。〉
しかし、この内戦には設計し実施した“仕掛け人”がいた。それがヌーランドである。
彼女はウクライナ系のユダヤ人であり、家系を見れば明白だが、コテコテの戦争屋にほかならない。そして、この内戦を第3次世界大戦として核戦争に発展させないためミンスク合意をブチ壊したのが、ネオコンとキエフ政府だったのである。

ヌーランドとネオコンに関しては、元CIAロシア担当幹部のフィル・ジラルディが詳細に報告している。
彼はシカゴ大とロンドン大で学び、情報に信頼性が高いことで知られる。彼が暴露した内容は次の通りだ。
〈ネオコン運動は1970年代に、シカゴ大学の政治学者レオ・シュトラウスとイェール大学の古典学者ドナルド・ケーガンの影響を受けた数人の知識人を中心に起こった。
ネオコンの指導者には、ノーマン・ポドレツ、アーヴィング・クリストル、ポール・ウォルフォウィッツ、ドナルドの息子のロバート・ケーガンとフレデリック・ケーガン、妻ヴィクトリア・ヌーランド、エリオット・エイブラムス、フレデリックの娘キンバリー・アレン・ケーガンらがいた。
キンバリー・ケーガンは戦争研究所を率いており、メディア報道や議会でも、ロシアと戦わなければならない理由を説明するためにしばしばその論が引用されている。〉

戦争仕掛人の正体を書けない苦悩

ウクライナ戦争はネオコンとシオニストが仕組んだものだが、それを名指しで批判するのはタブーである。
フランスの社会人類学者、エマニュエル・トッドも、それを告発できなかった事情を告白している。彼は自分の意見として書けないので、『第3次世界大戦はもう始まっている』(大野舞訳、文春新書)の中に、米空軍出身で国際政治学者として知られた、シカゴ大教授のジョン・ミアシャイマーの文章を引用して次のように書いた。

〈ミアシャイマーが出した最初の結論は、『いま起きている戦争の責任はプーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある』ということです。『ウクライナのNATO入りは絶対に許さない』とロシアは明確に警告を発してきたのにもかかわらず、アメリカとNATOがこれを無視したことが、今回の戦争の原因だとしている。…もう1つミアシャイマーの指摘で重要なのは、『ウクライナのNATO加盟、つまりNATOがロシア国境まで拡大することは、ロシアにとっては生存に関わる“死活問題”であり、そのことをロシアは我々に対して繰り返し強調してきた』ということです。非常に明快な指摘で、私も基本的に彼と同じ考えです。ヨーロッパを“戦場”にしたアメリカに怒りを覚えています。〉

しかも、エマニュエル・トッドともあろう人が、日本語版の「まえがき」を使って、
〈自国フランスでは取材をすべて断わりました。メディアが冷静な議論を許さない状況にあるからです。…自国で自分の見解が冷静に受けとめられる望みはなく、最初に取材を受けたのは日本の新聞でした。…このように日本は私にとって一種の“安全地帯”なのです。〉
と書いたのは驚きである。

彼はオーストリア=ハンガリー系のユダヤ人で、ケンブリッジ大卒の優れた人類学者であり、フランスが誇る知識人である。その彼であっても、ユダヤ人が守ってきたタブーには触れることが出来なかった。
それは『The Thirteenth Tribe(第13支族)』でカザール王国の謎を書き、民族の秘密を暴露したユダヤ人のジャーナリスト、アーサー・ケストラーの人生が、ロンドンでの自殺で終わったことに、強い衝撃を受けていたのは間違いない。

民族が秘めたタブーに触れることがいかに危険であるかについては、最近の日本では出版社が名誉棄損訴訟を怖れ紙の本にならない私にはよくわかるし(それゆえ日本のタブーを扱うゾンビシリーズ『日本のゾンビ政治の病理』『ゾンビ政治の解体新書』『安倍晋3の射殺と3代の腐れ縁』などは電子版だ)、相手がシオニストを含む支配層「カバール」ならば、その脅威の大きさは想像するに余りある。

その点で、ディープステート(DS)を論じ、ウクライナ戦争についてもしばしば触れる馬渕睦夫・元駐ウクライナ大使にも、同じように著名人の発言を引用することで、無用な干渉を避ける賢明さが読み取れる。彼は『ウクライナ戦争の欺瞞』(徳間書店)でこう書いた。
〈アメリカの著名なジャーナリスト、セイモア・ハーシュ記者が4月12日に発表した記事は、『ゼレンスキー大統領とその高官たちは、アメリカからディーゼル燃料の予算を受け取っておきながら、安価という理由で敵国のロシアの燃料を買い、数100万ドルの差額を着服してきた』と報じています。

米中央情報局(CIA)のアナリストによる試算では、横領された資金は少なくとも2022年だけで4億ドルにのぼるほか、一部のミサイルが不正に流出し、ロシアや中東などの国に渡った可能性が指摘されており、アメリカはウクライナ向けの兵器の追跡や監査などの対策に追われました。
ウクライナの税務当局が企業から不当に税金を徴収するなどの不正を行っているという指摘もあります。…ウクライナ内でのネオコンの工作を見るうえで欠かせないのは、このヌーランド氏とジョージ・ソロス氏の存在です。〉

爛熟し腐敗した資本主義の末期症状私の最新刊である『ゾンビ体制の断末魔と迷走のウクライナ戦争』で、次のように書いた。
〈横領天国のウクライナでは戦闘が継続している最中でも、世界中からの支援をかき集め戦争ビジネスを運営しており、その支援金や武器の横流しで、政府高官は富を蓄積している。
ゼレンスキー大統領が義母の名義でエジプトの保養地、エル・グーナに5億円の豪邸を購入したとアルジャジーラが報じ、その原資は支援金の着服だという。〉

しかも、大統領夫人オレーナの米ニューヨークでの散財も、明らかとなっている。
これは内部告発によるものだから、告発者には何らかの理由があったはずだ。
報じたのはインドの「The Press United」で、「ゼレンスキー夫人、カルティエで110万ドル散財」と題し、散財の手助けをした元従業員を大統領夫人が解雇した、という内容だった。

2023年10月に勃発したガザ戦争では、イスラエルがハマスからロケット弾攻撃を受け、第3次大戦になると騒がれた。しかし、ハマスが5000発以上ものロケット弾を持つはずがない。
大量のロケット弾の入手先がどこかという疑いは、ウクライナに送られた弾薬が横流しされてハマスの手に入ったという噂となり、ゼレンスキーと結ぶオルガルヒ(新興財閥)が怪しいとされている。

国内問題だけでも大変なはずが、それを放棄し世界中を飛び回って援助を求めるゼレンスキーに対し、私財を蓄えているとの疑惑が、世界の関心を集めている。
権力を握る一部政治家が私腹を肥やすのは世の常で、仏大統領のフランソワ・ミッテランやジャック・シラクもそうだったし、米国のビル・クリントンやジョー・バイデンも同じ仲間だ。

欧米でもアフリカの独裁者と大差なく、日本の政界でも同じである。
安倍晋三が統一教会の広告塔になることで、反社会勢力の違法集金の捜査を試みた警察に圧力がかけられ、潰されてきた。
安倍や自民党はそのお礼に選挙の支援を受けて、長期政権を維持するのに成功した。
大臣以下、自民党議員の大半が、統一教会とズブズブの関係を持っているのは、もはや周知のとおり。政権与党が外国の邪教にひれ伏し、売国行為に明け暮れたために、国政は乱れて日本は亡国の危機に瀕している。

ウクライナ戦争では兵器による戦闘行為より、情報を武器にした戦争が主役である。
NATO参加国が派遣した顧問団は、戦争の長期化をビジネスの種にしている。
しかし、戦場で血を流すのはウクライナ人だ。
また、米英の軍産複合体をはじめ、穀物業者や多国籍石油ビジネスは、エネルギー価格の暴騰で荒稼ぎし、自作自演のコロナ・パンデミックに続く戦傷者の激増による需要で、製薬会社は笑いが止まらない。これがウクライナ戦争の正体なのだ。

初期の資本主義は「投資経済」だが、絶頂期を過ぎると「投機経済」になり、最後に負債だけ残る「ポンジ経済」に変貌し、詐欺がビジネスの主役となり、資本主義は断末魔を迎えてご臨終となる。生理が病理へと変移することが、経済活動のシンギュラリティ(臨界点)であり、すでに我々はそれを前にして、目まぐるしい変化の渦に巻き込まれ、強い閉塞感に包まれた破断界を体験している。

ウクライナはコサックの故地で、傭兵になる歴史的伝統が根強い。
アゾフ連隊の構成要員には、ポーランドや旧東プロシア(バルト3国)から傭兵としてウクライナ軍に参加した者がいて、兵器の密輸は彼らの仕事の一部だ。
一方のロシアも似たようなもので、資源大国のメリットを活かして稼ぎつつ、ウラジミール・プーチンは大統領の地位に執着し、独裁者としての権力を維持するために全力を傾けている。

ここで述べたウクライナ戦争の核心に迫るのはタブーであり、メディアは真相を伝えない。
それゆえ大衆はフェイク情報の洪水に飲み込まれ、洗脳されているとも気づかずに、戦争に加担する熱気に煽られている。
そして、日本政府は米国の在庫兵器を買い取り、その支払いに庶民は増税を強制され、物価高の生活苦に耐えている。
こんな暴政を放置してきたから、かつて世界第2位の経済大国だった日本はついに第4位に転落し、国民の幸福度ではなんと世界の54位なのである。(文中・敬称略)

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藤原肇 藤原肇

フリーランス・ジャーナリスト。『皇室の秘密を食い荒らしたゾンビ政体』『日本に巣食う疫病神たちの正体』など著書多数。海外を舞台に活躍する。

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